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2015-03-05 [長年日記]

[Books] 火星の人

火星の人(アンディ・ウィアー/著 小野田和子/翻訳) アンディ・ウィアー 著/小野田和子 訳
カバー 岩郷重力+N.S
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011971-3 \1200(税別)

ザ・ライトスタッフ(あっ、かるーい人たち)

アメリカによる有人火星探査ミッション、その第3回"アレス3"は出だしで不運に見舞われることになってしまった。風速175メートルという巨大な砂嵐がミッションを直撃することが判ったのだ。クルーが滞在する施設はこの巨大な砂嵐にも耐えられると思われたが、問題は火星軌道へ戻るためのMAV(火星上昇機)にあった。この暴風でMAVが倒れてしまったら、アレス3のクルーは地球に帰還することが不可能になるのだ。熟慮の末、NASAはミッションの中止と火星からの早急な脱出を指示。直ちに脱出を開始したクルーだったが、接近する嵐によってへし折られたアンテナがクルーの一人、マークを直撃、MAVに向かっていた一行から彼だけを吹き飛ばしてしまう。なんとかマークを救出しようとするクルーだったが、ますます嵐は猛威を振るい、もはや一刻の猶予もできないところまで来てしまっていた。

ここに到りクルーのチーフであるルイス船長は悲痛な思いとともにマークを見捨て、MAVの離昇を命じた。だが、脇腹をアンテナが貫通し、チームから遠く吹き飛ばされたマークは、それでも生きていたのだ…。

九死に一生を得たのは良いが、たった一人で火星に取り残されたマーク。普通に考えれば次に火星に人類がやってくるのは次回のミッションであるアレス4。だが彼らがやってくるのは約4年後、現状でマークの元に残されている装備や備蓄を考えると、そのままで彼が生き延びられるのは約1年。この状態をいかにして克服していくか、と言うお話。

古手のSF読み的には、こういう、アクシデントで異星の環境に放り出されちゃってさあ大変! なシチュエーションの名作としてはたとえば「月は地獄だ!」とか「渇きの海」なんて名作を思い出すけど、それらの作品群に比べると本書は、なんというかな、かなり安心と納得を前もって得た状態で読んでいける。これはつまり昔のSF作家が想像した宇宙開発のプロジェクトの規模は、現実の(NASA主導の)プロジェクトの、とりわけ基本のいろいろな「大きな」ハードウェア以上に、兵站的な部分において圧倒的に足りていなかったんだな、と言うことになるのだろう。ここらはさすが、「戦争始まりそうじゃね?」って時に「したらネジの規格統一した方がよくね?」って所に思いが至る国の凄さ、ってことになるのかな。ここのおかげで極限状態でのサバイバル、というよりは解決すべき困難に立ち向かう「プロジェクトX」的なお話になっている。

で、そこの所はかなり面白いし、マークが機器メンテナンスと植物学のエキスパート、と言う設定がお話の流れに上手く説得力を持たせていると思った。困難を理詰めでデータ化し、そのデータから解決策を見出していく、と言う流れが読ませる。ダクトテープ最強、ってノリもなんか楽しいし(これ、他のSFでもあったよねえ)、そこをあえて一人称のSNS的文体で描写していく、と言うのもまあ今風、なんだろう。

ただその「今風」が逆に、古いSF読み的には物足りなさを感じさせる要素になってしまっているような気もして。全体的に「軽い」のだよね。ここを受け入れられるかどうかで、評価は変わってくるのかな、と思う。自分はちょっと、追い詰められ感方面の描写が物足りなかったかな、と言う気分です。

★★★☆


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