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2016-12-07 [長年日記]

[Day] 映画見てきた

前日深夜に座席を予約したときは数席しか埋まっていなくて、一応ピークは過ぎたかな、と思ったんだけどそんな事はなかったよ。最前の2列ぐらいに空きがある程度で、それ以外はほぼ席埋まってた。客層もアニメ作品にしては年配の方も多かったですね。ということで「この世界の片隅に」見てきました。感想は改めて。あ、パンフは次回待ちのお客さんでロビーがかなり混雑してたんであきらめました。なので原作マンガの書影のっけときますね。

[Chinema] この世界の片隅に

この世界の片隅に 上(こうの史代/著)この世界の片隅に 中(こうの史代/著)この世界の片隅に 下(こうの史代/著) スタッフ
原作 : こうの史代
監督・脚本 : 片渕須直
監督補・画面構成 : 浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督 : 松原秀典
音楽 : コトリンゴ
声の出演
のん
細谷佳正
稲葉菜月・尾身美詞・小野大輔
潘めぐみ・牛山茂・新谷真弓・岩井七世
公式サイト:http://konosekai.jp/

昭和初期、すずの一家は広島で平穏に暮らしている。世界は戦争に向かい、すずのもとには縁談が舞い込んでちょっとした波紋はあるけれど、人びとの暮らしはそれほど大きく変わらない、ように見えて戦局の推移は人びとの生活に徐々に昏い影を落としていく。それでも世界は続いていく…のだけれど。

最初に。自分はこうの史代さんの絵が割と苦手です。何というのかな、どこかこう怪奇マンガのテイストを感じてしまって、積極的に手が出ないタイプの漫画家さん、というか。なので今回の映画も絵的に取っつきにくかったらどうしよう、なんて思いながら劇場に向かったんですが、そこは良い感じにアニメ映画向けに調整されていて、ちゃんと気に入って見れる絵になっていた。何となくだけど、原作の絵よりも若干ネオテニー化を進め、愛らしさが増したような印象を受けた。まずはここが良かったです。

精緻を極めた再現度合の昭和前期の広島を舞台に、ちょっとおっとり(ぼんやり?)した娘、すずの日常を丁寧に描きながら、その背景では大きな歴史のうねりが起きているらしい、けれどもすずの周りで生きる人々は、何よりもまず毎日毎日をちゃんと生きていかなければならない、だから生きていく、というお話を淡々と描いていく。いろんなところで大絶賛されていて、自分が何かを足すようなこともないんだけど、この、生きていかなければならないから生きていくんだ、というところが無駄な気負い無しに表現されているところがとても素晴らしいと思った。

おそらく細部に踏み込んでいけばそれはそれで掘り出しがいのあるネタは満載なんだろう。たとえばすずさんと晴美ちゃんがしばしば眺める呉軍港の遠景、そこに舫っている軍艦の艦種を考察するだけでも調べ甲斐はたっぷりありそうだ。なんだけどそういう深いところまで掘りまくるような映画の楽しみ方をしなくても、表層的に観ているだけでも意外にちょいちょい観ているこちらに「ん?」と思わせる何かがちりばめられているのが凄い。

見始めてすぐに、自分が感じたのは「百日紅」っぽいなあ、というところかな。特に大きな起伏もなく、日々の暮らしが淡々と描写される裏で、実は避けられない「死」の匂いが近づいてくる、というあたり。そういえばあちらの主人公も絵を描く女性でしたね。ただ、あちらと違うのは、時代をより近代に寄せてきて、かつそこには現在只今の我々にとっては周知の事実であるのに、当時の登場人物たちは誰一人この先に何が待っているかは判らないという二重構造が、ほのぼのとして、随所で笑いも取れるように出来ているこのお話に、なんとも言えん不穏な緊張感もまた同時に仕込むことに成功している、というところだろうか。もちろんそうはいってもそこに押しつけがましさなんかは全くなく、あくまでも銃後にあっては何より優先するのは日々の生活なのだ、というスタンスは崩さない。このあたりも誠実だと思う。

あと、これは間違っているかも知れないけどこの映画、精緻な考証、作画などで作り上げられたすずさんのお話を我々は観ている訳だけど、その我々が観ているすずさんの物語自体も、実はすずさんの主観視点によるもう一つの映像作品なのかも知れんな、なんて事も思った。花街での会話になると花街の女たちの言葉や仕草にしれっと小さな花がつきまとったり、シームレスにはいってくる「バケモン」のエピソード(彼が再登場したときは真剣に「やられた」と思ったことでした)とか。すずさんの物語を追う、というよりはすずさんが見た世界や出来事を、いったんすずさんの脳内というかすずさんの絵心で再構成された「絵」をワシらは見ているのかも判らんなあ、なんて事を思ったりした。だからすずさんが表現方法を喪失したときに、スクリーンに乱舞するのはあの「絵」とも言えん、何か判らん禍々しいものになっている、ということなのかな、などと。

原作を知らない初見の感想はこんな感じでしょうかね。ただ、これは二度三度と見なおすことで新しい情報が入ってくる類いの映画なのかも知れない。それを確かめるために劇場に足を運ぶも良し、一度見ての感想をあれこれひねくり回すも良し。大変良い映画でした。

★★★★


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