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2017-12-25 [長年日記]

[Books] 君の彼方、見えない星

君の彼方、見えない星(ケイティ・カーン/著 赤尾秀子/翻訳) ケイティ・カーン 著/赤尾秀子 訳
カバーイラスト 六七質
カバーデザイン 早川書房デザイン室
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-012153-2 \920(税別)

私たちは、たぶん、宇宙…(以下略)

とある事情で二人だけで宇宙船<ラエルテス>に乗り込んだマックスとカリス。恋人同士の二人が望みをかなえるためのミッションだったが、アクシデントが発生、二人は宇宙空間に放り出されてしまった。船外活動ユニットもなく、アクシデントにより<ラエルテス>も方向転換不能な状態。しかも二人の宇宙服にはあと90分分の酸素しか残されていない。二人は必死で生還のための方法を模索する…

という出だしのシチュエーションからして、読んでる方はたとえば映画「ゼロ・グラビティ」的な、切羽詰まった状況に追い込まれたプロがその経験、知力、技術、あと本書に限れば愛の力を総動員して見事生還するまでを描く、ハードSF風味な展開を予想してしまうけどそういう物とは全く別物になっている。なんだろう、技術を描くのではなく世界、とりわけとある世界の中での愛のかたち、みたいなものを描いている、と言えるか。

二人がいる時代は核戦争が起き、アメリカが荒廃している世界。ヨーロッパは再統合され、今は「ユーロピア」という一種の都市国家の連合体のような政治形態を取っている。そこは非常に緩やかな「1984」的世界とでも言えそうな世界で、人々は一つの土地に定住するのではなく、ヴォイヴォダ、と名付けられた幾つもの都市群を転々としながら生活し、その暮らしにはいくつかのルールが存在する。マックスとカリスはそんなルールの一つに抵触し、そのルールの改定のために宇宙に出ることを命じられる、と言うような展開。

なのでこのお話の中で語られるのはSF的なサスペンスよりは二人の出会いから接近、たまには諍い、さらにはふたりの前に立ちはだかる障害、みたいなものとどう向き合ってきたか、ってあたりを二人きりの宇宙空間の中で回想して、と言う方がメインになっている。もちろんその間に、生還のための試みもいろいろ行われはするんだけど、重要なのはそっちじゃなくてあくまで二人の世界、または二人と世界。なので最終的には二人の現状と世界への折り合いの付け方がどうなるか、の方にウエートがかかってくることになる。この終盤の展開はちょっとユニークだし、なんか急におかしな事を言いだしたぞ感も無しとはしない、かも。

そのあたり面白いし、ちょっと「おや?」も引きずるところはあるんだけど悪くはないね。その上で本書はカバーがすげえ良い仕事しているな、と思った。本書の原題は Hold Back the Stars。「ハムレット」の中で出てくる台詞を許にしたものだそうだけれど、そんな、比較的文学的なニュアンスを持っているであろう原題にこの邦題を充て、そしてカバーイラストもどちらかと言えばアニメ風味のものを採用している、ってことでおわかりですね、ハヤカワ的にはこれ、「新海アニメ好きな人、寄っといで」ってテンションで売りたいんだと思う、で、それはかなり、正しい(w。「君の名は。」より前、というか「ほしのこえ」から「秒速5センチメートル」あたりの新海誠作品に意外と近いものがあるな、と言う気はするんだよな。で、オレそのあたり結構好きなんでね(^^;。

★★★


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