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D・H・ウィルソン&J・J・アダムズ 編/中原尚哉・古沢嘉通 訳
カバーイラスト 緒賀岳志
カバーデザイン 岩郷重力+W.I
創元SF文庫
ISBN978-4-488-77201-7 \1000(税別)
ビデオゲームを題材にした短編集。本国では全26編収録されていたものの中から12編を選んで訳出したオリジナルアンソロジー。本邦初訳、初登場作家多数。
ゲームとSFというと、たとえば「エンダーのゲーム」なんて名作があるし、確かディックの作品にも、朝刊のクロスワードを解くことがどこぞの宇宙戦争に多大な影響を…なんてのがあったような気がする。なのでそのジャンル自体は目新しいものでもない。ただ本書はゲームの中でもとりわけビデオゲーム、と言うジャンルでかつ、その様々なゲームスタイルを積極的にお話の中に取り込んでいくスタイルになっている、ってあたりが新しいか。それでは早速一つずつ、短めに。
「All You Need is Kill」の作者による、セーブポイントとか何とかがいろいろシャッフルしちゃうお話。序文がわりに付けられた出だしが気が効いてる。
原題は"Save Me Plz"。Please→Plzを「よろ」と訳したのね(w。主人公が剣をクルマの後部座席に放り投げて出発する、という割と出だしからちょっぴり不穏。その不穏の正体は、というお話の構造が面白い。これ以上はネタバレになっちゃうな(^^;
急死したネットゲームの友人の葬儀で初めて顔をあわせることになったプレイヤーたち。彼らの前には亡くなったプレイヤーが製作したテキストアドベンチャーが…。ゲームヲタクを好きになってしまうちょっと愛らしいお話。だってさ、このゲームヲタども、
わたしたちは、会ったことのないだれかのために、こんなことまでやる仲間だった。
なんて抜かすんだぜ。
とある惑星上で日々ルーティンにいそしむ若者に降りかかったアクシデントとは…。毎日同じ事をやってるんなら生きていたってその人生はRPGで街に配置され、決められた台詞しか返さないキャラクタと一緒じゃないか、そんなキャラに訪れた転機とは。切り口は面白いと思うけど、展開とボリュームがちょっと物足りなかったかな。
新種の難病に侵されたパートナーに人間世界のコミュニケーションを取り戻すために持ち込んだのは、猫キャラとして別な世界で生きるVRゲーム空間での生活。毛色はちょっと違うけど、「SAO」の「マザーズ・ロザリオ」編を連想したりして。ただしこちらが用意している結末は甘味も残してはいるけれどもそれ以上に苦みの方が先に立つ。
真に愛する人と出会い、その人と暮らしていくと言うことは、日々自分と相手以外の世界を削除していってしまうのではないか、みたいな。ゲームマスターははたして幸福なのか、ってお話なのかな。
知人のツテで勤務時間外のゲーム開発会社に潜り込み、そこでFPSを楽しんでいたジミーだったが、そのオフィスに予期せぬ闖入者が…。FPSプレイヤーがリアル世界でもFPS的行動を取らなくならなければならなくなった時、彼は…、の流れは結構面白い。んだけどオチは余計だったんじゃないかな。逆にSFじゃ無くなっちゃった感はある様な気が。
ゲームに没入してるボーイフレンドがハマった超絶難度のパズルゲーム、脱出するには…って話なんだけど、パズル的なお話は何よりもロジックで読者を唸らせなければいけないと思うんだけど、そっち方面は手薄だったかな。ESCキー叩いてセーブしてログアウト、じゃねーだろ、と(^^;。
家を空けがちの夫と生まれたての娘。家事と育児の合間に夫がハマっていたFPSに参加することになった妻。彼女がゲーム世界で達成しようとしたものとは…。
「ゲームSF」って括りで考えたら、本作は本書中でいちばん愛らしい作品と言えるんじゃないだろうか。必ずしもクエストを消化していくことだけがゲームの楽しみじゃあないよ、というね。ラストのおまけは余計だったと思うけど。
リアル世界で不可解なことが起こっているのが、ゲーム世界では何となく辻褄があっちゃっている、という。とてもささやかな現実と仮想の印象のずれがラストで一気に大きな話になっちゃう(なっちゃうんだよね)、ってあたりはなかなか。この人らしいな、と思ったよ。
タイトルからして「エンダーのゲーム」を意識したのかなあ、なんて。あちらが全人類規模での何かを背負わされる若者の話だとしたら、こちらはかなりそこのところのスケールは小さくなる。だけど人としてそこはどうなんだ? ってところに問いを投げかけてくるあたりはそれなりに好感を持ちますよ。とびきり上手いとは思わないですけど(^^;。
腕利きのバウンティ・ハンターが確保したターゲット、だが護送中に彼から提示されたアドヴェンチャー・ゲームがハンターにもたらしたものとは…
リアルとヴァーチャルの狭間を行き来する、これも言うたら魔術的リアリズムなお話と言えるのかも解らん。いきなり「シェヘラザード」と口走るあたりも含め、さすがに腕がある作家だよね。
あー疲れた(^^;。基本楽しみましたが、どうしても「ゲーム」をネタにするとゲームと世界をどうにかして繋ぎたい、と書き手は思ってしまうのかも知れませんね。そこをぶった切ってしまったお話がもう少し読みたかった気もしなくはないけど。んでも「1アップ」とか「キャラクター選択」とかの、なんとも言えん愛らしさにはとても好感は持ちましたよ。
★★★☆
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