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2019-09-17 [長年日記]

[Books] 危険なヴィジョン[完全版]

危険なヴィジョン〔完全版〕 1(ハーラン・エリスン/編集 伊藤典夫/翻訳) 危険なヴィジョン〔完全版〕 2(ハーラン・エリスン/編集 浅倉久志/翻訳) 危険なヴィジョン〔完全版〕 3(ハーラン・エリスン/編集) ハーラン・エリスン 編/伊藤典夫 他訳
カバーデザイン 川名潤
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-012234-8 \1200(税別)
ISBN978-4-15-012239-3 \1200(税別)
ISBN978-4-15-012243-0 \1240(税別)

今となっては…

1967年に刊行され、大きな話題を呼びニュー・ウェーヴの先駆けともなった伝説的アンソロジーの完全版、全3冊。

伊藤典夫さんがなかなか続きをやってくれなくて刊行が止まっていた、ってのは本当なんだろうか。とにもかくにも「1」だけが邦訳されてからほぼ半世紀。ようやく完全版の登場で、割と当惑してる(w。とにもかくにも感想ですが、他の本を読みながらぽつぽつと読んでいたので割と記憶も飛びがち。なので今回は簡略版で失礼します。

第1巻
  • 夕べの祈り(レスター・デル・レイ/山田和子 訳)
  • 蠅(ロバート・シルヴァーバーグ/浅倉久志 訳)
  • 火星人が来た日の翌日(フレデリック・ポール/中村融 訳 )
  • 紫綬褒金の騎手たち、または大いなる強制飼養(フィリップ・ホセ・ファーマー/山形浩生 訳)
  • マレイ・システム(ミリアム・アレン・ディフォード/山田和子 訳)
  • ジュリエットのおもちゃ(ロバート・ブロック/浅倉久志 訳)
  • 世界の縁にたつ都市をさまよう者(ハーラン・エリスン/伊藤典夫 訳)
  • すべての時間が噴きでた夜(ブライアン・W・オールディス/中村融 訳)

一番の問題作はたぶん、ファーマーの「紫綬褒金…」なんだろうと思う、んだけどこれ、訳者の山形浩生さんが少しばかりがんばりすぎ、かつ原作が短編というよりは中編のヴォリュームなモノだから、しっちゃかめっちゃか感も飛び抜けてる。で、それは自分には逆効果だったかもしれない。言い方悪いかな、訳者のドヤ顔ばかりが目に付いてちょっと邪魔、というか(^^;。
その他、シルヴァーバーグの「蠅」は空気が読めない超越者によってえらい迷惑を被る人の話。「ジュリエットのおもちゃ」は時空を超えて男漁りを繰り返す娘が連れてきた人物とは…、んで続く「世界の縁に…」はエリスンからブロックへのアンサーラップ的作品。ここらはなかなか楽しかった、というか今の自分にとって、このあたりの作品はむしろ「穏当なヴィジョン」になっているということかもしれない。

第2巻
  • 月へ二度行った男(ハワード・ロドマン/中村融 訳)
  • 父祖の信仰(フィリップ・K・ディック/浅倉久志 訳)
  • ジグソー・マン(ラリイ・ニーヴン/小隅黎 訳)
  • 骨のダイスを転がそう(フリッツ・ライバー/中村融 訳)
  • わが子、(しゅ)ランディ(ジョー・L・ヘンズリー/山田和子 訳)
  • 理想郷(ポール・アンダースン/酒井昭伸 訳)
  • モデランでのできごと(デイヴィッド・R・バンチ/山形浩生 訳)
  • 逃亡(デイヴィッド・R・バンチ/山形浩生 訳)
  • ドールハウス(ジェイムズ・クロス/酒井昭伸 訳)
  • 性器(セックス)および/またはミスター・モリスン(キャロル・エムシュウィラー/酒井昭伸 訳)
  • 最後の審判(デーモン・ナイト/中村融 訳)

「月へ二度行った男」はまあSFといっても良いけどそれ以上に、ちょっと現代文学というのか、なんかそんな味わい。ビッグ・マオ・ウォッチング・ユーな味わいの「父祖の信仰」、「ジグソー・マン」はたぶん今でも色あせない系のお話なんだけど、ニーヴンぽくはない、かも。「骨の…」はSF版わらしべ長者、とでもいえるのか。わらしべほどには甘くないけどね。「わが子…」はSF的神論、ってことかなあ。
「理想郷」は、割と「父祖の信仰」と背中合わせの作品なのかも。この本が出た当時はまだ、冷戦下の危機感、みたいなものがまだまだ強かったんだな、なんてことを考えたりする。2編収録されているバンチの作品。浅学故にモデランのシリーズという物を全く知らなかったものですから、なかなか興味深かった。お話としてはどういうんだ? 義体的な物の先取り? 解説で若島正さんも書いておられるけど、全3巻のなかでもこの巻が一番楽しめたかも。

第3巻
  • 男がみんな兄弟なら、そのひとりに妹を嫁がせるか?(シオドア・スタージョン/大森望 訳)
  • オーギュスト・クラロに何が起こったか?(ラリイ・アイゼンバーグ/柳下毅一郎 訳)
  • 代用品(ヘンリイ・スレッサー/宮脇隆雄 訳)
  • 行け行け行けと鳥は言った(ソーニャ・ドーマン/山田和子 訳)
  • 幸福な種族(ジョン・スラデック/柳下毅一郎 訳)
  • ある田舎者との出会い(ジョナサン・ブランド/山田和子 訳)
  • 政府印刷局より(クリス・ネヴィル/山形浩生 訳)
  • 巨馬の国(R・A・ラファティ/浅倉久志 訳)
  • 認識(J・G・バラード/中村融 訳)
  • ユダ(ジョン・ブラナー/山形浩生 訳)
  • 破壊試験(キース・ローマー/酒井昭伸 訳)
  • カーシノーマ・エンジェルス(ノーマン・スピンラッド/安田均 訳)
  • 異端車(ロジャー・ゼラズニイ/大野万紀 訳)
  • 然り、そしてゴモラ……(サミュエル・R・ディレイニー/小野田和子 訳)

粒はそろってる、と言える巻とは思う。その分突き抜けた、と感じる物は少なかった…かな。個人的には後半戦の方が好みかも。バラードの「認識」は彼の有名な「健忘症と浜辺の錆びた自転車」を地で行ってる感じ(w。何でそうなの? の違和感のゆったりした畳みかけが良い感じ。「ユダ」はいわゆる神殺しのお話なんだけど、どっかで神様を捨てきれないあたりが英米SFだよなあと思ってしまう。「破壊試験」超弩級宇宙戦艦の正体でワロタ。お話的には第2巻の「父祖の信仰」と通ずる物があるかも。「カーシノーマ…」はこれも2巻にも似たようなのがあったな、な藁しべSF(というジャンルがあるのかは知りませんが)。もちろんこっちもオチは甘くない。「異端車」、ええと、ゼラズニイには「エーリアン・スピードウェイ」という未来のカーレース物SFがありましてですね、クルマをネタにするのが好きな方なのかしら。なんてあたりでしょうか。

というところで。何せ半世紀前のショック、が正直あったのかどうかも自分には解らない(いくらジジイといっても10代前半に海外で起きてたことなんかフォローできないよ)物を今、読んで何か得られる物があるのか、といわれたらそこはもちろん、あるとは思う。当時の社会情勢やなんかを斟酌する必要もあれば、リアルタイムで読んでいないと解らない、モラルであったり常識であったりに突きつけられた何か、の切れ味はさすがに今となっては味わえない。ただ、その「古さ」も含めてこれはレガシーとして押さえておいて損はない、って事なんじゃないかな。ある程度年季を積んだSF者のための本、かもしれないね(^^;。

★★★


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