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2019-09-23 [長年日記]

[Books] NOVA 2019年秋号

NOVA 2019年秋号(大森望/編集) 大森望 責任編集
装幀 川名潤
河出文庫
ISBN978-4309417059 \920(税別)

宇宙海賊船シャーク、とは関係なかった(あたりまえ)

おなじみ書き下ろしSFアンソロジー。今回はシンガー・ソングライターとして知られる谷山浩子など9人の作家が登場。

ということで。早速行きますぞ。

夢見(谷山浩子)

亜紀ちゃん、島ちゃん、そして私、夢見。二人の友人が私にせがむのは自分が見た夢の話を聞かせること。だが肝心のその夢は、日が経つにつれて不可解な物になっていく…
シンガー・ソングライターとして有名な(オレでも知ってる)谷山浩子さんはこれまでにもいくつか、文章を書いてらっしゃるそうだけど残念ながらそちらは未読。なので初めてこの方の文に触れたわけだけど、本作に関してはなんというか、少女マンガテイストのホラー、的な感じがあった。佳編、といったところでしょうか。

浜辺の歌(高野史緒)

海に近い小さな認知症患者のための施設。そこでは入所者たちのセラピーの補助として、ある物が使われていた…。ま、今でもアニマルセラピーなんてものはありますが、ちょっと先の未来には、ってお話。静謐にして端正。

あざらしが丘(高山羽根子)

売れないロコドル・ユニットだった"あざらしが丘"を有名にしたのは日本の捕鯨事業の再振興を狙って創業した、模造クジラを追う「捕鯨アイドル」としての再出発後。僕はそんな彼女たちの追っかけから、彼女たちの活動を記録しwebに配信する作業を担当するようになっていた。そんな僕や彼女たち、それからファンたちにとっての最大の関心事は、出自不明の巨大な白鯨。"モヴィ"と名付けられたその巨大クジラと"あざらしが丘"の闘いはネットでも話題を集めていたのだ…。
ネットワークを介した情報のやりとりにワンアイデア。ふふふんと読んでいくと、最後の方でちょっとした捻りが効いている。

宇宙サメ戦争(田中啓文)

宇宙、それはサメ類に残された最後の開拓地であるから始まるお話がまともなわけがない。しかも書いているのが田中啓文ときたらなおさら(w。最初のナレーションから始まるおかしな世界は、童話やらあの超大作映画やらのパロディをぶち込んで、最後に落語的なオチでサゲる、という。ま、言葉は悪いがそれだけのもんですが、だからこそおもしろさはしっかり担保されておるね。

無積の船(麦原遼)

数学SFならぬ幾何SF。ええと、解らん( ̄▽ ̄;)。ま、幾何学を用いた格闘アクション、みたいな楽しみ方はできるんだけど、むう、ごめんなさい、苦手な方です。

赤羽二十四時(アマサワトキオ)

一度はラッパーとして名を成したスリムだったが、友人の裏切りですっかり落ちぶれて母の故郷、日本に流れてコンビニの店員になっていた。だがそのコンビニは…
作者ご自身、コンビニ勤務経験があるということで、コンビニの描写はなかなか緻密。かつきっとこんな客、完全に一致はしなくてもいるんだろうなあ、などとニヤニヤしながら読んでいくと、お話はだんだん不穏(wになっていく。非常にテンポよくお話自体は進むので良いんだけど、最後は結構大変なことになってるような気が。

破れたリンカーンの肖像(藤井大洋)

NOVA+ バベルで初登場した調停官フォークのこちらは前日譚ということになるのかな。フォークはまだ合衆国のエージェント。今、彼の目の前には見た目には全く見分けの付かない2枚の5ドル札。そのうちの1枚を持っていた男は、これはタイムトラベルしてきた同じものなのだと主張するのだが…
非常に凝った構成の時間SF。懲りすぎてて自分の弱いオツムは大混乱だ(w。

いつでも、どこでも、永遠に(草野原々)

八千夜が恋い焦がれていた万理乃は先輩である灘と付き合っていた。時間をかけて、ゆっくりと距離を詰めてきたつもりだったのに…。自暴自棄に陥った八千夜の唯一の救いになってくれたのは、それまで見向きもしなかった個人用ヘルプ・アプリケーションだった。やがて…
最後にして最初のアイドルの草野原々による百合SF。先に挙げた作品もそうだったけど、少々ベタで浅薄な導入から、お話はどんどんあり得ない方向に加速、巨大化していく、グロこみで(w。そこのところの疾走感は大変楽しいです。オチのえげつないスケール感もこの人の魅力、って事になるのかな。

戯曲 中空のぶどう(津原泰水)

地方都市の郊外にふらりと現れた男。今付いたばかりだという彼の言葉とは裏腹に、その存在は街の人にとってなにか違和感と既視感を醸し出すものだった…
最近は別の方向で話題になっている著者ですが、こちらは実に落ち着いたお話。解説で大森パパも書いてるとおり、開幕編となった谷山浩子さんの作品と対になるようなお話、といえるかな。

ということで。どうだろ、自分的にはちょっと食い足りないというか、飲み込みづらい作品が多かったかもしれない。ただこれは、最新の日本SFのトレンドみたいなものをちゃんと理解していないって事なのかもしれないな。結果としてサメSFが一番面白いアンソロジー、ってどうなんだ? って気もちょっとしますな。「宇宙サメ戦争」「赤羽二十四時」「いつでも、どこでも、永遠に」あたり、気に入りました。

★★★


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