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2007-03-23 [長年日記]

[Books] 老人と宇宙 (24:24)

老人と宇宙(Scalzi,John/著 内田昌之/翻訳 スコルジージョン/著) ジョン・スコルジー 著/内田昌之 訳
カバーイラスト 前嶋重機
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-011600-2 \840(税別)

長く生きるってことは、より長く老人でいるって事なのね

75歳の誕生日を迎えた私、ジョン・ペリーは、かねてより予定していた行動を実行に移すことにした。コロニー防衛軍(CDF)への入隊手続き。かつての世界大戦ののち、宇宙各地のコロニーへの植民活動がインドなどの人口過剰地域に限られ、米国民には宇宙への道がほぼ閉ざされた時代。この時代、宇宙に出ることが出来る先進国の市民は、75歳以上で、二度と地球に戻ることが出来ないという条件を呑み、CDFの兵士として兵役に就くことを呑んだ老人達のみに限られていたのだ。 10年前に先立った妻に別れを告げ、宇宙を目指すジョンを待ち受けている物は何なのか…

自身のblogで発表した物が話題を集め、めでたく書籍として刊行され、キャンベル賞まで受賞してしまったというなかなかユニークな出自の本。帯にいわく、「21世紀版 『宇宙の戦士』」。まあそうだが、なんというか本を書くにあたっての覚悟、みたいな物についてはハインラインほどには「これをやったらこうなっちゃうかな」みたいなところに対する腹の括り具合は希薄な感じがあって、いろいろヤバげな設定がある(植民地政策を全宇宙規模でアリ、と単純にしてしまう、みたいな)にもかかわらず、世界観という部分に関しては案外底が浅い、と思う。「宇宙の戦士」が(作者の真意は良くわからないけど)軍隊という物を文化的に積極的に肯定して、お話を進めていくのに対して、本書ではその辺は「宇宙の戦士」以上に念入りな訓練過程が描写されているのにもかかわらず、そこから感じられる物ってのは案外技術的な部分に限られたものでしかなかったりする。そこから何かを感じ取るような本ってわけではないのだな、これは。

んじゃあどこを楽しむのかと言えば、よぼよぼのじいさんばあさん達がなぜ兵士として必要とされるのか、そしてそのよぼよぼな連中に今一度、ちゃんと兵士としての任務を全うするためにどういう救済措置があるのか、その方法論がこのお話の世界観の中にどういう影響を与えているのか、ってあたりのアイデアを読んで楽しむ、あたりにあると言えそうで、そこのところはかなり楽しめる。特に、なぜに75歳以上が兵士として必要なのか、その年代の人々を兵士として徴用する上でどういう考えが潜んでいるのか、ってあたりにお話のメリハリを産み出す原動力が潜んでいて、そこに気がつくと(特に中盤以降の展開は)これはこれでかなり楽しめる物になっていると思った。

SFとして「これはびっくり」的なサプライズは薄いんだが、かっちりとまとまったエンタティンメントとして悪くない。ジョンの75年の人生であったことが中盤以降、いろいろと深い意味を持ってくるあたりもなかなか結構。反面、後半突然お話からシビアさが薄れちゃう傾向があって、そのあたりはちょっと残念なんだけど、楽しく読める一作ではある。同じ世界観でいくつかのお話が出ているようなので、そちらも読んでみたいです。本書ではちょっとしたトリックスター的扱いになっている、とある異星人にスポットを当てた作品があったりすると嬉しいのだがな。

宇宙の戦士(Heinlein,RobertA./著 Heinlein,RobertAnson/著 ほか)B0009Y29F6

こちらが元祖「宇宙の戦士」。バーホーベン版の映画はいろんな意味で必見だと思う。

(★★★)

本日のツッコミ(全1件) [ツッコミを入れる]
加賀須野 旭 (2007-03-31 22:55)

いつも書評を参考にさせていただいておりますが、今回は「この書評だけで」買うところまで行きましたありがとうございます。<br>立ち読みに行くところまではいく、までのは多いんですが(^^;)。


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