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ダン・シモンズ 著/酒井昭伸 訳
カバーイラスト 生頼範義
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011752-8 \1100(税別)
ISBN978-4-15-011753-5 \1100(税別)
数千年の未来。ポスト・ヒューマンと呼ばれる新しい人類によって慎重に管理されるごく少数の古典的人類は、高度に発達した技術文明の元、安寧な暮らしに甘んじ、自分たちの住む世界以外の事を全く知らないまま、享楽的な毎日を送っている。同じ頃、木星以遠の太陽系の外枠星星域にはモラヴィックと呼ばれる機械生命体が独自の文明を築き上げ、そして火星にもまた別種の文明が繁栄していた。わずか120年程度で急速に火星のテラフォーミングを完了した彼らは、なぜかギリシアの神々の姿を持ち、地球の21世紀初頭に死んだはずの歴史学者たちを自らの下僕として復活させ、彼らを古代の地球に送り込み、今まさにクライマックスを迎えようとしているトロヤ戦争に、神々として介入しようとしていた。
火星で起きている不可解なこの現象に疑問を持ったモラヴィックたちは、小規模な調査隊を火星に派遣するのだが…。
文庫としては先に出た短篇集、「ヘリックスの孤児」に収録されていた「アヴの月、九日」に登場したキャラクタがかなり重要な位置づけをされて登場する。向こうは向こうで今ひとつ見通しが悪いと感じたものだが、こちらを読んでいくと「ああそういうことだったのか」と言うのがちょこちょこと見えてくるので、わからないまでも先にこちらの短篇を読んでおいた方がいいかも知れない。
さて、「ハイペリオン」シリーズにもそんなところがあったけれど、こちらもペダンティックな古典文学の引用と再構成にかなり緻密なSF考証を組み合わせ、そこに巧みなストーリーテリングをまぶして、凄まじくも豪快な読み応えの一作になっている。とっかかりは割と突き放し気味なのがシモンズの特長で、読みはじめに少し先に進みづらい感じがあるんだが、一旦シモンズの書くバイオリズムみたいなものを掴んだら、そこから先は割と一気呵成、ぐいぐいと読み進んでいける。
お話の背景にあるのは、世界に複数混在する一種のテレポート技術。おそらくこの技術の内のひとつの過去の乱用が、未来の世界の有り様に巨大な変容をもたらしてしまい、この巨大な物語の発端となったという事なんだろうが、この分厚い上下巻の文庫を読んだだけではその真相はわからない。終盤、何やら異様なまでの盛り上がりを見せた本書は、続きは「オリュンポス」でどうぞ、と言うところで終わってしまう。続きが激しく気になるぞ、どのくらい待ったら文庫になってくれるんだ? ハードカバーは2007年。速くて来年ですかねえ…。
どーでもいい上に別にシモンズが悪い訳じゃないんだけど、「QT」やら「ハッシュタグ」やら、最近は油断してると現実世界がSFに悪さ仕掛けてくるご時世なんだなあ…。
★★★★
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