ばむばんか惰隠洞

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2010-08-06 [長年日記]

[Day] 毎日暑いですね

湊川公園ちょっと買物があったし、中華丼が食いたかったのでお出かけ。湊川で降りて新開地の中華料理屋で中華丼。写真は湊川公園の鳩さんたち。さすがにこう暑いと鳩さんたちも木陰に集合するのだね。

一番星食堂オマケ。

ミナエンタウンの食い物屋さんの看板。なんか心惹かれるものがあるんだが、開店が18:00なんだね。意外に行きにくい条件だったりするんだよなあ。

[Books] ジェイクをさがして

ジェイクをさがして(Miéville,China/著 日暮雅通/翻訳 Mi'evilleChina/著 ほか) チャイナ・ミエヴィル 著/日暮雅通 他訳
カバーアート 鈴木康士
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011762-7 \980(税別)

寄せて、投げる

ある日世界は「終り」に向けて動き始めた。進んでいく滅びの中で僕は君を捜している。世界の滅びと君がいなくなったことにはなんの関係もないのかも知れない。でももしかしたら君は何かを知っているのかも知れない。そもそも君が何を知り、なにを考えていたのかも僕は実は良く知らなかったのだ。それでも僕は君の手がかりを追い続けるだろう。その先に何かがあると思うから…。

表題作他12編と原作を担当したコミック1編収録。

久しぶりに読むのに手こずるタイプの本。SFというよりはホラー風味がかなり強めで、かつ念入りに組み上げた、不安感がたっぷり込められた不条理をラストまで持って来ていきなりぽんと放り投げて終わっちゃうような作風が続くので、一作読むたびにどうもこう、ケツの収まりの悪さを感じてしまい、「今読んだのはなんだったんだろう」って気分になり、次のお話になかなか進めない時間ができてしまうのだな。一編一編の出来映えは決してどうしようもなくひどいというような物ではないのだけれど、さて次は何が来るだろう的な期待以上に、今度は何読まされるんだよ的なもやっとした警戒意識が先に立ってしまうのだな。

そんな、上手く説明できない短編集。ほんとに短くなると思うけど、それぞれの作品についてちょっとだけ。

ジェイクをさがして(日暮雅通 訳)

あらすじで述べたようなお話。崩壊していくロンドンの街の描写がかなり魅力的。震災から復興していく神戸の街の様子を逆回しにするとこんな世界になるのだろうか。そこには不安と同時に妙な根拠のない明るさもちょっとだけ混じるんだけど、このお話にも不安と怖れに、ちょっとばかりの根拠のない明るさがまぶされていると思う。

基礎(柳下毅一郎 訳)

なんとなくスティーヴン・キングが書きそうなお話のような気もする。そうでもない? お話のモチーフになっているのがイラク侵攻戦争で実際に米軍が行った事である、ということもあり、ストレートに怖さの伝わってくるモダン・ホラー。

ボールルーム(エマ・バーチャム、マックス・シェイファーとの共作。田中一江 訳)

こちらもストレートなモダン・ホラー。ミエヴィル作品にしては珍しくオチが判りやすい

ロンドンにおける"ある出来事"の報告(日暮雅通 訳)

本書の中でもかなり異彩を放つ作品。ここで不条理っぷりを発揮するのは人ではなくて街。一種の伝聞形式で綴られる不思議世界の物語。おかしなあっけらかんさに満ちておる。

使い魔(日暮雅通 訳)

手の甲にルーン文字が浮かんだりはしない。フリークス風味満点のどろどろ、ぬちゃぬちゃ感たっぷりな気色悪い短篇。そしてラストはやっぱり放り投げる、みたいな。

ある医学百科事典の一項目(市田泉 訳)

「ロンドンにおける…」と同様、伝聞形式で構成された超短篇。こちらもあっけらかんとした感覚の中に悪意が潜んだ一作と言えるかな。

細部に宿るもの(日暮雅通 訳)

ミエヴィルはかなりラヴクラフトにはこだわりのある人なのだそうだが、本作などはかなり端正な造りで、かつクトゥルーの中に入っていてもおかしくない作品なのかも知れない。クトゥルーあんまり良く知らんけど。

仲介者(日暮雅通 訳)

スパイ小説のスタイルを借りた不条理・投げっぱなし系短篇。この人の作品はかなり頻繁に「で、誰が黒幕なんだよ」と突っ込みたくなってしまうんだが、このお話もそっち系。外枠がエスピオナージなだけに、そっちの感覚はより強まっちゃうかな。

もうひとつの空(日暮雅通 訳)

ふと目を止めた取るに足らないものを自分の世界に持ち込んだばかりに恐ろしい目に遭ってしまう主人公、というホラーの王道を行くような作品。これも投げっぱなしだが、この投げっぱなしは自分みたいなヌルい読者でも受け入れられるレベルに収まっていると思う。かなり好き。

飢餓の終わり(田中一江 訳)

PSはクズだ、N64サイコーって所でちょっとサムズアップしてしまったが話の本質はそこにはない。ネットワークをネタにした不条理ホラー。今いちばん動きのある分野だけにネタとしての鮮度が今となってはかなり落ちてしまっている部分もあるにはあるが、本質的なところの怖さはしっかり押さえていると思う。ちょっと狂騒的なところはオレ好み。

あの季節がやってきた(日暮雅通 訳)

クリスマス関連の用語のコピーライトが片っ端から巨大企業に押さえられちゃった世界で起きる、クリスマスのスラプスティック。

コナミの仕業だな

いやいや(w。不条理ではあるが昏さのかけらもないドタバタ劇。かなり好き。

ジャック(日暮雅通 訳)

こちらもフリークス風味たっぷりの掌品。著者の別シリーズからのスピンオフ的お話だそうだが、単品でも楽しめる。

鏡(田中一江 訳)

2003年ローカス賞ノヴェラ部門受賞作品。「ジェイクをさがして」に通じる、崩壊していく世界を舞台に描かれる不条理な侵略ストーリー。侵略者たちのアイデアはかなりSF的。ただやっぱり最後に放り投げてるんだよなあ…。

前戦へ向かう道(ライアム・シャープ 画・日暮雅通 訳)

最後はコミックの原作。なんでしょね、伊藤和典の脚本を小林源文が劇画にしたような感じですな。

ってことで。なんだろうな、早川さんはオレと同様に頭をポリポリとし、帆掛さんはむふふと入り込み、国生さんが意外と深く読み込み、意外に富士見さんが大喜びするような短編集、と言えるだろうか。面白いけどかなりクセの強い短編集だね。

★★★☆


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