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大森望 責任編集
カバー装画 西島大介
カバーデザイン 佐々木暁
河出文庫
ISBN978-4-309-41027-2 \950(税別)
全編書き下ろし新作で構成される日本SFアンソロジーの第二弾。12編を収録。
編集後記にもあるとおり、前作「NOVA1」の執筆者と全くかぶらない12人の作家による新作の競演。まずは短く感想を。
わあい、「フムン」があるぞ、っておいおい。なんというか、神林長平はもはや「巨匠」なのだなあと言うところの感慨が一番大きかったかも知れない。考えてみればそりゃそうだ、オレが青二才のころにすでに作品を発表されていらっしゃるのだもの。お話はあれだな、「今宵、ふたたび銀河を杯にして」って感じで。認識とコミュニケーションってのは、今風に言えば世界を解釈するって事なのだな、と。今や神林長平を「オーソドックスなSF」と評する時代であるのだなあ、としみじみ思うロートルがここに一人。
「あの」レンズマン・シリーズをベースに、ちょっとニヤニヤしたくなるジュヴナイル風味をまぶした佳品。終盤に登場するマドンナがフジミさんって名字なのは、今や少年少女の琴線を心地よく引っ掻いてくれるのは早川でも創元でもなく、ライトノベル陣営なのだぜ、というちょっとした皮肉が込められていたりするのだろうか。
○○×○○という数字の意味にすぐに勘づくべきであった。あるいは「盲点ではなく○○(乱土の判断で伏せました)で」ってところでね。すばらしくトリッキーな記述SF。
構成というか仕掛けの部分で最高に凝り倒した短篇で、ちゃんと追いかけたらこれはこれで一風変わった楽しみ方ができる一作なんだろうと思う、が、それをやる気は金輪際起きない。乱視つきの老眼爺さん、今や普通に文庫本を読むのも少々苦労してしまうんだ。ページを開いた瞬間、「ごめんなさい」で飛ばしちゃいました。
こちらも構成で一工夫のある作品だが、まあこれぐらいなら老眼ジジイでも大丈夫。静謐だがどこか危うい都市の様子を観測する他者の視点。実はちょっと怖いお話だよね。
独特な味のあるショート・ショート。味があるとは思うのだが、ショート・ショートのキモは捻りの強烈さにあると思ってる自分としては、「今の捻りました?」感が常につきまとうのも正直なところで。
そういう言い方は失礼なのかも知れないが、このアンソロジーの中で一番翻訳SFのテイストを濃くたたえた作品。それ故ってわけでもないと思うが、自分が本書の中で一番好きなのはこれかも知れない。時系列の微妙なずらし方とか、読み進んでいくと「ホテル・ルワンダ」的様相が読者に突きつけられてくる話の構造とか、技巧の面でもこれはかなりいけてるんじゃないでしょうか。
ちょっとキュンと来るリリカルSF。ページにおける活字と余白の力関係みたいなものから勝手に決めつけちゃうけど、これは基本的にライトノベル。つーか「ハローサマー、グッドバイ」に軽く「エンディミオンの没落」風味振りかけてみました、って読み方は間違っていますか?
実は意外におっきな事が起きてるかも知れないシノプシスに何やらファンタジックでゆったりとした読み味を被せてきたような。後半やや「ナマ」な表現(ググる、とかね)が挟まっちゃって少々残念。ファンタシイと思って読んでいたものがいきなり生臭い方にひっぱり込まれたような気がして。
古来の妖怪伝承にフリークス風味をちりばめ、オマケに多世界解釈までさらりと持ち込んできた力作。わたくし的には本書における「衝突」と双璧をなす作品かもわからん。
完成度の高さって点では最高なんではなかろうか。何より読み手をびっくりさせるって所の作家の技巧の部分で、他の追随を許さないものがある。ただ、作家のモラルって所でどうなんだ? ってところにどうにも収まりの悪いものを感じざるを得ない。
かつて中村融さんは「20世紀SF 6」の解説で大変重い問いかけをなさっていたわけだが、あれと同じ事をこの先、宮部みゆきは何かの弾みで問いかけられるかも知れないようなお話を書いてしまったと思うわけなんだけど、そこに向き合う覚悟をした上で作者はこの話を書いたのだろうか、というところでどうにも収まりの悪いものを感じてしまうわけで。
ラストは落ち着いた感じで。何となく「あけてくれ!」がビジュアルイメージとして出てきたのは、オレがそういう歳だからって事に過ぎないのかな。
なんだろう、読み応えという点では文句なしだったんだけど、「SFってこう言うものか?」ってところで盛大に疑問符が湧いて出てくるような。外に向かって何かを突破したい、みたいな勢いがあんまり感じられなかったあたりで、逆にこれじゃあSF、廃れてもしょうがないかもなあなんて思ってしまったことですよ。
★★★☆
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