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ジャック・キャンベル 著/月岡小穂 訳
カバーイラスト 寺田克也
カバーデザイン 岩郷重力+WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011939-3 \1100(税別)
異星人との遭遇、混乱状態にあるシンディック内部の抗争とそれに伴う独立勢力の出現と、ギアリー率いる遠征艦隊にふりかかる苦難は絶えることを知らない。今、ギアリーの艦隊は拿捕したベア=カウ族の巨大戦艦を伴って、シンディックからの独立を宣言したミッドウェイ星系にある。だがここでも、ミッドウェイ星系の独立を認めないシンディック側の勢力との間で緊張状態が続いていた。長期の遠征で装備も兵士達も疲労困憊状態のギアリー艦隊がアライアンス宙域に帰還出来るのはいつになるのか…。
前巻でわらわらと登場した異星人たちについての突っ込みは割と控えめで、本書で語られるのはそこは一旦措いといて、一旦は休戦なったアライアンスとシンディックの関係が、そう簡単に収まったりはしていないよ、むしろ事態は一層ややこしくなっとるよ、と。シンディックの影にいると思われる謎の異星人の情報を得るため、未踏星域に踏み込んでみたら異星人は一種類じゃなかったり、シンディック自体も一旦休戦は受け入れたけれども完全にあきらめたわけではなく、どうにかしてアライアンス、ひいてはギアリーの勢力を削ぎ、あわよくば一矢報いようとさまざまな手を打ってくる。しかもそれは、シンディックなりにギアリーの作戦を研究したものだったりする皮肉。そんな中で相変わらずのギアリー、デシャーニ、リオーネの泥沼未満の三角関係的、もしくはツッコミつきの夫婦漫才が展開する。このへん、読んでるこっちがシリーズ物ゆえ慣れちゃった、ってとこもあるんだけど、やっぱ楽しいやね(w。
そんな苦労満載の公開のはて、ようやくアライアンス宙域にたどり着いて一安心かと思ったら、今度は味方である筈のアライアンス側にもギアリーの一行の凱旋を快く思わない勢力があって、というのが本書の後半、で、ここでギアリーたちの障害となるのは味方の筈のアライアンスの政治家達。基本的にこのシリーズでは、高位のものはおおむね理解力と想像力に欠け、旧来の体制保持のみに躍起になる者たち、という描かれ方がされているのだけど、その代表的な連中として政治家、しかも指導的立場にある者たちがギアリーの前に立ち塞がることになる。
ただ単に忠実な軍人でありたいと願っているにもかかわらず、次から次へと望まぬ立場での戦いを強いられるギアリーなんだけど、本作ではとうとう政治的な駆け引き、ってやつをこなさなくてはならなくなる。で、実は本書で一番おもしろいのはこの部分かも知れない。ただ忠誠であればよい軍人と違い、場合によっては自分の意志に沿わない行動なり決定なりをなさなければならないのが政治であって、それを一概に不誠実と決めつけることもできないだろ? って問いかけがなされるわけで、それは取りも直さず、ギアリーにとっての成長のためのハードルとして設定されているのだと思う。政治家達の中でも比較的「わかっている」人物、サカイ評議員のこんなセリフはなかなか示唆に富む。
わたしは政治家です、元帥。真実を口にする政治家がどうなるか、わかりますか? 再選されないのです。政治家は有権者に嘘をつかなければならない。真実を言えば罰せられ、嘘をつけば褒美がもらえます。その結果、政治家は大昔の実験で使われた犬のように、褒美がもらえる行動をとるようになります。なぜか体制はぐらつきながらも発展し、アライアンスは崩壊をまぬかれます。
さてこの先、ギアリーは清濁併せ呑むと言うことを学ぶのか、あえてそこには距離をとっていくのか、そこは以下次巻、とういうことで。
最後に一点、前巻でも意外に古風な味があって、なんて話をちょっとしたけれど、本書のラスト付近、ギアリーたちが遭遇した比較的人類に友好的な異星人ダンサー族。彼らはなぜか理由を告げずひたすら人類すべての母星たる地球への訪問を希望するのだが、その理由とは… ってのがわかる瞬間は、かなりグッド・オールド・SFな風味を感じてなかなかぐっと来ましたです。
★★★☆
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「彷徨える艦隊」、なかなか良いですよねぇ。そうそう、スコルジーの「レッドスーツ」、とても良かったです。新ハヤカワSFシリーズですが…。<br><br>あ、宮崎で生頼さんの原画展見てきましたよ! 凄かったです。
今、同じキャンベルの「月面の聖戦」を読んでるんですがこっちもなかなかで。これ読み終えたらプチスコルジー大会に行こうかと思ってます。<br>生頼展、うらやましいですね。軽石庵さんが提供した、やや汚い「SFアドベンチャー」誌、役に立ったのかな(^^;。