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ピアース・ブラウン 著/内田昌之 訳
カバーイラスト 諸賀岳志
カバーデザイン 岩郷重力+A.T
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011994-2 \1200 (税別)
全人類が色でカースト分けされた世界。世界を統治するのはゴールド階級、以下、金融を扱うシルバー、宇宙航行に携わるブルー、快楽を提供するピンク、そして最下層に位置するレッド。彼らは火星のテラフォーミングのため、この星の深層部で資源採掘の作業にあたっている。労働条件は厳しく、上層階級からの差別も厳しい中、レッドの若者、ダロウはこの条件下、与えられた環境の元で最善の結果を出そうと日々を過ごす。だがそんなダロウの生き方は、彼の若妻、イオからすれば単なる逃げにしか見えないものだった…。
与えられた環境を受け入れ、その中でよりましな待遇を得ようとするダロウと、そんなダロウの生き方に異議を申し立てる妻、イオ。愛し合いながらも心の一番深いところにわだかまりも残す二人。だがそんな二人を待っていったのはあまりにも過酷な結末だった。そしてその結末の果てにダロウが目にしたものとは…。
帯に火星SFの新たな金字塔
なんて書いてあるから、またキム・スタンリー・ロビンスンのあのシリーズとか、最近だとアンディー・ウィアーのアレとかを連想するけど、そういうものではなくて、どちらかというとピカレスク・ロマン的な何か、みたいな物に仕上がっていると言えるか。ハード寄りのSFと言うよりはSF的な舞台設定の元で繰り広げられるサバイバル・アクション的なお話なのね。
あらすじでざっと述べたようなお話の流れで、酷使され、搾取されているレッドたちに秘匿されていた巨大な秘密を知った時、ダロウはとある組織からの申し出を受け、レッドである自分の肉体をゴールドのそれに改造することを了承する。目的はゴールドたちのエリート養成校にエリート候補生として潜り込み、ゴールドたちの中でも高位の存在まで上りつめ、ゴールドによる支配体制を内側から破壊すること。で、この、レッドであるダロウを取り巻く環境の描写、一度は折れたダロウが新しい目的を得て自らを改造していく過程は、SFとしても普通のお話としてもかなり面白い。ただ、この面白い部分は本書の中では3割強を占めるのみ、ってのが何とも残念というか何というか。
頑張ってゴールドになりすますことに成功したダロウは、ゴールドたちのエリート候補生が火星の表面に点在する12の寮のどこかに配属され、そしてその寮同士の覇権争いのまっただ中に飛び込んでいって…、と言うのが本書のメインで、で、ここのところが、
書きすぎだろう
と思ってしまうんだった。お話の流れみたいな物は納得できるし、お話自体がつまらないとも思わない。ただ、ここでじっくり語られるのは、レッドであるダロウを絶対的な力で押さえつけてきたゴールドたちになりきることでしか生き残ることができない世界に放り込まれたダロウの物語で、それはダロウが本来一番拒否したい存在になりきっていく過程を念入りすぎるくらい念入りに描いていくことになる。それはお話の流れ上不可欠なものであるというのは理解できるけど、読んでて気分が良いものではないわいな。
もちろんこの気分悪い展開があるから、ラストの次巻への希望を持たせるシーンが活きるわけで、そこは判るけどやっぱちょっと念が入りすぎだよなあと思う。ここをもうちょっと刈ってくれたら、素直に次巻を楽しみに待とうって気になったのではなかろうか。あ、言い忘れてましたけどこれ、三部作なんだそうです(w。
内田昌之さんの訳者あとがきで、続くお話は宇宙が舞台になるってことで、辛うじて興味は持続してるかもしれない。続きが出たら読みたいと思ってますが、ちゃんと続いてくれるかなあ…。
★★★☆
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