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マイケル・R・ヒックス 著/中村仁美 訳
カバーイラスト エナミカツミ
カバーデザイン 早川書房デザイン室
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-012086-3 \900(税別)
ISBN978-4-15-012087-0 \900(税別)
未踏星域の探査を任務とする
Kindleをプラットホームにした自費出版が話題を呼び、あれよあれよという間に巨大なダウンロード数を叩きだしたというスペース・オペラ。これは「スター・ウォーズ」もかくやという3話完結の3部作で、本作は刊行順なら第4作、作品世界の時代順で言うなら第1作ということで、プリクエルから読んでね、ってことになるんですね。それが良いか悪いかはにわかには判断できないけど、なんであれ表現物というのは出来た順番に見て言うのが基本だと思うんだが、さてこのシリーズはどうなるんでしょうね、ってのは後でちょっぴり書きます。
このシリーズは人類が始めて遭遇した異星人クリーラ、彼らは人類よりもはるかに進んだ文明を持つ超種族なのだが、種全体を支配するのが独特な死生観に基づいた美学、のようなもので、異星人と遭遇したときにまず見るのは、相手が「戦うに足る相手か」というところ。で、ここで戦うに足るかどうか、というのは文明のレベルとか武力とかじゃなく、戦士としての気概があるか。圧倒的に進んだ力を持つクリーラは本気を出せば大概の種族など鎧袖一触で叩き潰せるのだけれど、そこで戦う相手に戦士としての覚悟があることを見て取ると、敢えて相手のレベルに自分たちの武器や戦闘スタイルを合わせる、という行き過ぎたフェアプレイ精神を持つ種族、という設定で、これは結構新鮮かも。
お話自体はミリタリSF風味を存分にブチ込んだエンタティンメント作品として、普通に読んでも大変面白い。その上で、一応相手はハンデをつけてくれてはいるけれど、それでも普通に考えたら勝ち目のない相手にいかに立ち向かうか、というところの流れは良い感じだし、逃げ惑う鼠に見えた人類がクリーラの想定を超えた反撃を試み、それに驚き、かつ大きな喜びを得るクリーラ、って流れも面白い、し、そんなクリーラの哲学の根底にあるものが何かあるらしい、ってあたりがほの見えてくるあたりも結構興味深いと思う。
ただ、これがプリクエルである以上、まず人気を集めた作品があって、それが一応の完結を見た後にそれを補強する意味で発表されるのがプリクエルなわけで、それは本編の面白さを一度味わった人が、面白かった今のお話を補強したいという欲求に応えるって需要に対する供給になるわけで、それはつまり、知らん人からしたらネタバレといいとこの強制お蔵出し、ってことになると思うんだけど良いんだろうか。
本作単体としては大変面白かったし、続きも読みたいと(ちょっぴり)思うんですが、先の話になるけど、エピソードⅣをどう思うのか、今から心配になってる自分がいる、かも(^^;。
★★★☆
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