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グレッグ・イーガン 著/山岸真 訳
カバーデザイン・カバー写真 岩郷重力+S.I
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-012130-3 \1060 (税別)
遙かな未来、人類を含む知的種族は「融合世界」と呼ばれるゆるやかな連合体を作り上げ、電脳世界と物質世界がシームレスに繋がった宇宙に暮らしている。「融合世界」が宇宙でコンタクト不能なのはただ1ヶ所、銀河系中央部分に存在するらしい「孤高世界」のみ。ある時、その孤高世界から、宇宙にはまだ未知の知的生命体が存在する可能性が伝えられる。人類の末裔であるラケシュはこの生命体を発見するための長い旅に出ることを決意した…。
序盤は融合世界の超文明っぷりが描写され、一体何が始まるのかとこっちも身構える(何せイーガンですから)のだが、次章に入るとお話のトーンは一転、宇宙のどこか、「スプリンター」と呼ばれる世界に暮らす生命体たちのお話が始まる。こちらはどうも融合世界の超絶的に発達した文明とは別のラインにある文明で、さらに自分たちが棲む世界が「白熱光」と呼ばれる発光体と複雑な岩盤によって外界からの観測が不可能な世界らしい。ここに暮らすメスの農夫、ロイが私淑する老人、ザックがふと感じた疑問に影響され、世界の構造、のようなものを探求しようとしていく、というお話が始まることになる。
で、この後奇数章ではラケシュたちの新たな知性体のクエストの物語、偶数章ではロイを中心としたスプリンターの住人たちによる、世界の有り様を解き明かそうとする試行錯誤の物語が交互に語られていくことになる。奇数章のキモはおそらく、超高度に発達した科学技術を用いた、未知の生命の探索のあれこれ、偶数章のそれは、それまで全く持っていなかった幾何や物理の法則を、ほんのちょっとの疑問を手がかりに思索を深め、何らかの定理とでも呼べるようなものにまで肉薄していく様子、ということになるだろうか。
オレは理系の頭を持っていないから、正直奇数章を読むのはかなり苦痛だったんだけど、偶数章はそれに比べるとかなり楽しく読めたように思う。もちろんその学問的なキモの部分に肉薄できてる自信はないんだけど、それでも(言い方は悪いですが)極めて遅れた知的レベルにある知性が、何かをきっかけにその知的レベルを徐々に上げていく、という描写自体は、それこそ「重力の使命」だったり「竜の卵」だったり、ああいう、イーガンさんに比べたらはるかにユーザーフレンドリーなハードSFで一度経験しているのでね、完全に理解できている自信はないけどそれでも、あ、今慣性の法則に気付いてるかも、とか、そういうレベルで何となく知的レベルが上がっていく様子が感じ取れてなんだか嬉しかった(^^;。
奇数章の方はそれに比べるとはるかに歯ごたえがあって、正直何言ってんのかわからんなぁ、と思いながら読んで行ってたんだけど、後半ちょっと動きがあり、それが偶数章と何か関連があるのでは? と思えてこれるような仄めかしがあるあたりでちょっと興味深くなってくる。
先に「重力の使命」とか出したけど、そこに似てるのかな、と先入観込みで思い込んでしまうと、今度はこちらが勝手に、奇数章と偶数章が作劇的なクライマックスで合流して、なんて展開を期待してしまうけど、そこがどうなるか、ははっきりさせない方が良いんだろうな。ただ、「訳者あとがき」にあった読み手が勘違いしやすい4つの事柄の3番目に関しては、自分は大外れとまでは行かない程度には読めていたかな、という気はした。作劇的なカタルシスよりも、イーガンは融合世界を中心とした一種の宇宙史観みたいなものを優先したのかな、ということでしょうか。
正直文系の年寄りにはキツい系の本だと思う。でもスプリンターを脳内でチーラに置き換えたりすることで、意外に楽しめるところも多い作品でしたよ。ただまあ、もうちょっとわかりやすくしちゃもらえませんかね、ってのは言っちゃいかんのかね(^^;。
★★★☆
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