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2017-07-03 [長年日記]

[Books] ブルー・マーズ

ブルー・マーズ<上>(キム・スタンリー・ロビンスン/著 大島豊/翻訳) ブルー・マーズ<下>(キム・スタンリー・ロビンスン/著 大島豊/翻訳) キム・スタンリー・ロビンスン 著/大島豊 訳
カバーイラスト 加藤直之
カバーデザイン 岩郷重力+WONDER WORKZ。
創元SF文庫
ISBN978-4-488-70706-4 \1500(税別)
ISBN978-4-488-70707-1 \1500(税別)

退屈さまでもがなにやら尊く思えてくる

火星に進出しようとする地球の巨大資本を中心とした勢力をいったん軌道上まで押し戻し、第二次火星革命は成功するかに見えた。だが再建された軌道エレベータを破戒し、火星を一種のモンロー主義的が状態まで持って行こうとする一部の過激な火星環境保護主義者(レッズ)たちが武装蜂起しようとしていた。再び火星は戦乱の渦に巻き込まれてしまうのか……

前作、「グリーン・マーズ」の感想をオレが書いたのは2002年1月。実に15年待たされたことになる。もちろん著者が続きを書くのを15年間サボってた、とかではなく、なにやら翻訳権的なところでのトラブルがあったとか何とか。そこらの事情は良く解らないんですが、とにかく生きてる間に火星三部作を読み切れた、ってのはとても嬉しく思っている。人生五十年の時代ならオレ、こいつは読めない計算になるもの(w。

とはいえ本書、いろんな意味で厄介な作品になっていると思う。その何割かは訳出のタイミング、残りは著者の執筆スタイルということになるだろうか。「グリーン・マーズ」から15年というけど、本書「ブルー・マーズ」の本国での刊行は1996年。SF黎明期なら20年待たされた新刊なんてのもそれほど珍しくはなかったかも知れないけれど、さすがに今やそういう時代ではない。現在只今の「時代」を反映して、再構成して、その先を考察する、というSFの役目のひとつと思える部分で、本書は出だしから賞味期限切れの状態になってしまっている。ここは本書の責任ではないだけになんとも惜しいな、と思う。

もう一点、著者のスタイル、って点だと近刊の「2312」の時にも感じた、ディティルの一毫たりとも疎かにはできない、という記述スタイルが一番大きな問題なのかも。そこを丹念に読める人だと次々と登場するテラフォーミングの途中の火星の描写の念入りぶりにほうほう、なるほどこうなっていくのか、と感心できるのだろうと思うのだけれど、自分はどっちかというと書き割りは良いから役者の動きをもうちょっと見せてくれよ、と思ってしまう方なので、勢い「退屈だなあ」と思ってしまうポイントが随所で発生してしまう。今思い返してみると「結構面白かったな」と思えた「南極大陸」にも読了直後は結構キツい評価してるあたり、自分の趣味とはどこかで根本的にあわない物がある、ということなんだろうな。ビジュアルで言うなら最初の「レッド・マーズ」での軌道エレベータが破壊され、火星が文字通り「鞭打たれる星」になる、というイメージを超える物も提供してもらえなかったわけだし。

そういう訳で実は本書の感想、「グリーン・マーズ」の時の感想をそのままコピペしてもそんなに問題はないような気はする。その緻密さに敬意は湧くけど「物語」を求める自分的には「そこは良いから」と言いたくなってしまうところも(とても)多いのね。とはいえ投げ出すこともせずに、とにかく最後まで読まなくては、と思わせる何かがある、とは言えるのかも知れないけれど。

そんなわけでいろんなところで結構辟易しつつ、それでも読み始めたからには最後まで読まなくては、という気持ちが切れなかったのも確かなので、やっぱりどこかで何かに期待していたんだろうと思う。それは多分こんなところ。

すべてが青だった。空の青、地球の空の青、ほとんど一時間のあいだ、すべてが青に染まり、二人の網膜と脳への神経経路にあふれた。間違いない、長いあいだ、まさにこの色に飢えていたのだ。永久に捨てた故郷の色。

このセンテンスに触れられた時、この本、というか火星三部作を読んでいて良かったな、って素直に思えたよ。ここだけ切り出してもなんのこっちゃ判らんかも知れんけど、これはねえ、じわじわ来るんだよね(^^;。

★★★☆


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