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2014-12-06 [長年日記]

[Books] NOVA+ バベル 書き下ろし日本SFコレクション

NOVA+ バベル(大森望/編集) 大森望 責任編集
装丁 川名潤
河出文庫
ISBN978-4-309-41322-8 \920 (税別)

日本のSF、すごいぞ

全10巻で完結した書き下ろしSFアンソロジー、新装第一弾。長谷敏司の中編「バベル」を含む8編収録。

意外と早く帰ってきた「NOVA」の新シリーズ。前シリーズでも短編と中編が入り交じっていたけれど、今回は長めの作品を一応のキモ的なタイトル・テューン的に扱っていく、ようなスタンスなんでしょうか。まずは読んでいくベ。

「戦闘員」宮部みゆき

日常生活にいつの間にか忍び込んでいた何物か。それは一見ありふれた防犯カメラの体をなしていたのだが…。何よりもお話としての完成度の高さはさすが宮部みゆき。少し不思議、が少し怖い、かなり怖い、へと変わっていく様が上手い。じいさまと少年の「戦闘員」としてのこれからの戦いに期待しちゃうね。

「機龍警察 化生」月村了衛

正直本書を買ったのはこれがお目当てだったと言っても過言ではない。「機龍警察」の新作は、おそらくこれから語られるであろう新作へのブリッジとなるエピソード。派手なバトルもSF的なくすぐりも控えめではあるけれど、警察小説(オレが好きなジャンルね)の体裁をとりながら、その中で「機龍(ドラグーン)」システムのキモ、というところへのSF的なヒキも用意してくれている。本編新作を待て、感は満点やね。

「ノー・パラドクス」藤井太洋

時間SFにはつきもののタイム・パラドックス。でも時間SFに多世界解釈をふりかけたらいろいろ面白い事になるかもよ、パラドクスなんてどうでも良くなっちゃうかもよ、的な。割にビンボ臭い世界観が、とあるタイミングでちょっとSF的にリッチなそれに変わっちゃうあたりが、なかなか面白いかも。

「スペース珊瑚礁」宮内悠介

おなじみシリーズ。なんか回を追うごとにコン・ゲーム的なニュアンスが強まっているような気が。主人公「ぼく」は毎度お気の毒、ワキの人たちがなんだかやたら面白いと言うね。

「第五の地平」野崎まど

「蒼き狼と数多の次元」というゲームをコーエーが作る事はないだろうな。いい意味で出オチ感満点。なにせ主人公はテムジンですから(w。世界史の中でも版図拡張のスピードが半端なかったモンゴル帝国、SFにやってきたらそのスケールはさらにすごい事になるんだぜ、という。そこは面白いけどなんでここに狙いをつけた?(^^;

「奏で手のヌフレツン」酉島伝法

太陽や月が地上を歩行移動し、「人」はその存在を畏れつつも依存せざるを得ない世界。念入りに作り込まれた世界観と凝った言葉の遊びが大変魅力的。割とどろどろぬちょぬちょした世界で、人が因習や環境と関わっていく様子を描く、なんだろう、押したらぐにゃりとした感触が返ってくるハードSF、みたいな。不思議な感じのお話です。

「バベル」長谷敏司

近未来のイスラム世界を舞台にビッグデータやら3Dプリンタやらカオス理論やらをぶち込んで語られるのは、未来予測のシミュレーション。ここに現代のイスラム世界(というか豊かではない世界)にも共通する、宗教や民族にリンクする様々な問題がスパイスとしてまぶされる。

ストレスの量とベクトルが、未来予測のキーデータとなる、と言う考え方が新鮮。異なる言語を植え付けられた、というバベルの塔を作ろうとした人間に対しての罰を超え、新たなバベルを築くための言葉がプログラム言語かもしれない、けれども…ってあたりもいろいろ考えさせられた。

「Φ(ファイ)」円城塔

トリに一番苦手な人が控えているという(^^;…。なんだけど今回は割に普通に読めた、し楽しめた。言語をベースに宇宙の終焉をシミュレートするSFってことでいいのかな? ただそれが何か難解な事を語るわけではなく、語れる言葉が徐々に減っていく、と言うのを文字通り見てわかる形で表現しているのが面白い。筒井康隆さんなんかがたまにやる、実験的な作品に共通する味があるかも。

全然関係ない、素っ頓狂な感想かもわからんけど、ある時点で使用できる文字が138、と明示しているあたり、この終焉に向かっている宇宙とは実はTwitter的なクラウドのメタファーになってんのかな、なんて。

自分が雑誌や書評系のサイトをあんまり見ない人間なので、世の中がどうなっているのかについてはとんと疎いんだけど、本書に詰め込まれた作品たちからは、現在ただいまの日本SFというものが、ずいぶん豊かなものになっているんだな、と思い知らされた。ついつい信用銘柄、しかも翻訳SFの方に行ってしまう自分なんだけど、そんな場合じゃなかったよ。読むべき作家さん、えらく沢山いるんだな(いまさら何を)。

★★★★


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