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保阪正康 著
カバーデザイン 山岸義明
講談社文庫
ISBN4-06-274942-4 \895(税別)
(『一期一会』改題)
昭和史に関する著作で知られる著者が、その作品の執筆にあたって30数年間に渡り聞き取り取材を行った、延べ4000人に上る有名、無名の人々。その中から、著者の心に今も強い印象を残す人物、昭和史を語る上で決して忘れてはならない人々との出会い、その人となり、そして忘れられぬ言葉をまとめた一冊。
今年から文庫になってタイトルが変わった本は、それも表記するようにします。さて。
保阪正康さんの著作は、恥ずかしながら「幻の終戦」しか読んでいないのでした(いやまて、瀬島龍三を扱った本も読んだような記憶がかすかにある)。このときは、ミッドウェイで一敗地にまみれたその時こそが、じつは日本にとって名誉ある和平を勝ち得る最後のチャンスだったのではないか、そのチャンスをもし、しっかりと掴むことが出来たら今の日本はどんな国になっていただろうか、を考えるような作品。この作品は保阪氏の作品群の中ではやや異色な物になるのかも知れない。あくまで氏の本領は、綿密かつ膨大な取材を通して、自らが選定したテーマの本質的な部分に迫っていく、様な物なのだろう。で、それらの膨大な取材が生んだ、膨大なインタビューイのなかで、文字通り「忘れ得ぬ」人々の印象を再録していくのが本書。
登場するのは昭和史最大の事件である太平洋戦争に直接関わった軍人、政治家、その周辺の人々、戦後民主主義の勃興の中に身を投じた人々、昭和史に名を残すことになった人物の、極めて近くにいた人物、などなど。その多くは、著者に鮮烈な印象を与えるのだから、それはもう一本筋の通った人々であるのは間違いなく、少なくとも昭和という時代に、様々なところ(それが他者に見られるところなのか、そうでないところなのかに関わらず)でそういう、「筋を通した」人々が集まっている。こういう本を読んでいると、平成の御代が終ったとき、果たしてこの本と同じヴォリュームを持った、「平成史 忘れ得ぬ証言者たち」という本が作られることはあるのだろうか、などと要らぬ心配までしてしまう勢いだ。間違いも多かった。それが元で大変な悲劇が国にふりかかることもになった。それでもその歴史に関わってきた当事者たちの多くは、少なくとも自分の責任範囲においては精一杯信義を通し、誠実であろうとした人物たちが多かったのだなあ、と。もちろんそうでなかった人達はこの本には登場しないわけだけれども。
そんな中、個人的にちょいと興味深かったことの一つは、陸軍の軍人と海軍の軍人の言い分。これは考え始めるととてもじゃないけど結論の出るような話ではないのだけれども、一般的に「悪」と言われる陸軍内部にだって、ちゃんと冷静な人物は居たわけだし、逆に何かにつけて「理知的」とか「スマート」と言われる海軍さんなんだけど、んでもやっぱりあの戦争を止めることをしなかった最大の責任者は海軍さんだったよなあ、ってあたりの再確認が個人的には出来たのでそこはなかなか。で、それ以上に興味深かったのが、近衛文麿の秘書であった細川護貞氏(日本新党の細川元総理の父上ですな)の発言。
これは数少ない私が読んだ保阪氏の著作の一つである「幻の終戦」にも関連することなのだけれど、私が件の本で感じた、「近衛にそういう大役を任せることは果たしてリアルなのだろうか」と言う疑問について、(タラレバ気味だが)一つの回答を与えてもらったような気がした、とはつまり、保阪さん的にはここで明かされた細川護貞の発言での問題点がもし、何らかの形で改善されていたとすれば、確かに「幻の終戦」の展開もあり得たことなのかも知れないな、と言うことだったりするのだった。あくまで聞きがたりの中の話でしかないのだけれど、細川護貞によれば、近衛内閣の総辞職とそれに続く東条英機の台頭、という極めて重要な時期、実は近衛はかなり重い症状の痔で、しばしば落ち着いた判断が出来ない状態にあったのだそうだ。ルーズベルトの小児麻痺、ヒトラーの梅毒(これは信憑性に乏しいという話もあるらしいけど)、ケネディの背中の痛み、などに匹敵する身体の悩みを、そのキャリアの中で最も重要な時期に、近衛も抱えていたのかも知れない、という事ですね。もしそれがどうにか改善されていたとしたら、もしかしたら日本の今は、ずいぶん違った物になってたのかも知れないなあ、なんてことをふと思ったわけでした。
余談ですが、この、国政のトップに立っている人々が、その持病で意外に判断力を鈍らされている可能性がある、という点については、ピエール・アコス&ピエール・レンシュニック著、「現代史を支配する病人たち」(ちくま文庫)という本がありますのでそちらも乞御参照。軽石庵にも一冊、在庫あります(殴/蹴)。
(★★★★)
また一つ大事なものが自室内次元断層に飲み込まれた模様、って困ったな。通常業務にはさほど影響はない(腕をいっぱいに伸ばした状態より遠い距離、なら眼鏡は不要なのだ。典型的な老眼だな)のだけれど、本もマンガも読めないし、振替用紙に必要事項を記入できないよ。
オレのことだから、何かの弾みに思いもよらんところにぽいっと放置して忘れてしまったんだろうけど、思いもよらんところを改めて思いつくのって大変なんだよなあ。困った困った。
メガネがなくて困る歳になったのねぇ、あっしも(つoT)。
Preview Rerease 1なんてものが出ていることに、今まで気づいてなかった。ちょっと試してみたんだが、驚くべき事にリストアイテムのインデントの考え方がmozilla準拠になっているように見える。つまり、リストアイテムの左マージンを0にしたときに、リストの要素はどこから始まるか。Outsetなら本文は親要素と同じマージンの値を取るのがIE、自前のインデントを加算するのがmozilla系列だったように思うのだけど、Opera9ではここ、mozillaとおんなじ考え方に切り替えたように見える(CSSで指定したmarginの値に、UIが本来持っているインデントの値が加わる)。うーむ。ここは数少ない、IEの考え方が正しかったんじゃないの? って思える部分だったんだけどなあ。これからはこちら(mozilla的インデントの取り方)が主流、って事になるのかしら。
リスト結構こそこそ使うんで、Operaがここの解釈を大きく変えてきてるのにはびっくりした。そのうち出てくるであろうIE7も、リストのインデントについては考えを改めているのであろうか。だったら面倒なことになりそうだなあ。ここはIEの考え方の方が理にかなってると思ってたんで、基本的にわたしゃIEの見栄えの方を重視してたんだけど。
ってまあ、marginとpaddingの指定の仕方については、いろいろ考慮しないといけないところはあるらしい、ってのも同時に漏れ聞こえてたところではあるんですが。
で、今後リストの見え方に関してはmozillaを基準とする、って方向性を採って大丈夫なんですかね?
出不精な君も僕も自宅でさくっと初詣。開運祈願 モナー神社。ちゃんと参拝も出来るし、絵馬も奉納できるしおみくじだって引ける。一通り回らせていただきました。絵馬を奉納して、おみくじ引いてみたよ。
ふーむ、商売:買うによし 利あり
つーことはだ、古本屋的には今年も買取貧乏でいけ、って事なのかい、とほほ。ん? 失物:思わぬところより現る
なんてのもあるな。これはあれか、行方不明の老眼鏡がどこからか現われるって事であろうか。それはちょっと期待しておきたい。
まあなんだ、運勢は中吉ながら、個別に見ると少々負け犬っぽい一年になりそうではあるな。しゅん。
「コードギアス 反逆のルルーシュ」。えーと、昨日の晩は本日出荷する本の荷造りで大夜更かしになってて、ビデオの予約入れるの忘れてBパートだけかろうじて見たんで、イマイチどういう話になってるのかが見えておりません。アシュフォード学園の生徒は基本的にブリタニアの人な訳だから、ルルーシュがなんかやらかせば割を食う保護者も出るかもね、つーのはまあ理解できましたが。んで2ちゃんじゃなにやらプチ祭りが発生しておるようですが、なんかありましたの? Aパートで。
こっちはワケ分からんのでスペース稼ぎにこんな物を。EUREKA SEVEN OP COLORS ver(YouYube)。違和感なさ過ぎで笑った。いくつかパターンがあるみたいだけど、無編集で曲だけ差し替えたヤツが一番良い感じだと思う。
□ もんちぃ [【小吉】願事:思わぬ障りありて叶い難し/待人:来ず/失物:物に隠れて出ず/旅立:急がぬ方がよい/商売:大なる損なし/..]
□ もんちぃ [今更エウレカのだらしない立ちポーズに驚くオレって。あ、終盤しか見てないや。]
□ TUX [●「ゲッターロボ!」が、どう頑張っても「マジンガーZ」のオープニング映像にマッチしないコトを考えると、昨今のロボット..]
□ もんちぃ [乱土さんの「中吉」が「中古」に見えたのはナイショだ。]
□ rover [中古の負け犬……(つoT)]
□ 寸゛ [今コードギアス観たらOPに違和感ありまくりでした。サビの「見上げた〜」の辺りなんかエウレカの方が合っててどうしようか..]
M・M・バックナー 著/冬川亘 訳
カバーイラスト 増田幹生
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011626-2 \760(税別)
ISBN978-4-15-011627-9 \760(税別)
地球環境の激変が引き起こした"クラッシュ2057"は、全地球規模の汚染と人口の激減、そして経済システムへの大打撃をもたらした。かろうじて生き延びた少数の人間たちの苦闘により、地球はかろうじて壊滅の危機を乗り越えたが、"クラッシュ"以降の地球はごく少数の資本家たちによって慎重にコントロールされる世界となり、そこではわずかな数の資本家たちと、彼らの経営する企業体に雇用される、"プロテ"と呼ばれる労働者階級が存在する世界となっていた。"プロテ"たちは明日をも知れぬ毎日を送る一方で、経営者たち裕福な人々の間には、一種のゲームが高い人気を獲得していた。"プロテ"たちによって引き起こされた労働争議が戦争状態となっている工場地帯に潜入し、自分たちの勇敢さをwebに見せびらかす"ウォー・サーフ"。大富豪、ナジールがリーダーを務める"苦悩組"は、この"ウォー・サーフ"でトップクラスの人気を誇るチームだった。だが今、初歩的とも言えるミスが続き、無様な失敗を繰り返す"苦悩組"の人気ランクは下がる一方。ナジールたちは、ランクアップのため、無謀とも言える"サーフ"に挑戦しようとするのだが…
いみじくも主人公、ナジールがこんなことを言ってくれる。
ひょっとして、諸君はもういまごろには、このメモワールをブラウズしながらきっと———いくどとなく———なんでこんなものを読み続けているのかとご自分に尋ねられたことがおありかもわからん。そして、諸君はおっしゃる。だいたい、この語り手がひどいやつで、なんの取柄もないみたいなやつじゃないか。狭量だし、自慢話ばっかりしてる妙なじいさんで、髪の毛は植毛で、心臓だってちっぽけなバイオ機械かなんかなんだぜ。
まったくもってその通りでございます(w。
200歳を過ぎてなお、金に飽かせて最新装備に身を固め、労働者たちが命がけで戦ってる戦場に潜り込んでテレビカメラにピースサイン向けるのが生き甲斐のじいさん、そんなじいさんが惚れ込んだ小娘は、何かの影響受けまくりで、ノリ一発で簡単に転向しちゃう、どこぞの新聞王の孫娘みたいなノリなわけで、そんなヤツらに感情移入なんてできるわけも無く、「なんだこいつら」と思いながら読んでいくことになるわけで、特に正直、上巻を読んでいくのはかなりしんどい。キャラがこれで、そんな連中が自分勝手をやり続けるのを読んでいくことになるわけだから。
更に文体が輪をかける。原文のニュアンスがそうなのか、訳者、冬川さんのさじ加減が読んでるこちらと上手く合わなかったのかはわからないんだけど、老人が主人公だからと言って「わし」で語るのはありなのか、「梃子でも」でいいだろってところをなぜにわざわざ「手古でも」と充てるのか、漢字で良いところをなぜにひらがな表記でやるのか(「ひっし」、ってやっぱり違和感あるよね)、とか、いろいろ気になるところがあるんだった。
そんなこんなで特に前半、ぶっちゃけ「面白くねえなあ」と思いながら読んでた本書なんだが、上下巻併せて700ページぐらいのこの本、残り100ページぐらいになったあたりから突然面白くなるから困ってしまう。それまでのいろんなうんざり感のかなりの部分を吹き飛ばし、それなりに「おおっ」と思わせてくれるラストまで用意してくれているサービスぶり。我慢して読んでいったものだけがありつける感慨、のようなものを味あわせてくれる造りになっていて、そこは少し感心した。いろいろ不出来と思える部分もあると思うんだけど、それでも最後まで読んでいく甲斐はあった、と思わせてくれた事には感謝したい。
SFとしてなにかとんがった部分があるか? と言われたらそれはちょっと、ってレベルだし、よく考えると「それはありなの?」と思ってしまう所も多々あるのだけれど、お話の作り方の巧さで、ある程度そう言う不満を薄めてもらい、終盤の展開の面白さで、「まあ面白かったか」と思わせてくれる不思議な本。万人にお勧めはできませんが、SFにも「物語」っぽさは必要だろうと思う方なら、もしかしたら面白いかも。
★★★☆
冷蔵庫が死んだ。それも冷凍室限定で。
こいつ、考えてみたら結婚した時に買った家電の最後の生き残りなんだよな。してみると四半世紀近くご奉公してくれたわけか。寿命と言って差し支えはないわいな。
冷蔵庫っていくらするんだ? うち、そんなにため込む方じゃないから、最新鋭のたっぷり詰め込めてしかもさまざまな便利機能満載、なんてなキカイはいらないぞ。3人家族なら5〜6万あたりのクラスで充分なのか。
問題は搬入路だな。廊下にSFマガジンと航空ファンが積み上がってるから、台所まで冷蔵庫を運び込むのが相当困難なような気がするなあ。
て事で今日は災い転じて何とやら、コンビニでおいしい氷を買ってきて、それで酒飲んでます。
しばらく放ったらかしにしてたんだけど、そういえば用意してなかったなあと思って、Opera用のユーザースタイルシートを設定してから。いろいろあちこちのサイトの見映えが変わってしまっておやおやと。なんだろうな、特定のサイトがあった時に、HTMLの各要素で背景色や文字色などが指定されているが、CSSで明示的に指定がないようなサイトの場合、Opera10(うちのは10.10、Build1893)はそれぞれのサイトが用意したスタイルシート、ユーザースタイルシート、それから各サイトの要素ごとの指定、と言う優先順位でレンダリングしてくれているような感じがする。なので比較的昔に記述されたHTMLファイルだと、コンテンツ作成者の意図がかなり無視され、いろんなところでOperaのユーザースタイルシートが優先的に適応されてしまっている傾向があるように見える。
基本的に大元のサイトで指定していないパラメータがあった時に、それに関する記述がユーザースタイルシートに記述されていたりすると、そっちが優先されるように見える。たとえばもとのサイトでリンクの文字列のhover属性が記述されていなかったりして、そこをユーザースタイルシートで記述してあったりすると、無条件にそちら(ユーザースタイルシートのhover属性の指定)を適応してくるように見えるわけだ。
継承って点から考えたら、継承されるべき元ネタがないから次善の要素を引っぱって来るというスタイルを取ってきている、と言うことになるのかもしれないけれど、それはそれで余計なことをやってもらっちゃってる感じはなくもない訳なんだが、こういうアプローチもありなんだろうか。なんかこう、余計なことをされてる感の方が強いんだが、どうなんだろうこういうの。
メールでちょっときつめのこと言うと、返信すらしてこない担当者ってのもそれはそれで新しいような気はするが。フィックスまでそんなに余裕も無いはずなんだが、そんなところで個人的都合でふてくされてて良いのかね。ま、そっちがそれで良いなら付き合いますけど、気がついたら仕事が出来上がってる、なんて事にはなりゃしませんよ(苦笑)。
ダン・シモンズ 著/酒井昭伸 訳
カバーイラスト 生頼範義
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011774-0 \980(税別)
ISBN978-4-15-011779-5 \980(税別)
ISBN978-4-15-011784-9 \980(税別)
数千年先の火星と太古の、しかも別の宇宙を繋ぐ事を可能にした超空間航行技術は、人を神に限りなく近い存在へと変貌させ、その神々の遊びの舞台として、別の地球で起きていたトロヤ戦争への介入を可能にした。だが、頻繁に行われる量子テレポートは自分たちの宇宙に徐々に修復しがたい瑕疵を刻みはじめていた。一方、トロヤ戦争の舞台では、この戦いを記録し、神々にその内容を伝えるために再構成された21世紀の歴史学者、ホッケンベリーの行動が、戦争の推移にホメロスらが記したものとは大きく違う展開をもたらそうとしていた…。
「イリアム」から間をおかずに語られる、神話世界と未来世界をSF的アイデアで繋ぎ、こねくり回し、猛烈な勢いでスケールアップして叩き付ける、シモンズ得意の、これはなんて呼んだらいいんだろう、ワイドスクリーン・ブロックバスター、とでも?
限りなく数を減らしてしまった未来の地球に暮らす人間達、多元宇宙との接続、現在ただいまの我々の姿とは大きく異なる存在になった、外惑星に棲む人類の子孫達、何によって産み出されたのかは判然としないが、その出自を偉大な英米文学にたどることの出来る異形の者たち…。次から次へと繰り出されるSF的、文学的なアイデアのつるべ打ちにくらくらしつつ読んでいくと、最後にはなんだか拍子抜けするような結末が待っている。盛り上げるだけ盛り上げて、最後に落ち着くところはそこかよと思いつつ、そこで最後に最大級のカタストロフをあえて持ってきたりしない辺りが、シモンズの腕って事なのかな。なんだかんだとあるけれど、人間ってのは生きるに足る存在なのだし、生きるためにやるべき事をすべてやりきった者たちだけに未来があるのだ、というある意味シンプルなテーマに、ものすごい量の衒学的趣味がまぶされた作品、と言えるかな。
そういう構成なので多分、英米文学に造詣の深い人ほど、この大長編は深い楽しみ方が出来るんではないかと思う。何か原典があったときに、自分みたいなヌルい本読みにはとっさに思い至らない深い背景の部分にまで思いをいたす楽しみ方が出来るような気がする。もちろんそこら辺が良く判らなくても、充分に楽しめる波乱万丈の展開になっているし、訳者の酒井さんの解説も、毎巻かなり助けになってくれるので安心なんだけど。なんというか、エンタティンメント作品でありながら同時に、見る側の教養のレベルにも挑戦してくる作品と言えるわけで、そこの所の油断のならなさなんかもこの作品の魅力なんだろうと思う。
同時に感じるのは、この造りってのは、アメリカにおける「神話」のシモンズなりの一つの回答なのかな、というところだろうか。ファンタジーに常に一定の需要があるアメリカという国、それは国が出来て200年ちょいしかないあの国の国民が、潜在的に自分の国のための神話を欲しているのじゃないか、それ故にどうしようもないファンタジーも乱造されているんじゃないか、米国産ファンタジーにあまりのめり込まない方が良いんじゃないかい? みたいな文章をすこし前に何かで読んだ(誰が書いたのかも憶えてないんですけど)憶えがあって、それ以降(主にハヤカワFTレーベルの)ファンタジーは敬遠する傾向があった自分なんだけど、SFサイドからいきなり、米国人にとって神話ってのはこういうもんだべ、っていう提案がなされたような気分を味あわされた。神話があって、それを元に様々な文豪達がそれを拡張してきた流れとは別のところで、かつての文豪達が拡張してきた物語世界の元になる部分にSF的な味付けを加え、神話自体を再構成して見せた、という…。
そういう意味においてこれはまことに正しいSFって感じ。お話の展開上、重要度が下がったパートへの扱いが少々雑になってしまうところとか、現在、過去、未来を眺めていく上で(読者的に)現在パートへのくすぐりの部分がいまいち上手くないな、と思ってしまうところもなくはないんだが、それでもこの読み応えはただ事ではない。年末年始のお休み期間に一気に読む価値充分の一作だと思う。刺身包丁的なエッジの切れ味ってところの鋭さはそれほどでもないけど、中華包丁的重量感に満ちあふれた一作、って感じだな
★★★★
元旦に観たの忘れてた。「WORKING'!!」と「機動戦士ガンダムAGE」。「WORKING'!!」は最終回。まあこういうお話なので、ラストに向けた盛り上がりとかがあるようなわけもなく。それなりに心地いいシリーズなので、またやるんならそれはそれで楽しみにしたいとは思う。ネタ的にはまだ結構ありますよね。
「AGE」は一応友軍である連邦側の封鎖をどうやって突破するのか、って話なんだけど、これって突然UEがやってこなかったら、クルーデックさんは完全に詰んでたよね。それともクルーデックさん的にはあのタイミングでUEが襲ってくるって事が分ってたのかしら? そこまで線を伏せてたのだったらそれはそれである意味スゴいけど、そう言うもんでもないんだろうな、って気はする。行き当たりばったり感、は相変わらず抜けていないね。
「黒子のバスケ」、「獣電戦隊キョウリュウジャー」、「仮面ライダー鎧武」、「ドキドキ! プリキュア」、「マギ」、あと今年の大河、「軍師 官兵衛」も見てみた。土曜深夜には劇場版「タイバニ」もあってそちらも録ってはいるんだけど、それはまた別の機会に、ってことで。「黒子…」は相変わらずの安定銘柄で、王道っぷりが楽しいやね。火神のアメリカでの特訓シーンとかに尺を割くのかと思ったんだけどそういうものでも無く、いきなり試合始まっちゃいました。途中に挟む感じなんでしょうかね。
日曜朝。ラスタチに向けていろいろネタが振られてた「キョウリュウジャー」。ダイナブラックに続いてダイナピンクも登場、という。なっつかしいなあ、「科学戦隊ダイナマン」は、しばらく見てなかった戦隊モノを久しぶりに見直す事になったシリーズだったりするんで、いろいろ思うところがあったりもしましたわ。トリイの中の人も顔出しで出演してたり、見どころようさんあった回でした。
「鎧武」はややマイルドながらも虚淵風味が出てきたか。ミッチの冷徹っぷりとコウタの煮えきれなさとそれを飲み込んだ上での覚悟とか、ちょっとこれまでの「ライダー」にはなかった味みたいなモノがあって、そこはなかなかよかったと思う。けどその分、ちょっと小さいお友達置いて行きにかかってたりする? とも思ったりはするけど。
「プリキュア」もラスト近く。ここに来てお話がちゃんと出来てる、と思えてきてしまったあたりでちょっとした負け感も(^^;。ここのところメジャーとマイナー、ハッピーエンドとバッドエンドみたいな、かなり「雑じゃね?」と思える二元論みたいなモノをベースにしていた作品群とはちょっと違う、「ジコチュー」がもたらすモノってどうなんだ、ってところに割に深めに突っ込んできたあたりは「ほう」と思ったです。
久しぶりにNHKの大河も。うん、大河ドラマはこのあたりをネタにするのが一番無難だな、と思った。多分大河に要求されるのって上等な「水戸黄門」だと思うんだよね。そこを上手いこと押さえてくれているような気はする。今年は続けて見てみようかな、って気もちょっとした。
って言うか官兵衛の少年時代、万吉役を演じてる若山耀人くんが素晴らしすぎるだろ。リューノスケ以来、久しぶりにゾクッとしたぞ(w。「仮面ライダーウィザード」でビーストの少年時代を演じた子役さんだそうだけど、そっちではあんまり感じなかったんだけどこちらではとにかく目がキレイで、もっとこの子を見たいと思ったのに、一回目のラストでは元服しちゃって岡田准一さんに交代なのね。ファンの人ごめんなさい、でもがっかりだ(つoT)。
「天と地と」とかだと石坂浩二さんが出てくるまでに結構時間があったような気がすんだけど、最近はそこに時間かけられないのかも知れないね。そこは残念だな。
つってもまあ特に誰かに挨拶するとか、そういう儀式とかは必要ないんで、ただ単に仕事に入るだけという。今年もぼちぼち行きましょう。
古本屋の方はすでに発送業務とかは動いてるんだけど、折角だから仕事始め的なこともやってみるかってことで近所のブックオフまでせどり旅。あまりめぼしい物はなかったけど、それとは別に自分用に、「SAO」の続きを二冊ばかり。アニメ1期の後半クールだった「フェアリィ・ダンス」編。アニメは意外に原作を忠実に追っかけてるんですね。2期の「キャリバー」編の冒頭の説明にあった、トンキー絡みの話がオミットされてたぐらいか。良く劇場版の映画1本の原作には短編小説1本分ぐらいのヴォリュームがちょうど良い、なんて話を聞きますけど、アニメ1クールの原作にはライトノベル2冊分ぐらいが適切な分量、つーことなんでしょうかね。
ウィリアム・ゴールディング 著/小川和夫 訳
カバーデザイン 早川書房デザイン室
ハヤカワepi文庫
ISBN978-4-15-120092-2 \920(税別)
自然を畏れ、野生の動物たちを敬いつつ野に暮らす、マルを首長とする小さな部族。そんな彼らはある日、自分たちとは少し形態の異なる人々と遭遇した。「新しい人間たち」と彼らが呼ぶことになったその種族は、マルの部族にとって大きな災厄をもたらすことになるのだった…。
ウィリアム・ゴールディングの「蠅の王」に続く長編第2作。帯やカバーの文言を良く読まない状態でカバーをかけてもらったので、あまり内容に先入観を持たずに読むことができたのは良かったのだが、せめてこの本の巻頭に引用されているH・G・ウェルズの文章がなぜそこにあるのかは、ちょっと気にしておくべきだった。そういう気構えもなく読み始めた自分は、これは一種のアフター・ホロコーストもののSFなのかな(だってハヤカワから出てるんだもの)などと思いながら読み進めていくのだが、いくら読み進んでいってもお話にはいっかなSFの匂いがしてこない。
これはどうしたことかと思ってカバー裏の惹句を読んで「ああ、そういうことだったか」と気付いた時にはもう遅い。これはそういう、何か読者を楽しませようとするタイプの「物語」などではなく、作者の「思想」を形にしているものなのだ、と言うことは判ったけれど、判った時にはもう遅い。ひいひい云いながら半分以上読み進んでしまっていたし、今から最初に戻って読み返したところでおそらく何かが変わるというものでもないだろう。だってここに書かれているのは作者の思想の裏打ちのためのディティールであって、お話としての起伏のようなものは特に意識はされていない訳だから。
そんな訳で残りもひいひい云いながら読み終わってみれば、そして訳者の解説を読んでみてようやく腑に落ちたのは、つまりこれはビーム・パイパーの「夜明けの惑星」とか星野之宣の「暁の狩人」とかの対角線上にある話なんだな、ということ。あれですよ、戦争映画では常に戦力は強大だが頭は悪いドイツ軍、ってそれほんとか? ってことですね(なんちゅう例えや)。もっと言うなら今生きてる我々は、揃いも揃って「ソルジャー・ブルー」(キャンディス・バーゲンの映画の方な)なんやで、という現代文明への異議申し立てになっているのだと思う。
とうはいえそういう、思想的な部分の鋭い部分というのは読み終わって、解説を読んで始めてああそういう事だったか、とすとんと落ちるものであって、正直読んでる間は相当しんどい代物ですね。ただひたすら淡々と、マルの部族の一人であるロクという若者の主観で細部にわたり、詳細ではあるが今ひとつ解像度が荒い描写(もちろんそこにも理由はある訳だけど)が続くので、目が滑ること甚だしい。餃子つまみながら、熱燗舐めながら読むような本ではないですね。もっと若いうちに読んでおくべき本でしたわ。年取るとほら、ちょっと判らんことに遭遇すると、「ああ、そういう見方もあるよね」って自分をごまかしちゃうじゃないですか(苦笑)。
★★★
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□ もんちぃ [急げ、踏む前に見つけるんだっ!]
□ 寸゛ [頭の上‥‥いえ、何でも。]
□ rover [上と下… どちらも脆いものよな(違)。]