カテゴリ一覧
Anime | AV | Baseball | Books | CGI | Chinema | Comics | CS | Day | DVD | Event | F1 | Games | Hobby | HTML | Kindle | Misc | mixi | News | Oldbooks | PC | Photo | SpFX | Stage | tDiary | Tour | TV | web | 逸級介護士
保阪正康 著
カバーデザイン 山岸義明
講談社文庫
ISBN4-06-274942-4 \895(税別)
(『一期一会』改題)
昭和史に関する著作で知られる著者が、その作品の執筆にあたって30数年間に渡り聞き取り取材を行った、延べ4000人に上る有名、無名の人々。その中から、著者の心に今も強い印象を残す人物、昭和史を語る上で決して忘れてはならない人々との出会い、その人となり、そして忘れられぬ言葉をまとめた一冊。
今年から文庫になってタイトルが変わった本は、それも表記するようにします。さて。
保阪正康さんの著作は、恥ずかしながら「幻の終戦」しか読んでいないのでした(いやまて、瀬島龍三を扱った本も読んだような記憶がかすかにある)。このときは、ミッドウェイで一敗地にまみれたその時こそが、じつは日本にとって名誉ある和平を勝ち得る最後のチャンスだったのではないか、そのチャンスをもし、しっかりと掴むことが出来たら今の日本はどんな国になっていただろうか、を考えるような作品。この作品は保阪氏の作品群の中ではやや異色な物になるのかも知れない。あくまで氏の本領は、綿密かつ膨大な取材を通して、自らが選定したテーマの本質的な部分に迫っていく、様な物なのだろう。で、それらの膨大な取材が生んだ、膨大なインタビューイのなかで、文字通り「忘れ得ぬ」人々の印象を再録していくのが本書。
登場するのは昭和史最大の事件である太平洋戦争に直接関わった軍人、政治家、その周辺の人々、戦後民主主義の勃興の中に身を投じた人々、昭和史に名を残すことになった人物の、極めて近くにいた人物、などなど。その多くは、著者に鮮烈な印象を与えるのだから、それはもう一本筋の通った人々であるのは間違いなく、少なくとも昭和という時代に、様々なところ(それが他者に見られるところなのか、そうでないところなのかに関わらず)でそういう、「筋を通した」人々が集まっている。こういう本を読んでいると、平成の御代が終ったとき、果たしてこの本と同じヴォリュームを持った、「平成史 忘れ得ぬ証言者たち」という本が作られることはあるのだろうか、などと要らぬ心配までしてしまう勢いだ。間違いも多かった。それが元で大変な悲劇が国にふりかかることもになった。それでもその歴史に関わってきた当事者たちの多くは、少なくとも自分の責任範囲においては精一杯信義を通し、誠実であろうとした人物たちが多かったのだなあ、と。もちろんそうでなかった人達はこの本には登場しないわけだけれども。
そんな中、個人的にちょいと興味深かったことの一つは、陸軍の軍人と海軍の軍人の言い分。これは考え始めるととてもじゃないけど結論の出るような話ではないのだけれども、一般的に「悪」と言われる陸軍内部にだって、ちゃんと冷静な人物は居たわけだし、逆に何かにつけて「理知的」とか「スマート」と言われる海軍さんなんだけど、んでもやっぱりあの戦争を止めることをしなかった最大の責任者は海軍さんだったよなあ、ってあたりの再確認が個人的には出来たのでそこはなかなか。で、それ以上に興味深かったのが、近衛文麿の秘書であった細川護貞氏(日本新党の細川元総理の父上ですな)の発言。
これは数少ない私が読んだ保阪氏の著作の一つである「幻の終戦」にも関連することなのだけれど、私が件の本で感じた、「近衛にそういう大役を任せることは果たしてリアルなのだろうか」と言う疑問について、(タラレバ気味だが)一つの回答を与えてもらったような気がした、とはつまり、保阪さん的にはここで明かされた細川護貞の発言での問題点がもし、何らかの形で改善されていたとすれば、確かに「幻の終戦」の展開もあり得たことなのかも知れないな、と言うことだったりするのだった。あくまで聞きがたりの中の話でしかないのだけれど、細川護貞によれば、近衛内閣の総辞職とそれに続く東条英機の台頭、という極めて重要な時期、実は近衛はかなり重い症状の痔で、しばしば落ち着いた判断が出来ない状態にあったのだそうだ。ルーズベルトの小児麻痺、ヒトラーの梅毒(これは信憑性に乏しいという話もあるらしいけど)、ケネディの背中の痛み、などに匹敵する身体の悩みを、そのキャリアの中で最も重要な時期に、近衛も抱えていたのかも知れない、という事ですね。もしそれがどうにか改善されていたとしたら、もしかしたら日本の今は、ずいぶん違った物になってたのかも知れないなあ、なんてことをふと思ったわけでした。
余談ですが、この、国政のトップに立っている人々が、その持病で意外に判断力を鈍らされている可能性がある、という点については、ピエール・アコス&ピエール・レンシュニック著、「現代史を支配する病人たち」(ちくま文庫)という本がありますのでそちらも乞御参照。軽石庵にも一冊、在庫あります(殴/蹴)。
(★★★★)
前 | 2005年 1月 |
次 | ||||
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
30 | 31 |