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ウィリアム・ゴールディング 著/小川和夫 訳
カバーデザイン 早川書房デザイン室
ハヤカワepi文庫
ISBN978-4-15-120092-2 \920(税別)
自然を畏れ、野生の動物たちを敬いつつ野に暮らす、マルを首長とする小さな部族。そんな彼らはある日、自分たちとは少し形態の異なる人々と遭遇した。「新しい人間たち」と彼らが呼ぶことになったその種族は、マルの部族にとって大きな災厄をもたらすことになるのだった…。
ウィリアム・ゴールディングの「蠅の王」に続く長編第2作。帯やカバーの文言を良く読まない状態でカバーをかけてもらったので、あまり内容に先入観を持たずに読むことができたのは良かったのだが、せめてこの本の巻頭に引用されているH・G・ウェルズの文章がなぜそこにあるのかは、ちょっと気にしておくべきだった。そういう気構えもなく読み始めた自分は、これは一種のアフター・ホロコーストもののSFなのかな(だってハヤカワから出てるんだもの)などと思いながら読み進めていくのだが、いくら読み進んでいってもお話にはいっかなSFの匂いがしてこない。
これはどうしたことかと思ってカバー裏の惹句を読んで「ああ、そういうことだったか」と気付いた時にはもう遅い。これはそういう、何か読者を楽しませようとするタイプの「物語」などではなく、作者の「思想」を形にしているものなのだ、と言うことは判ったけれど、判った時にはもう遅い。ひいひい云いながら半分以上読み進んでしまっていたし、今から最初に戻って読み返したところでおそらく何かが変わるというものでもないだろう。だってここに書かれているのは作者の思想の裏打ちのためのディティールであって、お話としての起伏のようなものは特に意識はされていない訳だから。
そんな訳で残りもひいひい云いながら読み終わってみれば、そして訳者の解説を読んでみてようやく腑に落ちたのは、つまりこれはビーム・パイパーの「夜明けの惑星」とか星野之宣の「暁の狩人」とかの対角線上にある話なんだな、ということ。あれですよ、戦争映画では常に戦力は強大だが頭は悪いドイツ軍、ってそれほんとか? ってことですね(なんちゅう例えや)。もっと言うなら今生きてる我々は、揃いも揃って「ソルジャー・ブルー」(キャンディス・バーゲンの映画の方な)なんやで、という現代文明への異議申し立てになっているのだと思う。
とうはいえそういう、思想的な部分の鋭い部分というのは読み終わって、解説を読んで始めてああそういう事だったか、とすとんと落ちるものであって、正直読んでる間は相当しんどい代物ですね。ただひたすら淡々と、マルの部族の一人であるロクという若者の主観で細部にわたり、詳細ではあるが今ひとつ解像度が荒い描写(もちろんそこにも理由はある訳だけど)が続くので、目が滑ること甚だしい。餃子つまみながら、熱燗舐めながら読むような本ではないですね。もっと若いうちに読んでおくべき本でしたわ。年取るとほら、ちょっと判らんことに遭遇すると、「ああ、そういう見方もあるよね」って自分をごまかしちゃうじゃないですか(苦笑)。
★★★
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