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ジョン・コートニー・グリムウッド 著/嶋田洋一 訳
カバーイラスト 目黒詔子
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-011616-3 \940(税別)
暗殺される前に法王庁の資産をすべて持ち出し、難民救済のためにその財をつぎ込んでいたことが発覚した法王ヨハンナ。彼女の生体データと記憶は、一人の神父によってメキシコの売春宿から引き取られた日系少女に移されようとしていた。事態を収拾したい法王庁は、一人の落ちぶれた殺し屋に、事件の鍵を握ると思われる神父らの確保を依頼するのだが…。
かつて"ウォー・チャイルド"の異名で世界に知られた殺し屋、アクスルが目指すのは月よりも彼方に存在する中空のリング型小惑星"サムサーラ"。ダライ・ラマによって見いだされたそこは、地球全土からの一方通行の難民収容施設して機能している場所だった…。
著作のきっかけとなったのが、ボスニア・ヘルツェゴヴィナでの国連を中心としたPKOの無為無策が引き起こした悲劇であったと言うことで、確かに国際社会における難民対策の難しさと、そこから引き起こされるさまざまな悲劇的エピソードっぽいシークエンスもそれなりに挟み込まれているし、ダライ・ラマのネタから引き出される、現在ただいまのチベット問題に対するかなり乱暴な解のひとつが忍び込んでいるような気もしないでもない。ただ、お話そのもののスタイルは、マシュー・スウェインものやヴーダイーンものに通じるSFハードボイルド・アクション。ノリとしてはあれだよ、いかにも今風の英国SFぽい、ガジェットとスペックの怒濤の羅列と、極めて短くカット割りされた、映画的な構成で押しまくる作品、と言えるか。
ただ、押しまくってる割にその押しっぷりが上手くなく、いろいろ勢いが良いにもかかわらずその勢いに乗り切れないまま話が続き、そのエンディングには「ハァ?」とかなり首を捻ってしまう。ハードボイルドなお話の結末のパターンのひとつとして、死力を尽くしてミッションを完遂したかに思えた主人公だったが、それも実はさらに大きな勢力の手の上で踊らされていたに過ぎなかったことが分かり、ほろ苦い思いばかりが残る…、みたいなのは確かにあると思うんだが、本書ではそのほろ苦さのもとになる部分が良くわからないのだな。というか、ぶっちゃけどう落ちたんだ、この話は、と(^^;)。
AI搭載の手榴弾が、使う側が「1秒で爆発」ってコマンド入れてるのに「2秒の方が良いんじゃね?」なんて口答えしてみたり、小ネタ的に面白いところもたくさんあるし、同じくAIを搭載したカスタムメイドのハンドガンがお話の中で重要なポジションにあって、ここのところの表現がなかなかユニークだったりもするんだけれど、全体としては少々とっ散らかった感が前に出すぎた一作と言えるかな。イマイチ。
それにしても…
側頭部にはもうひとつ、こちらは結晶ポリマーで、四角い窓が作られた。やはり乱暴な手際で埋め込まれたものだ。枢機卿の執事がブラウンの髭剃りでその部分の髪を剃り、あとには結晶ポリマーの縁に沿ってかさぶたが残された。まるで安っぽいテツオだ。
説明抜きのこの表現で海外の読者も理解できる、ってのは凄い時代になったもんだよなあ(しみじみ)。
★★☆
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