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アン・マキャフリイ 著/小尾芙佐 訳
カバーイラスト 木嶋俊
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011618-7 \1000(税別)
不世出の作曲師と呼ばれるペティロン、彼が創り出すいかなる困難な楽曲も歌いこなす歌唱師メレラン。パーンでも最高の音楽家夫婦が授かった一人の息子。母方の祖父にあやかってロビントンと名付けられたその子供は、父と母の才能を余さず受け継ぎ、更に健やかでのびやかな精神を持った少年に育っていた。才能には申し分はないが、音楽以外の物事に上手く接することの出来ない父親によって、彼の成長が歪んでしまうことを恐れたメレランや周囲の人々によって注意深くその才能を伸ばしていくロビントンだったが、そのことが逆に、父と子の間に超えがたい溝を作っていく。時は折しも「糸砲」の襲来が、いよいよ一世紀以内に起こるであろうと言う時期。だが数百年の安寧は、パーンの人々から「糸砲」への備えの気持ちを取り去ってしまっていた…
「パーンの竜騎士」第10作。え、10? 「歌」とか「太鼓」とかも正史扱いだったんだっけ? まあいいや、とりあえず今回のお話もどちらかと言えば外伝テイスト。大巌洞メインではなく、城砦の人々をメインに据えた話で、渋い爺さまとして存在感を発揮してくれた竪琴師ノ工舎ノ長、ロビントン師の生い立ちから働き盛りの青年期までの足取りを辿っていく。「解説」で久美沙織氏は「パーン初心者でも大丈夫」、なんて書いておられるけどそれは社交辞令。これまでのパーンのお話を押さえてなければ、本書の楽しみは少なくとも4割は減る。
お話自体の完成度は、それはさすがにマキャフリイ、しっかりしたものではあるし、多彩な登場人物についても必要最低限な説明があるから、読んでて何がなんだか分からない、なんて事にはならない。ならないけどそれじゃあ本書をたっぷり楽しんだことにもならないと思う。
本書のキモは、本格的にパーンに「糸降り」の災厄が訪れる前の、やがて活躍することになるさまざまな人々が、ロビントンの成長に連れて少しづつ舞台の上に上がってくる、そこの所の著者のさじ加減の巧さを、ニヤリとしつつ楽しむ所にあるわけで、主要キャラのネーミング法則が何となく見えてきたり、脇役陣のみなさまや最近作で姿を現した、人間たちの新たな伴侶のエピソード、なんてのをちょっとでも思い出せない人だと、この比較的分厚い本は、相当退屈な部類の本に入ってしまうのじゃないだろうか。なにせ基本はハーレクインSF、作者に愛されたキャラは最強無敵、そうじゃないキャラは冷遇放置ってのは確定してしまってるわけで、そのうえ本作みたいにSF色が欠片もないパターンだと、お話の本線以外に楽しむところが見いだせないと、ホントにしんどいんじゃなかろうかとお節介にも思ってしまうわけなんだった。
と、いうわけでこいつは「パーンの竜騎士」シリーズをちゃんと押さえている人に向けて用意された、かなり豪華なプレゼントなのだと思う。ここまで本シリーズを一作も読んでいないって人は、せめてシリーズ開幕編、「竜の戦士」(銀背だと『ドラゴンの戦士』ですな)だけでも読んでおいた方が良いと思いますですよ。
★★★
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