ばむばんか惰隠洞

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2009-01-07 [長年日記]

[Books] くらやみの速さはどれくらい (24:53)

くらやみの速さはどれくらい(Moon,Elizabeth/著 小尾芙佐/翻訳 ムーンエリザベス/著) エリザベス・ムーン 著/小尾芙佐 訳
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
COVER PHOTO ©BLOOMimage/Getty Images
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011693-4 \1000(税別)

"普通の人"とコミュニケートするのは骨が折れる。それでも私も、私の仲間たちも何とか折り合いを付け、職場にも馴染み、与えられた以後ともこなしている。私たちは少し"普通"ではない。いわゆる自閉症と呼ばれる症例を持つ人々のほぼ最後の世代。医療の進歩によって幼少期の完全治療が可能になる少し前に生まれた世代が私たちなのだ。そして私たちもまた、普通の人々と同じ環境で、それなりの苦労は感じつつも共に暮らすことができる程度には医療の恩恵にあずかっている世代でもある。そんな私たちの、落ち着いた毎日に今、少しばかりの波乱が舞い込んできた…。

自閉症の人たちに対しての治療法が確立し、主人公であるルウたち30代の人より若い世代に自閉症の患者がいなくなった近未来。さらにそれ以前の世代に対しても不完全ながら治療法ができたために、ある程度若い世代の自閉症の患者であれば、それまでとは比較にならないぐらい行動の自由が保障されている。また、そういった部分的に自閉症の症状が残っている人たちには、その、"内に向かおうとする"力のようなものが常人を超えた集中力やパターン認識力を産み出すことから、企業などでも積極的に自閉症患者をプロジェクト要員として組み込もうとする流れが出来上がった時代に、さらに、その残りの自閉症患者たちも完全に治療が可能になると思われる技術が開発されたらしい、という情報がルウたちの生活に波紋を拡げていく、というようなお話。

最初にダメなところ。お話を先に進めるための原動力になる部分が非常に弱い。ルウたち中途半端に治癒された自閉症患者たちが常人を超える能力を発揮するためには、一般の労働者にとってはやや贅沢と思える環境が必要になるのだが、そこにガチガチのコスト主義に凝り固まったやり手の上司がやってきて、ルウたちに保証されたコストをカットしたいがために、やや強引に彼らの自閉症を治すプログラムを受けさせようとするわけなんだけれども、そこの所の損得勘定がどうもはっきり見えてこない。最初に出てきたのがそういうバカ・ビジネスマンであったとしても、その背後に実は今の世の中に中途半端な自閉症患者がいてもらっては困る、と考える勢力がある、なんて話かと思ったんだけどそういうわけでもなく、極めて無能な悪党が一人いて、そいつがマヌケな立ち振る舞いをして、ルウたちを非常な窮地に陥れることもなく勝手に退場してしまう、という流れはちょっとがっかりだ。一番の悪党にしてこれで、本書の登場人物たちというのは基本的に一層のキャラクタしか持っていない人々ばかり、という印象がある。最初に見える性格の下に潜む別な一面、みたいなものが全くお話に絡んでこない(もともと用意されてないから仕方ないんだけど)ので、「お話」としては非常に薄っぺらい。そこはとてももったいない。

だが、そのダメなところを八割方帳消しにしてもいいかな、と思えるだけの魅力が同時に本書には備わっていて、こいつをダメな話だがダメな本とは言いきれないものにしてくれているのも確かだと思う。その魅力的な部分というのはつまり、我々が普通だと思っていた様々な物事が、少し違った視点を持った存在によって改めて解体され、分析され、意味づけされていく過程を極めて緻密に追いかけていくことに対して得られる知的好奇心の充足感、みたいなものって事になるだろうか。自分が今見ている物事、体験している事というのが、他者にとっておなじ意味を持つのか、異なるとしたらそれはなぜなのか、ってあたりを小さなエピソードでさりげなく積み重ねて行く、本来メインのスジに追随する立場にあるパートが素晴らしく濃密で、読み応えがある。

著者のエリザベス・ムーンは本書の執筆にあたって大変多くの自閉症の患者とその家族に取材を行い、さらに彼女自身自閉症のご子息を持つということで、おそらく自閉症を持つ人々に対する共感のようなものは、並々ならぬものがあったのだろうと思う。そこで得た様々な情報は、やろうと思えばいくらでも強いメッセージ性を持たせることも可能だったと思うのだがそこであえて、"自閉症の人物から見えてくる世界"という表現的な縛りをかけ、抑制の効いた文体を通した本書の執筆方針には強い共感を覚える。「物語」を追う楽しさよりも「文体」の深さをしみじみと味わう事に何か大きな読書体験が潜んでいた、ような本と言えるだろうか。それがゆえにラストに、微妙に抑制が効き損ねてしまったのではないか。最後の最後で「叙述」者としてのウエートに(自閉症のご子息を持つ)「母親」としてのそれが勝ってしまうような展開が来てしまったのかな、と、そういう方面には絶望的なくらい疎い自分なんかは思ってしまうのだった。で、それを一方的に悪しく言うことはできないよな、と感じる程度にはまだ、私にも良識はあるつもりです(w。

「物語」を追うと損をする、ただその都度の「状況」をじっくり考えてみるといろいろ深いものを感じる、そんな本。

★★★★

[PC][web] 意外にポピュラーだったんだ (25:18)

アレゲなニュースサイトから、「よく使われる危険なパスワードTop500」にご注意を。ここで紹介されてるGIGAGINEが引いているリスト見てたらオレ、139位と218位にランクインしてるパスワード、実際に使ってた時期があったわ。うん、NCC1701とTHX1138(w。THXのほうは一応、4ebまで付けてはいましたけどもさ。

自分じゃマイナーだろうと思ってたんだけど案外メジャーな文字列だったのね。危ない危ない。

基本的にパスワードって、自分には簡単に思い出せるけど他人にはそうでもなくてそこそこ長い文字列、ってのが理想的なんだろうけど実際問題どういう風に考えたら良いんだろう。ちょっと考えてみて意外に有望なんじゃないかと思えるのはこんなのだけど…。

Me109G6Hs293Fw190A5

あいだに一個マイナーなのを挟むんだけど、これなら鉤十字スキーな人なら意外に忘れないような気もするし、大文字小文字も混じるし結構イケるんじゃないかって気がするんだけどな。ナムフな人なら

A6M5eN1K4j

なんてのも結構有効なんじゃないかしらね。オレは採用しないけどさ(w。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
P2 (2009-01-08 19:33)

>NCC1701とTHX1138<br>うん使った使った(笑)<br>しかも未だにアニメロボ系型式番号とかー

rover (2009-01-09 00:26)

人が考えつくものなんて、案外底が浅いものなんでしょうなあ。「靖国神社の予約番号」をパスワードにしてる人とかも、結構いるんだろうな(w


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