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E・C・タブ(東京創元社)。またの名をグレゴリイ・カーン(『キャプテン・ケネディ』シリーズの作者。シリーズ第二弾、『サーガンの奴隷船』の訳者あとがきで、カーンの正体の候補にタブの名前も挙がっていた)。日本ではやはり「デュマレスト・サーガ」で有名か。少々地味目で毎回のお話がややワンパターン気味な恨みは無しとしないが、手堅くまとまった、悪くないシリーズであった。
主人公のデュマレストは、自分が生まれた惑星が地球であることを知っていて、故郷に戻ろうとしているんだが、すでに地球は伝説の星になっていて、デュマレストが行く先々で、「土(Earth)? 自分が暮らす惑星にそんなバカな名前つけるやつぁいねえよ」、と言われてしまう、というお約束やりとりがちょっと楽しかった。
創元さん、確か向こうでは完結編(32巻だったかな)が出てるはずですよね? 追悼に感謝の意味も込めて、訳出しちゃくれませんかね。
とまれ若造のころ、楽しく読ませて頂きました。感謝を込めて、合掌。
ニコ動で「大魔神カノン」(#15、16)。渡辺いっけいはカノンちゃんのお父さん役なのね。いわゆる2クール目に入ってそこそこ面白くなったんじゃないかって気がする。相変わらずこれに「大魔神」の名前を冠するのはどーなんだ、とは思ってしまうけど。
ロバート・B・パーカー 著/加賀山卓朗 訳
カバーデザイン 戸倉巌(トサカデザイン)
ハヤカワ文庫HM
ISBN978-4-15-178653-2 \880(税別)
依頼人はとびきりの美女だった。そしてスペンサーにとってはそれなりに因縁浅からぬ女性でもあった。エイプリル・カイル。かつて少女売春の世界に身をやつしていた彼女を一度は救い出し、だが彼女自身の特殊に形成されてしまった人格は、彼女が救い出された、その環境でしか彼女自身が存在価値を見いだせないまま。それ故スペンサーは、エイプリルをそれなりに信用のおけるニューヨークの高級娼館のマダムに預けたのだった。それから20年、高級娼婦としてそれなりの成功を収めたエイプリルだったのだが、またもやトラブルに見舞われているらしい…。
「儀式」、「海馬を馴らす」に続くエイプリル・カイル登場エピソード。同じく複数回登場のゲストキャラ、ポールは登場時には自閉症だったものが、スペンサーのきめ細かいケアによって徐々に一人前の男になっていくのに対し、こちらのエイプリルは、彼女の娼婦願望といったものをついにスペンサーは矯正できず、あくまで次善の策として、彼女を高級娼婦の世界に送り込んで「しょうがないよね」で諦めてしまう。ある意味そのツケが回ってくるのが本書というわけで、そういう意味ではいつもの「スペンサー」に比べたら苦い部分が多く、ちょっと新鮮な印象はある。
普通スペンサーは、自分が出会った人物を彼なりの善悪の基準で判別して、それぞれに対してそれなりにふさわしい結論を出し、その結論に沿った行動を起こすのだが、エイプリルに対しては善人判定をしているにもかかわらず、対象の人物が「善」の環境で生きられない状態にあるが故に、「まだしもましな悪」、の環境にキャラクタを放り込み、それで終りにしてしまう。ぶっちゃけ他人だもの。他にどうしようがあるって言うの。
そこで忘れてしまえば良いものを、やはりパーカー自身にもいくばくかの気がかりが残ってしまうものなのか、それなりに気になる旧知の人物が今どうしているのかを考えてみて、改めてその人物に思いをいたしたらこうなっちゃった、ってのが本書で、言ってしまえば「やっちまった」一作、といえるのかも知れない。
なにせスペンサーの側には精神的に完璧な女性として形成されたスーザンがいる以上、エイプリルの存在は常に上からの目線で分析されてしまうわけで、それをはね返してエイプリルに大きな転機を与えることができないままお話が終わってしまう、ってのはパーカーの限界なのかも知れないし、彼なりの誠実さの表れなのかも知れない。いずれにしても「スペンサー」世界の一種の徒花的存在に、それなりの結論が言い渡されるお話で、その結論は残念ながらかなり苦い。
個人的にはその苦さ、いつものスペンサー軍団勢揃いでどんな難題(実はそれほどの難題でもない)もさくさく解決、ってな最近のスペンサーとは一線を画す出来になっていたのでそこで高評価。ただ、客観的に見て高い評価ができる本なのかと言われたらうーんそれはそれでどうだろう、みたいな。シリーズとして楽しむにはこう言うのもあり、なんだけど。
どうでもいい話。訳者の加賀山さん的には「アン・ハ」は「アー・ハー」になるんすね(w。
★★★
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