ばむばんか惰隠洞

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2010-09-07 [長年日記]

[Books][web] 盾が矛を超えちゃった

今「量子回廊」の感想を書いてるんだけど、長くなりそうなのでその前にちょっと小ネタを。わたくしの鉄板信用銘柄、根岸泉さんのScript Sheetから、神は沈黙せず・去年はいい年になるだろう・MM9

自分は「MM9」については根岸さんより少々甘い評価をする(ベイリーっぽいやけくその大振りっぷりが、それはそれで気持ちいいと思えるので)けど、それ以外はおおむね納得できる。「防禦が固い」ってのはシンプルかつドンピシャな山本弘評であると思えるな。

それにしても

こういうツッコミを山本さんの本来のフィールドであるSF方面で目にしないってのは、何か理由があるんだろうか。単にオレのアンテナがさび付いてるだけで、ちゃんと見るところを見てれば、適切な批評は目にするよ、って事なんだろうか。

[Books] 量子回廊 年刊日本SF傑作選

量子回廊 : 年刊日本SF傑作選(大森望/著 日下三蔵/著) 大森望・日下三蔵 編
カバー 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
創元SF文庫
ISBN978-4-488-73403-9 \1300(税別)

大いなるエッジに蹴躓き

2009年の日本SF短篇の傑作群に第1回創元SF短編賞受賞作を加えた、19編を収録。

前作の収録数が15編、今回は19編ということで何やら年々ボリュームアップが進んでいるような。今回も未読作が多かったのでお得感は充分。ということで数が多いので一言二言しか言えないものも出てくるかも知れませんがそこは御容赦いただくとして、まずはそれぞれの作品に一言コメント。がんばるぞ。

夢みる葦笛(上田早夕里)

異形にして美しい何者かに浸食されていく人間世界。なんだろう、同じテーマを吾妻さんが描いたら「海から来た機械」になり、上田早夕里氏が描くとこうなる、みたいな。美しさに惑わされ、引き込まれていく人々の姿の静謐さと、最後に突然頭をもたげる狂気のようなものの描写を、女性ならではの感性、とまとめてしまっては雑に過ぎるだろうか。

ひな菊(高野史緒)

乱暴に分類するならバイオ系SF、って事になるのかな。全体に漂う雰囲気はむしろファンタジーのそれ。ややダークな方向のね。こちらには「夢みる葦笛」とはまたちょっと違った女性の視点のようなものが、お話の結末部分からほの見えてきてそこも興味深い。

ナルキッソスたち(森奈津子)

自分しか愛せない、という特殊な性への傾倒思考を持った人々が遭遇したものとは…。いかにもこの人らしい、セックスにまつわるちょっとした狂躁を描いた、ナンセンスかつ(男性側から見たら)ちょっと怖いお話。

夕陽が沈む(皆川博子)

「命は大切」という命題がエスカレートしすぎて、人間という全体ばかりかそれを構成する個々の器官それぞれについても、「殺してはいけない」というお題目が無理やり適応されてしまうようになってしまった社会で、パーツとしての人体を巡って描かれるホラー風味のショート・ショート。昏いながらも落ち着いた語り口故に、ラストのショックがなかなか効いている。

箱(小池昌代)

一時やたら目についてたような気もした「記述」にまつわるお話、今回のアンソロジーでは控えめになったかな、という印象は持ったけど、そんな数少ない、「記述」にまつわる不思議譚。技巧の冴える本編も良いのだが、著者のあとがきが相当ステキ。

今も箱はからっぽのまま。しかしからっぽを入れておくのに、これほどふさわしい箱はない。

なんてリリカルでSFなひと言なのかしら(w。

スパークした(最果タヒ)

こちらもある意味「記述」をテーマにした作品、といえるか。ただ、そこにあるのは「記述」によって生み出される奇想でなく、なんかよく判らんふわふわ、もやもやとしたもの。で、ごめんなさい良く判らない。

日下兄妹(市川春子)

本アンソロジーに2編収録されたマンガ作品の内の1本。ヘタな喩えなのは重々承知で、岡田史子+倉多江美にリリカルの素を振りかけたような作品、なんて。決して悪い意味で言うんじゃなく、これは本書の中でもトップ3に入る名作だと思う。乾きっぷりの末にやってくる、ちょっとしたお湿りがたいそう魅力的だ。

夜なのに(田中哲弥)

こちらは「異形コレクション」で既読。改めて読み返してみたら、あら、こんなに甘酸っぱい方面に上手に持って行ってたお話だったっけ? ってなもんで。時系列の行き来の自由自在っぷりに若干混乱するけど、悪くないね。

はじめての駅で 観覧車(北野勇作)

北野勇作氏の不思議ショート・ショートが2編。個人的にショート・ショートってのはラスト一行に込められた(Twistさせる)力が全てだと思ってるんだけど、この方のお話はそういうスタイルではないのだよなー。常に「あれ?」と思いながら読んでいき、ラストでは「ああ、」と(ほんとは納得してないんだけど何となく)腑に落ちる、ようなスタイル。がつんと来るんじゃなく、後を引くタイプのお話ですね。

心の闇(綾辻行人)

ベテラン作家による良い意味でオーソドックスにまとまったホラー短編。なんか安心するわ、こういうの読むと。

確認済飛行物体(三崎亜記)

先に(タイトルの)アイデアありき、みたいな。何かちゃんと落ちていないような気がする。

紙片50(倉田タカシ)

NOVA2でオジサンをはげしく困らせてくれた倉田タカシさん。あれに比べたらこちらはまだちゃんと読める。Twitterでつぶやかれた140文字の言葉の断片をつなぎ合わせて、物語のようなものを構成する、という構成は、web時代のカットアップって話なのかしら。自分の文章でやるって事はセルフカットアップ? そこの所の面白さはあると思う。ここに他人の呟きも良い感じに混ぜ込んだらフォールドインもさくっと出来上がり、って事なのかしらね。そこの所の斬新さは認めますが、わたしゃこんな「小説」は読みたくないですな。

ラビアコントロール(木下古栗)

バカだ。良い意味で(w

無限登山(八木ナガハル)

本書のもう一編のマンガ作品。数学SFには完膚ないところまで叩きのめされた自分でも、数学マンガなら何とかついて行けそう、って気になったり。意図的に不安定にしてきたふくやまけいこ的絵柄も案外好みではある。

雨ふりマージ(新城カズマ)

ライツビジネスとwebコミュニケーションが少しばかり進化した世界でのボーイ・ミーツ・ガール。そういうの(ボーイ・ミーツ・ガールものって意味ね)が好きな自分的にはこのお話、相当点数高くなっちゃう。かなり好きです。

For a breath I tarry(瀬名秀明)

まず謝罪から。すいません、「瀬名秀明みたいな話だなあ」と思って読んでました。瀬名秀明やっちゅーねん

理屈で攻めるSF的部分と、微妙に世界(「セカイ」に非ず)に攻め込むことを足踏みする、いかにも瀬名秀明的作品。良い話っぽいがどこか積んで無い感が残る。

バナナ剥きには最適の日々(円城塔)

アタシの苦手な円城塔さんなんだけど、今回は割にすんなりと読めた。なんというか(以下かなり簡単にまとめてますが)、深宇宙の探査に向かった探査機が定期的に「旗」を設置しておいて、それらの「旗」が1000年以上の時を経た後に設定された同時刻に信号を発信したら、それは超光速通信になる(まあパチモンなんだけど)、ってのはSFだと思い、そこでなにやら良いもの読んだなーって気になった、というところかなー。

星魂転生(谷恒生)

きわめてオーソドックスな宇宙SFというか、最近のハヤカワがお気に入りのミリタリィSF風味もあったりして、こりゃ逆に長編で読みたいような気がするね。

あがり(松崎有理)

創元SF短編賞、第1回受賞作。巻末にこの短編賞の選考経過と選評が掲載されているんだけど、一般から投稿された作品(600以上あったそうです)のレベルが主催者サイドの予想をかなり上回るものであったそうだけれど、本作を読むとその評にも合点が行く。確かに若干とっちらかった部分も無しとはしないが、普通に本書に混ぜ込んでも、この作品が最下位と評価されることは絶対無いのじゃないかな。瀬名秀明風味のスペシャリスト的描写を積み重ねてリアリティを補強しつつ、SF的アイデアの部分で思わず「それはありですか?」といぶかりつつもページを繰る手は止まらない、みたいな。もしかして今って、プロとアマの敷居が凄まじく低くなっているのかも知れないね。

ということで、いずれ劣らぬ力作ぞろい。ただ、頭では「コレハスゴイサクヒンゾロイナンダ」という意識は常にあるんだが、それとは別に、一読「なんて面白いお話なんだ」と脊髄が震え、涙腺がだだ緩むようなお話には残念ながら出会えなかったような気も同時にしてしまって。それが日本SFってもののSFに対するフォーカシングが(対象が多くなりすぎて)甘くなってしまっていると言うことなのか、読み手であるオレのSF読みとしての消費期限がそろそろ切れちゃうって事なのか、さてどっちなんだろう。

ま、普通に考えたら後者なんだろうけどね…。

★★★☆


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