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宮内悠介 著
カバーイラスト 瀬戸羽方
カバーデザイン 岩郷重力+WONDER WORKZ。
創元SF文庫
ISBN978-4-488-74701-5 \820 (税別)
第1回創元SF短編賞で山田正紀賞を獲得した表題作など、ゲームとゲームプレイヤーを介して語られる、意識と世界の物語を6編収録。
話題になっていたのは知っていたけどどういうわけだか手に取るのにこんなにかかってしまった。そのことについては読了して割と残念な気持ちになってます。もっと早く読んどけよ、ってね。と言うわけでそれぞれのお話の感想を。
幼い日の残酷な運命から四肢を失うことになってしまった少女、由宇。だが彼女はその運命と引き替えと言えるのか、囲碁に関して驚異的な才を得ることになる。その根幹をなすものとは…
意識と認識の違いというか、意識が(空間の)認識に浸食していくお話、と言う理解でいいのかな。囲碁というゲームをよく知らない自分にとって、碁盤上で展開するゲーム自体の丁々発止の緊張感、みたいな物は残念ながらわからないので、そこの所がどのくらい良くできているのかは判らないんだけど、そこを措いても決して広大ではない碁盤が意識の持ち方みたいなもの一つで、いくらでも大きな世界になるんだな、というのは感じさせられた。
こちらはチェッカーを題材に、最近ちょいちょい話題にのぼるトップレベルのプロプレイヤー対コンピュータ・プログラムの関係性みたいなものについて語るお話。たとえばチェスなどにおいて、コンピュータ・プログラムの基本戦略というのはそれまでのありとあらゆる定石をデータベースとして持ち、その中から常に最善手を検索していく、と言うようなものである、と聞いたことがある(違ってたらすいません)けど、ではこれまでのゲームの棋譜をすべて記憶できている人間のプレイヤーが居たら、両者の関係性とはどういうものになるのか、というお話、と言うことになるだろうか。
こちらのテーマは麻雀。自分が将棋も囲碁もチェスもよく判らんのだけど、麻雀は何とか判る、という状態にあるからなのかもしれないけれど、こいつは一番入り込めた。お話としては前二作のうち、より「盤上の夜」の側にお話の力点を置いて、碁盤で行われていた認識のお話を、雀卓(ちょっと広くなってるからね)の上で見てみたらどうなるか、と言うお話、かな。ある意味良くある麻雀劇画のノリの先に、ここでもやはりプレイヤーの意識、みたいなものが顔を出してくる、ような。
チェスの原型と言われる古代インドの遊技、チャトランガをベースに、こちらは「ゲームの規則」に「生きる意味とは」と言うテーマがリンクする、と言うお話でよろしいか? ブッダの物語は様々な人によって語られるが、ブッダの息子の物語とはどのようなものになるのか、って所に斬り込んできたあたりも面白い。
見方によっては「爛れた」とも取れる男女関係と、そこから引き出され、とある方向性を持って働く意識がコンピュータ・プログラムとどう絡み合うのか、その意識がめざす先にあるものは…。終盤のこんなやりとりがちょっとぐっとくる。
「将棋が現実を変えられるなどと、本当にいまも思っているのか」
「兄さんこそ、まだ、将棋なんか王を取ったら終わりだと思っているの?」
「盤上の夜」の登場人物を再びメインに、「清められた卓」からのゲストも交え、再び囲碁をテーマに語られる最終話。1945年8月6日、広島で行われた一局をベースに、意識と認識、抽象と具象、人とゲームの関係性を通じてたどり着く先にあるのは様々なレベルでの「運命」ということになるのかな。
…という。それぞれのゲームについて詳しい必要はなく、それらはあくまで舞台装置。ただ、自分が「清められた卓」で、その他の作品を読んでいるときよりも、お話の中で起こっている事象の緊迫感とか勝負の展開から受けるショック、のようなものはひとランク上のものがあったと思うので、やはりそれぞれのゲームをある程度遊んだ経験がある人だと、感じ方はまた違ってくるのかもしれない。確かにこれはすごいわ。
ここまで宮内悠介さんの作品、NOVAに載ってた「スペース金融道」シリーズぐらいしか知らなかったんですが、こんなものも書きはるんですね。驚きました(w。
★★★★
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