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上原正三 著
宇宙船文庫
ISBN4-257-76258-6 \620(絶版)
「ウルトラセブン」、「帰ってきたウルトラマン」、「怪奇大作戦」などで数々の名作をものした上原正三氏のシナリオ集。実質的な脚本デビュー作となる「ウルトラQ」の未制作エピソード、「OiL S.O.S」など、全17編収録。
商売ものに手を付けるシリーズ。先日買い取らせていただいた本たちの中に、上原さん、佐々木さん、市川さんの脚本集があったので、やはりこいつは手放す前に読んでおきたいよね、ってところで。
何度も言ったり書いたりしていますが、私は基本的に「ウルトラマン」以降の昭和の「ウルトラ」シリーズをあまり高く評価していない。いみじくも「脚本解説」の項に、
しかしSFよりも、いやヒーローよりもまず、絡み合い、怒鳴りあう人間たちが描かれているという一点で、「帰ってきたウルトラマン」は図抜けているものを持っている。
とあり、そこには完全に同意できるのだけれども、それ故にSFヒーロー作品からは"明るい未来"を見せて欲しい、と思っている自分の希望に、微妙にそぐわないものが感じられて、どうしても好きになることができなかった(ついでに言うと、たぶん「帰りマン」の頃は私も中学生、そろそろなにかといろんな物事に文句ばかり付けたくなる年頃だったってのも理由の一環にはあったのかも知れない。全体に目を大きく、つぶらな感じにデザインされた怪獣たちを見て、『もっと真面目にデザインしてくれよ、怪獣は怖いんだぞ』とか思った憶えもあるよ)。
その感覚そのものは、今でもなお変わっていないけれど、書かれた脚本をブラウン管を通して、テレビドラマとして見た時の感覚と、文字情報として受け取り、脳内でイメージを再構成する(まあテレビのイメージが邪魔をする時もあるけど)感覚ではやはり受けとるものの印象は変わるもので、私にとってはテレビドラマになった上原正三の脚本よりも、成果物としては完成前のものである、これらの文章たちから受ける印象の方が遙かにビビッドで、いろいろ考えさせられるものがあったと言える。
さて上原正三氏と言えば、先輩である金城哲夫氏同様、その根っこに「沖縄」を抱えた作家であるわけだが、金城哲夫が脚本にこめたものが「怒り」であったとするならば、上原氏がこめたのは、直接的な怒りを一旦収め、単に沖縄が戦中、戦後を通じて被ってきた物のみに限るのではなく、結果的にそういうものとを含むことになる、戦争という、大きな流れというかうねりのような物に対しての、「どうしてそんなことになってしまったんだよ」という静かな(もちろんそこには強いプロテストが含まれているのだが)抗議、のようなものがあるのではないかと思えてくる。
それが本書を編んだ人の意志であるのか、上原氏自身が常日頃思っていることであるのかは、本書一冊のみで簡単に結論を出せるものではないのだろうけれども、上原正三の紡ぎ出すお話の根底には、叩き付ける怒りではなく、敢えて少し引いて、静かに、しかし断固とした態度で投げかけられるメッセージがある、と感じられる。そこの所の読後感は、ちょっと代え難い物があると思いますな。
あまりに夢見がちなキレイ事の世界、とくさす向きがいらっしゃる、と言うのも理解できなくもないけれど、それを差し引いても大変に見応えのあるドラマ。私はとても好きです。本作中で語られる「セブン」のエピソードが、今回本書に収録されている「300年間の復讐」(未制作エピソード)ですな。
★★★★
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ここで反応するのも何なんですが^^;<br><br>「店主さーん。今、手に持ってる本、うりもんなん?」<br><br> って・・・・・・まだ店頭には並んでないっすよね?^^;<br>並んだあかつきには、是非とも手にいれるべく、がんばるっす。<br><br>いや、ちょーど我が家の本棚に埋まってた「文庫版 怪獣使いと少年」を読み終えたとこなんで、非常にタイムリーですわ。<br><br>でも上原さんの描く「怨人」って、最後まで報われなくて…<br>でも、一人だけ、その「怨」にあてられ、感化されちゃう…主人公が残されちゃって…<br><br>上原「怨」作品って、ある意味、感想が残るんでなく<br> 「事故にあっちゃった」後遺症が、残るって感じが、僕はします^^;
もう少し読んどきたい本があるので、そのあたりで満足したら棚に並べようかな、と。並べる前にご連絡……だとインサイダー取引になっちゃうか(w。<br><br>「『事故にあっちゃった』後遺症」って、うまい喩えですねー。そんな感じするわ、確かに。