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エリザベス・ベア 著/月岡小穂 訳
カバーイラスト 前嶋重機
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011659-0 \880(税別)
滅亡の時、<全地球凍結>までに残された時間はあまりに短く、打てる手はあまりにも少ない。外宇宙への移住計画において中国に先んじられたカナダも航宙艦"モントリオール"を建造し、宇宙進出へのとば口に着いてはいたが、中国との差は未だ埋めきれない。しかも中国側は他国の宇宙進出を阻止すべく、さまざまな手を打ってきていた。そんな中、異星人のテクノロジーを取り込んだ肉体改造を果たしたジェニーも、"モントリオール"のブリッジに乗り込むことになったのだったが…。
SFハード・ボイルドチックな前作から打って変わって、今回は宇宙SFプラス電脳SFの香りを強めにたたえた作品。さらにここに、日本のアニメ好きなら何となく連想できるビッグ・タイトルの匂いなんかもそこはかとなく漂ってきて、前作とはかなりノリも変わり、登場人物も増えていろいろと忙しい展開になっている。狙ったわけではないんだろうけど、ある時は最初の"マクロス"、またある時はいかにも"逆シャア"な展開が織り込まれてて、読んでるこちらは「ああ、なるほどそう持ってくるのね」的なニヤリ感にあちこちで浸れることうけあい。
うけあいはうけあいなんだけど、んじゃあ終始うえっへっへとニヤニヤしながら読んでいける本になっているかと言えばそうでもないところは少々辛いかも。前にマクロスを引き合いに出したけど、ちょうどあっちでフォールド・ドライブが勝手に飛んでいってしまって身動きできないマクロス、状態の宇宙船が比較的重要な舞台になり、なおかつ同じくらいのウエイトで地球上でのいろんな事が用意されているので、主要キャラの皆さんが結構地球と衛星軌道上を、行ったり来たりすることになるのが流れ上、肝心なそのお話のドライブ感を少々スポイルしてしまっているような感じがあるのが少々惜しい。
電脳SFとしての面白さ、宇宙SF、というかファースト・コンタクトSFの面白さ、ついでに少し未来への展望も交えたSFとしての面白さは存分に盛り込まれていて、かなり楽しめる作品になっているとは思うし、キャラ造形の巧さは相当なモノ(特に少々困った人々のキャラ造りは上手いと思う)なのでそこも良い感じであると思うのだが、どうだろう、物語としての引っぱり力の強さ、ってところに少々惜しいな、と思うところがあった様な気がしないでもない。書いている側がどこかで旧にふと我に返ってしまい、それが小説に少々冷ためのお水をかける結果になってしまったような気がしたな、とは思う。
とはいえ電脳系ハードボイルドから割とハード風味の宇宙SFへと遷移し、この先(もう一作ありますから)にはたぶん、ファースト・コンタクトとそれにまつわる"種"への考察、あたりまで突っ込んだ展開が待っていると勝手に期待しているので、そこはちょっと楽しみに待っておきたい気分。いろいろ不足に感じるところは多いのだが、それでも続きが気になるので、最後に一発、どかんとかましてもらえると嬉しいですな。
★★★☆
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