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スティーヴン・L・ケント 著/嶋田洋一 訳
カバーイラスト 岩良ノラ
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011758-0 \980(税別)
合衆国憲法とプラトンの「国家」のコンセプトを融合させた政治理念で運営される26世紀の統合政治形態、UA。それは民主制の下に支配階級、市民階級、戦士階級という階級制が混在する世界。戦士階級の兵卒たちは、みなクローンか孤児で構成されていた。孤児として育ち、クローンたちを兵士として鍛え上げる孤児院で育てられたハリスは、訓練過程を優秀な成績で卒業したが、最初の赴任地は銀河系でも最も最果ての、戦闘の兆しなど全くない、澱んだ雰囲気の漂う砂漠惑星ゴビ。だが、彼がこの星に着任すると同時に様々な物事が動き始めていた…。
また来たミリタリィ・SF。とにかくなんかしら新機軸を盛り込まんことには他と差別化できねえし、ってワケでもないんだろうけど、本書では民主制と階級制が両方アリの世界観と、その中で必要不可欠だけれどもかなり消耗品的ポジションにある戦士階級の、そのまた下の方の階級に属する下士官以下を、クローンでまかなうってあたりの設定的な目新しさでアピール、というところか。クローンたちは基本同一なんだけど、育っていく過程でその個性に差が生まれるとか、見た目がそっくりなんだけどクローンたちには特殊な処置が施されていて、お互いを見るときにそれを気づかせないようになっているとか、考えているのか多孔質なのかよく判らない設定を何となく上手くぼかしている(いみじくも訳者の嶋田さんもそんなことを遠回しに書いてらっしゃるような気も)。
基本的なスジは「宇宙の戦士」的、ペーペーの一兵卒が一人前の兵士へと育っていく過程が基本にあるんだけど、ただひたすら命令に忠実であればよかった機動歩兵たちに比べ、こちらのクローン兵士たちのなかで一人前に、かつ生き残っていくためには単に忠実な兵士であるだけでは足りなくて、それプラス自分の考え的な部分もちゃんと持っていないとダメだよ、って話になっているあたりが今様といえば言えるか。戦争のシステムが複雑かつコストのかかる物になればなるほど、一兵士に求められる資質にも変化が生じるということなんだろうか。ここに微妙にシビリアン・コントロールに対するちょっとした不信感みたいなものが加味されたものが本書の味と言えるかな。
シリーズ化されている作品なので続きがある以上、これ一作でいろんな事を判断してはいかんのだろうと思うが、若干ご都合主義的な部分もあるし、何となく現在ただいまのアメリカの軍の運用のありように文句があるんじゃないかと思わせるところも見受けられて、気持ちはわかるが微妙に時々生臭いなと感じてしまうところもあり、単純に面白がることはできなかったんだけど、続きもあるって事なのでその辺は少し猶予期間を作ろうかな、というところか。「宇宙の戦士」の基本設定に「老人と宇宙」的クスグリをまぶしたようなお話なので、ちょいと続きを読みたい気分ではあります。
★★★☆
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