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先日結構まとまった数の文庫本の発送があって、ごそごそと棚をほじくり返してたときに出てきた本。S・L・トンプスン「A‐10奪還チーム 出動せよ (新潮文庫)
」「サムソン奪還指令 (新潮文庫)
」。懐かしいので読み返してみた。
冷戦の初期に米ソが締結した秘密協定、ヒュープナー=マリーニン協定。それは大戦終結後も混乱状態にあるドイツの冷戦地域における、両国機関の限定的な行動の自由を保証するもの。本来は戦後の混乱で家族と離ればなれになった市民たちへの便宜や捕虜の交換や送還のための事務的なもののはずだったのだが、いつしかこの協定を利用して、米ソは東ドイツに独自の行動機関を設置する。
折しも技術的なギャップを埋めようと躍起のソ連側は、米軍の最新鋭軍用機を自分たちの勢力範囲に誘い込み、捕獲することで機体や捕虜を獲得する作戦を展開していた。貴重な情報の流出を防ぐべく、アメリカは協定で定められた範囲内で、東ドイツに墜落、不時着したパイロットや重要機密が敵の手に落ちる前に敵地に侵入、ターゲットを回収するための特殊チームを設立する。高度にチューン・アップされた4輪駆動車を駆る凄腕揃いのドライバーたちで構成された、「奪還チーム」の誕生だった…。
ってわけで。冷戦という構図が無ければ成立しないシチュエーションな上に、冷戦構造下である程度の治外法権が認められつつもやってることは危険な諜報活動、活動のキモになるのはチューンドカーのカーアクション、という一歩間違えたらトンデモ行きな設定が案外違和感なく入ってくるあたりは、実際にレーシング・ドライバーや自動車雑誌のライター経験のある著者の、クルマに対する知識の深さのおかげだろうか。4輪駆動車でタックインするときの手順を事細かく描写する小説、って案外無かったような気がする。
第1作「A-10…」はパイロットの思考レベルで状況と操縦のI/Oをコントロールする最新システムを備えたA-10を巡る敵味方の丁々発止。主人公マックス・モス(この名前で愛車がロータス・ヨーロッパってところでニヤリとするよね)の奪還チームでの初仕事なんだけど、前に読んだときには相棒であるアイクと任務を巡って結構衝突があったような覚えがあったんだけど、そんなの全然無かった。むしろ本書は初任務でいきなりのっぴきならない状況に放り込まれた主人公が一人でがんばっていく姿に主眼が置かれている。そういう意味じゃあ掴みの部分の目新しさとは裏腹に、お話の展開は案外オーソドックスといえるかも。
続く「サムソン…」の方は、ユニークな設定が逆に著者にいろいろ枷をはめたというか、何か新機軸を持ち込まなくては、って気にさせたのか、前作のシンプルさから一転、国際謀略小説的な側面の描写にもかなり力が入っている。で、そっち方面の捌き方が案外手薄な分、お話のテンションは終盤やや腰砕けになってしまったような恨みもなくはない、かな。
「著者の全てがつまって」いるデビュー作と、その次に出すものの按配の難しさ、みたいなものがあるんだろうかね。それでもまあ、新機軸の部分が上手く効いてる部分もあるんで、楽しめる作品であることは確かなんですが。
「奪還チーム」はもう一作、あとマックス・モスが主人公のお話が別に一つあって、それも手の届くところにあるので、続けて読んでみようかな、って思ってます。
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