ばむばんか惰隠洞

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2010-07-14 [長年日記]

[Books] ハンターズ・ラン

9784150117610 G・R・R・マーティン&ガードナー・ドゾワ&ダニエル・エイブラハム 著/酒井昭伸 訳
カバーイラスト Stephan Martiniere
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011761-0 \1000(税別)

向き合って対話する冒険者

宇宙は人類にとってのフロンティアではなかった。そこにはすでに様々な、進んだ宇宙航行種族たちが進出し、人類は自らの種族としての未熟さを恥じ入るしかできなかった。だがある意味熟成の進んだ先進宇宙航行種族にはない、荒々しい開拓者精神を持った人類たちは、先輩種族たちから辺境惑星の開拓者として送り込むことで有用性を発揮できると判断される。かくして宇宙の各地には故郷での貧しい暮らしから逃れようとする人々が続々と送り込まれることになった。そんな辺境惑星の一つ、サン・パウロで一匹狼の採掘技師を営むラモンは、その酒癖の悪さから、泥酔して喧嘩をふっかけたあげく、相手の男を殺してしまう。しかも間の悪い事に殺した相手はエウロパの大使だった。

事件のほとぼりを冷ますため、誰も踏み込んでいない地域に乗り込んで、一人採掘作業を行うラモンだったが、彼はそこで不可解な物体と遭遇する。それは今までに知られていない異星人の、隠された構造物だった。何が起きたか判らないままに彼らに捉えられたラモンはなんの説明もないまま一方的に、ラモン以前に捕らえられ、逃亡した別の地球人の探索と捕獲を命じられる。かくしてラモンと彼の監視役の異星人マネックの探索行が始まった…。

手錠で繋がれた刑事と犯人が反目しつつも事に当る、なんてのはバディ・ムーヴィーでは良く見る図式だけど、刑事側がやたらと能力的に上で、しかも手錠も相当上等で、犯人が悪さをしようとするとたちまち彼に罰を与えるような仕様、しかも刑事さんたちは犯人には全く理解できない行動様式や行動哲学に支配された新人類だったらどうなる、ってなお話。ハデなSF的ネタは控えめで、全体的なノリとしては冒険SF。G・R・R・マーティンには「フィーヴァードリーム」という川下りSF(ん?)があるけれど、こちらの作品でもそんな雰囲気に、「山猫の夏」的、南米の蒸せるような環境下での追跡行の描写が被さるような構成になっている。この構成が故に、特に序盤はどうしても「別にSFでなくても良いんじゃねえの?」的気分が先に立ち、なかなかページを繰ろうという気が起こらない展開なのだが、これがラモンとマネックが追っているもう一人の人間というのが誰なのかが判ったところから、俄然お話が面白くなってくる。

異星人たちには「タテクレウデ」やら「アウブレ」やら、人類にはうかがい知ることのできない生きていく上の指針や基準を表わすいくつかの言葉があり、それらの言葉は人間側で言うとどういうことになるのか、というところは最後まで明らかにされず、そこの所は読み手の方が「こういうことかな?」的に想像しながら読んで行かなくてはいけなくて、そのあたりが序盤のもたつきっぷりに拍車をかけてくれる訳なんだけど、このあたりも含め、ラモンたちが追っている人物が誰なのかが判ったところでいろんなもやもやが晴れてくれる。その後の展開ももちろん冒険がメインになるわけだけども、それと同時に主人公ラモンが、異星人たちの良く判らん言葉が意味する物事に向き合い、追う相手と自分との関係性を改めて考え直していく過程の描写がお話にかなりの深みを加えている。時には全てを明らかにしない方がお話に深みが出る、ということでしょうかね。

そこの所の、一度生まれた深い部分がかなり魅力的なだけに、オチの付け方はこれで良かったのだろうか、ってところに若干不満が残ってしまうのが惜しいかな。ネタバレになったらごめん、ラストの見せ場に全くSF臭さがないってあたりで、自分としては文句なしに大拍手、とは行かないあたりが相当残念に思えてしまうのだな。

著者(たち)のあとがきや訳者の後書きでも触れられているけれど、本作はなかなか複雑な経緯を経て世に出た作品で、お話のとっかかりができたのは1976年、それが数年かけて少しずつ形が出来てきた(ここまではマーティンとドゾワの仕事だったそうだ)ものが、そこで20年ばかり眠ってしまう時期があり、その後エイブラムスの参加を得てようやく形になった、というものだそうで。なんだろう、主にマーティンが書きたいところを書いて放ったらかしたものを、エイブラムスががんばって何とか形にした作品、なのかも知れない。その纏めっぷりの捌き具合はかなりのモノだが、それでもやっぱりオチのインパクトまでは演出できなかったのかなあ、なんてね。そこだけちょっと、惜しかったかなあってところです。

★★★☆


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