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2011-06-02 [長年日記]

[Books] NOVA4 書き下ろし日本SFコレクション

9784309410777 大森望 責任編集
カバー装画 西島大介
カバーデザイン 佐々木暁
河出文庫
ISBN978-4-309-41077-7 \950(税別)

技巧派だけど球速低め

全編書き下ろし新作で編まれた日本SFアンソロジー。4巻目は9作を収録。

ということで第4弾。もはや特に能書き垂れることもないので個々の作品について、簡単に参ります。

「最后の祖父」京極夏彦

ある日突然、いろいろなものが「終り」始めた。それが世相というものなのか、と思っていた自分だったが、どうやら「終わって」いくものたちにはひとつの共通点があるようで……。実はこれが京極夏彦のデビュー作であったかもしれない、というある意味幻の作品が原型となった作品。ひどく日常的な、それでいてどこか寂寞とした雰囲気をたたえた、ある意味終末テーマのSFと言えるか。乾いた感じがかなり良い。

「社員食堂の恐怖」北野勇作

超高性能な調理マシンが配備された、とある企業の社員食堂。ところがそのマシンがある日……。んまあある意味北野勇作スタンダード。なんだかちょっと変で、適度に黒くてグロくて、そして最後はぽいっと投げる。大森望が編むアンソロジーの2番打者としてはハマリ役って事なんだろうな。

「ドリフター」斉藤直子

せっかくの文化祭なのに、運営側に回ってしまった「僕」は、守衛室でおっちゃんの昔話に付き合う羽目になっていた。守衛室にはおっちゃんが貯め込んだ良くわからん紙切れの山が。そこに記されていた情報がある時重要な意味を持って……。軽めなタッチと会話のリズムがかなり良い感じ。最後には謎の感動が待っている。残念なのはオレがドリフに全然思い入れがないもんだから、どっかで一歩引いて読んじゃった、ってあたりかな。

「赤い森」森田季節

本来ありえないと思われた地方に見つかった(かも知れない)古墳の調査に向かった院生が現地で見たものとは……。考証系の伝奇SF、とカテゴライズすればいいのかな。こちらも軽めに楽しめる一作、かな。

「マッドサイエンティストへの手紙」森深紅

軍需にも携わる超巨大企業内で起きた謎の失踪事件を追う、変わり者の研究者と割と普通な女性のコンビ。ハイテク産業を舞台にした一種の安楽椅子探偵もの、かしら。安定性高し、ワンダーは稀薄。

「警視庁吸血犯罪捜査班」林譲治

吸血鬼の存在が顕在化した近未来、労働力の確保のために、彼ら吸血鬼を合法的な存在として受け入れることを選択した東京に新設された警察組織の活動を描く。こちらもジャンルSFとして安定銘柄、ではあるな。

「瑠璃と紅玉の女王」竹本健治

テッド・チャンがこんな感じの話を書いてなかったっけ…。小さく美しく、寓意的なファンタジー。ちょっと大人な味付けもコミでどうぞ、って感じか。嫌いではないけど、まあ下位打線って感じもあるかも。

「宇宙以前」最果タヒ

イメージを外に拡げる、というのがSFに与えられた使命であるとするならば、本書の中で一番その使命を忠実に全うしているお話はこれ、と言えるかもしれない。ファンタジー風味の舞台立てから、いつしか世界はSF的な世界観で語られる者に遷移していくのだが、実はお話の一番根っこの部分が意外にすんなり腑に落ちない部分が残り、そこに何とも言えないもやもやが残る、みたいな。

横っ面をひっぱたかれたような衝撃はないのだけれども、なにかこう、読み終えた後も妙な引っかかりが消えないような作品。

「バットランド」山田正紀

バイナリコードを音声で発信するコウモリ、640光年先から送り込まれた謎の宇宙線バースト、認知症の老人とホーキングばりの天才科学者…。魅力的なガジェット満載で突っ走るハードSF寄りの中編。なんかこう、肝心なところを割とぼかしたまま先に進められた感じがあって、北野勇作作品ほどではないけれどもどこかで「放り投げられた」感じがつきまとってしまうあたりが何と言ったらいいのか。おもしろい話だとは思うけど、これは逆にもうちょっとページを使って、登場人物達の書き込みをやってくれた方が嬉しかったかも。長編化の構想もあると言うことですので、そちらに期待します。

てな感じ。アンソロジーとしてはテーマへの縛りが甘い、というか自由に書いて良いですよ、というスタンスが逆に、このアンソロジーのスパイシーな部分をスポイルしてしまっているんじゃないのかな、と言う気はしないでもない。なんだろうなあ、面白いお話を読ませていただいてはいるんだけど、なにかこう、アンソロジーとして目指すものがなんなのか、ってあたりが全然見えてこない、ってあたりに少々物足りなさを感じてしまうのも確かなところで。

★★★


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