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2012-04-04 [長年日記]

[Books] エラスムスの迷宮

エラスムスの迷宮(Anderson,C.L./著 小野田和子/翻訳 アンダースンC.L./著) C・L・アンダースン 著/小野田和子 訳
カバーイラスト Stephan Martiniere
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011841-9 \1100(税別)

りとるぶらざー、うぉっちんぐ、ゆー

宇宙に伝播した人類社会の最も外辺部にあたるエラスムス星系。そこは夫妻奴隷制を経済基盤とし、選ばれた血統に属するごく少数の特権階級に支配された世界。人類世界をゆるやかに統治するパクス・ソラリス守護隊は、この星域を戦争勃発の危険性の高いホット・スポットと認定し、監視を行っていなかった。そんな中、エラスムス星系に送り込まれた野戦調整官ビアンカが、不可解な死を遂げたという知らせがもたらされる。かつてビアンカの同僚で、今は引退しているテレーズの許に、この事件の捜査とエラスムス星系の現状を究明すべく、守護隊への復帰要請が届くのだが…。

まとまったお金を得るためには家族の誰かを奴隷として差し出して、その対価を得なければいけないような社会。そこは一握りの支配階級と、奴隷と、官僚と、その官僚達の行動を監視する事務官と呼ばれる人種から出来ている。その歪んだ社会情勢がもたらす不安定感から、ここは常に紛争と対外的な戦争の危険性を内包した世界、というわけでやや不気味なディストピアで起きた殺人事件の捜査を軸に、その事件の背後で信仰する大きな陰謀の影が徐々に明らかになってくる、というようなお話。

よく考えるとかなり陰々滅々とした世界で繰り広げられるディティクティヴ・ストーリーに、徐々にナノテクやらサイバー風味をまぶしてきている、と来ればかなり面白そうって気もしそうなもんだが、SF的なワンダーでのドライブ感、ってあたりは意外に稀薄。かなり念入りに考えられたストーリー展開のせいで、とんがったSFを読んでいる、というワクワク感はあまりない、というのが正直なところか。そもそもそのストーリー展開の方も、正直しっかり計算され尽くされた、とまではいかないところもあるわけで。

著者、C・L・アンダースン(この方、サラ・ゼッテルさんだったんですな)は本書において「平和について書きたかった」というようなコメントを残しているそうだけど、本書はそちらへの展望がしっかり描かれていると言うよりは、今も世界の各地に残る紛争地域において発生している割り切れないさまざまな物事を、改めて提示されているような気になってしまい、それはそれでまあ、正直楽しくはないよね。で、そんな楽しくはない世界観を突破する(SF的だったり、ストーリー的だったり、どちらでも良いんだけど)だけのパワーは残念ながら本書にはなかったか、と。かなり念入りに用意された序盤から中盤への流れに比して、終盤の捌き具合がやや拙速に過ぎたんじゃないかと。そんなに薄くない本なんだけど、ペース配分的にちょっと惜しかったんじゃないかという気はする。終盤の短さは悪くないんだけど、その短さを引き立たせるための終盤直前の仕込み、みたいな物が少々説明不足だったんじゃないかな、と言う気はしたんだった。

とは言えお話の展開のパートで、こんな感じでいろいろ注文を付けたくなる程度には「物語」の部分がしっかり立っている、とも言えるわけで、そこのところを追いかけて読んでいく分には意外に悪くない本だったりもするんだった。「スジ」を追っていくお話としてはかなり楽しめた、と言える。若干ダウナー系から脱却しづらいところはあるんだけど、それでも読んでいて楽しい一作ではございました。

★★★☆

[Day][Oldbooks] いろいろ作業中

軽石庵のZenCart移行作業、のそのそと実行中。一応データの一括登録(というか再登録だね)の目処は立った。サイト全体のデザイン的なカスタマイズの方向性(どこ触ればいいか)も見えてきた。今週中には何とかなりそうかな。

ZenCart、軽石庵を開く前にもちょっと見てみたことがあるんだけど、その時はかなりクセが強そうな感じだったんですが、バージョンが上がるにつれて相当弄りやすくなった感じはある。不満もたくさんあるけどね。

ま、この辺は己の身の丈に合わせてやっていくしかないんで、落ち着きどころを探しつつなるべく早めに再開します、ってことで。


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