ばむばんか惰隠洞

«前の日記(2016-08-14) 最新 次の日記(2016-08-17)» 編集

カテゴリ一覧

Anime | AV | Baseball | Books | CGI | Chinema | Comics | CS | Day | DVD | Event | F1 | Games | Hobby | HTML | Kindle | Misc | mixi | News | Oldbooks | PC | Photo | SpFX | Stage | tDiary | Tour | TV | web | 逸級介護士


2016-08-16 [長年日記]

[Chinema] シン・ゴジラ

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ スタッフ
総監督・脚本・編集:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣
撮影:山田康介
音楽:鷺巣詩郎、伊福部昭
出演
長谷川博己
竹野内豊/石原さとみ/高良健吾
大杉漣/柄本明/余貴美子
市川実日子/國村隼/平泉成/松尾諭
津田寛治/塚本晋也/高橋一生
岡本喜八(写真にて登場)
公式サイト:http://www.shin-godzilla.jp/index.html

東京湾を漂流する無人のプレジャーボート。調査にあたる海上保安庁の職員たちは、突如海上に異変を察知する。大量に噴出する水蒸気と海を赤く染める何物か。同時に東京湾海底を走るトンネルでも落盤事故が発生。直ちに対策本部を設けた政府では、突発的な海底火山の活動と断じ、その方向で対応策を進めていこうとするのだが、若き内閣官房副長官、矢口は巨大な生物の可能性を示唆する。あまりに非現実的な説ゆえ、他の閣僚たちが一笑に伏せようとしたその時…

漂流する船からお話が始まる、というところで'84ゴジラ的な展開なのかな、と思ったけどそんなことは全くなくて、そこからの展開スピードの速さはこれまでの東宝ゴジラシリーズとは確実に一線を画す。まず主人公を紹介する気がない。主人公の人間関係なんぞに時間をかける気もない。その代わりに展開するのは徹底したシミュレーション指向。なんだろう、押井守さんなんかもそういうところがある様な気がするんだけど、この年代(とりもなおさず自分の年代でもある)ってのは気持ちのどこかにいろんな物をシミュレートしたい、という熱を持っているのだろうか、なんて事をちょっと思った。登場人物たちの位置づけや動機より先に、世界を用意すべきだろ、ってな意識が優先する、というか。

なので映画の序盤はだれが主人公なのかも良くわからん状態のまま、なにか異常な事態が発生し、それがだれも見たことのない「怪獣」という存在によって引き起こされていることが判り、それに対して責任者はどのように対処していくか、というところの描写に力が注がれる。ここは多分、古今東西の怪獣映画で初めての試みなんではなかろうか。そこのところのフレッシュさはかなりある、し、面白い。

この流れに乗っかる形で、古い特撮ファンが困惑するようなちょっと「外した」表現や、明らかに「アニメですよ」という注釈付きで見ざるを得ない表現、「あ、これ樋口っちゃんや」的な絵のつるべ打ちで、少なくともそこそこ歳喰ったファンには退屈する暇がない映画になっていて、そういう意味では自分としてはあまり文句はない。かなりすばらしい作品だと思う。

ただ、先に述べたように人間側の思いや動機、というところを思い切ってオミットした結果、怪獣側の都合と人間側の都合が当初は距離を置いた平行線で展開していたものが、いつしかその線が交差してクライマックスへ、という怪獣映画の王道の味は少々薄味で、かつそれに代わるテンションが上がる何かはもらえなかった、ってところはあるので、正直「怪獣映画のカタルシス」ってところに限定するなら平成ガメラの第一作を超えるところまでは行かなかったかな、って気はする。上手く言えないんだけど、こっちはおいしいビールを期待していたのに出てきたのはロンリコだった、って例えはどうでしょう。口に入れたら良い感じで蒸発していくのは判るし、あっという間に酔っ払えるんだけどオレはそういう酔い方はしたくなかったんだけどな、っていう(^^;。

「ミレゴジ」の頃だったかな、この先「ゴジラ」を作るならば「核」の呪縛を捨ててナノテクなりバイオなりを提起すべき問題の核に据えた、なんて言うんだろう、ドロドログチャグチャとした、歩くだけで迷惑な怪獣、ってのを出すしか無いんじゃないだろうか、なんて思ったんだけど、で、この作品の公開前の情報(見た目の、ね)で実は割と期待していたんだけどそこまでは振り切ってくれなかったかなあ、ってあたりの恨みは消しがたい、かなあ。

や、いろいろ言うてますけど映画は大変面白かったです。文句を言いたくなるのは多分、自分が作り手の皆さんに近い年代で、それなりに譲れないところがあって、そこはやっぱりしがみつきたいところである、ってことでもあるんだろうと思いますよ。

★★★★

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
taoy@笹塚 (2016-08-17 09:21)

樋口さんと庵野さんの実写映画は今まで(悪い意味で)裏切られたことがなかったので、今回「人間を(描けないから)描かない」方向へ振ったのは正解だと感じました。観てる間は「そうそうそうそうそうそうそれそれそうなんだよ」の連続。<br>ゴジラだったし怪獣映画だったしゴジラ映画でした。先ごろの米国版がゴジラだったし怪獣映画だけどゴジラ映画ではなかったので、そこのモヤモヤが解消されたのが収穫です。<br>「怪獣映画」としては平成ガメラ1作目、2作目には及びませんが、「ゴジラ映画」としては第1作と双璧かな、と思っています。<br><br>個人的にはこの映画で描かれている出来事を「市井の立場のみ」から描いたモノを山崎貴監督で撮って欲しいです(現場交通整理の警察消防自衛隊以外、政府関係者が一切出て来ない版)。

ROVER (2016-08-17 23:51)

ゴジラ映画、って括りだとどうなるでしょうね。自分はなぜか「ゴジラの逆襲」以降がゴジラ映画のカテゴリに入る作品、と思っていて、その中ではナンバーワンは「キングコング対ゴジラ」で、その牙城は揺るがないんですけども、その次ぐらいには来るかもしれないです。「G×MG」(釈ちゃん版です)と2位の座を激しく争う感じでしょうか(^^;。<br>怪獣映画、ってことだとどうかな。何位かは措いておくとして、「サンダ対ガイラ」より上か下か、で悩む感じかな(w。


Google search
www.bumbunker.com
Web
2016年
8月
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

ここ1週間分の話題

傑作です

懐かしさ満点

妖精を観るには…

ジュヴナイルとしてなかなか良質

バナーが必要ならこちらを
バナー素材

古本屋やってます
特殊古本屋 軽石庵

2003年9月までのサイト

巡回先
ROVER's HATENA

あすなひろし追悼サイト
あすなひろし追悼サイト

twitter / karuishian
«前の日記(2016-08-14) 最新 次の日記(2016-08-17)» 編集
©1996-2020 乱土 労馬:l-rover@kobe.email.ne.jp