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太田直子 著
光文社新書(Kindle Unlimited)
字幕制作者として20年のキャリアを持つ著者による、字幕つくりに関するあれこれ。主に愚痴、まれに成功話。
Kindle Unlimitedで何冊か押さえてた新書シリーズから。著者は自分が観たヤツだと「ヒトラー ~最後の12日間」の字幕を担当された方。もちろん「おっぱいぷるんぷるーん!」の方じゃないよ。同じ意味であっても発音も長さも構造も異なる外国語を、「1秒間に4文字」の制限の元で文字情報に変換する、という字幕制作にまつわるさまざまなエピソードが語られる。語られるのは字幕制作の方法論であったり、字幕にまつわる様々な、字幕制作者対営業サイドで発生する軋轢(と、それに対する悪態の数々)。で、言うまでも無いけど面白いのは後者。
そういう事もあるだろうな、と何となく思ってはいたけれど、字幕で「ん?」と思うことはちょくちょくあるが、それは必ずしも字幕制作者の能力が足りていなかったから、とは限らないと言うことが良くわかる。たとえばどうしても字幕の表示の制限上、多少おかしくなっても詰め込まざるを得ないとき(それ故に、ここでアクロバティックな省略が上手く行ったときはガッツポーズのひとつも出るんだろう)とか、字幕制作者側からすれば蛇足に過ぎないことや、意味的に逆になりかねない表現などを、営業側が無理矢理入れさせようとしてくるなんて事が往々にして起きているらしい。そのたびに著者の悪態はキレを増す、という仕掛けになっている(w。
その他、字幕にとどまらず日本語の表現全般にわたる、「ここがおかしいんじゃないか」、「この使い方はどうなんだ」的なお話や、この手の話なら必ず出てくる禁止用語問題など、言葉を扱う専門家による、映画にとどまらず日本語全般に対しての軽めの異議申しての数々が、まあ与太話レベルの乗りで次々と飛び出してくる。そこの所のテンポや語り口がとても活きのいいものになっているので、読んでる間は充分楽しい。ただ、それがおおむね「うんうん、そうだろうねえ」のレベルに収まっているので、何かとてつもなく新しい切り口の字幕論、みたいなものには出会えない。あと、決して低く見ているわけではないのだろうけど、何となく吹き替えに対して字幕の方が上、という目線も感じられてそこもどうかな、とちょっとだけ思った。まあこれは字幕制作者ゆえの矜持、とも取れはするけれど。
一点興味深い部分があって、それは例の「ロード・オブ・ザ・リング」のなっちの字幕問題で、そこは同業者ゆえって所もあるだろうけれど、難解であったり、その作品の熱心なファン以外には理解不能な箇所の字幕化においては、むしろ一見さんの客にもある程度意味が通る字幕を作る必要があり、それはしばしばファンの神経を逆なでしてしまいがちだけど、そこでファン側の要求を完全に満足させることは無理ですよ、と。
そういう不具合(と言っていいのかな)が今やネットであっという間に拡散されてしまうので、必要以上な「叩き」が起きてしまうのだろうけど、字幕を作る側にもいろいろ苦労はあるのを判ってくださいな、と言う主張はもちろん理解できます。自分も「指輪」の時より「ファイヤーフォックス」の時に「戸田奈津子ゴルァ!」って思った口ですから。
でもさあ、なっちにはまた別の問題があるんじゃないか、って気もするんだけどな(^^;。
★★☆
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