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管浩江 著
カバーイラスト 橋賢亀
カバーデザイン 東京創元社装幀室
創元SF文庫
ISBN978-4-488-72401-6 \660
森を殺していく塩の霧、その中にうごめく異形の者たち。それら異形の者たちの中でもひときわ美しい、青く輝く鎧に身を包んだ闘士の姿があった。邪な創造主、バナードの手で人ならぬものへと変貌させられた彼、金目は創造主を裏切り、逆にバナードへの復讐を誓ってきりの森をさまようことになる。そんな彼が出会ったのが不思議な少女、シエラだった……。管浩江、1989年の初長編。
もともとはソノラマ文庫で刊行されていた作品が、このたび創元から再刊されたもの。'89年の発表当時には読んでいなかったもので、どれどれと手に取ってみたわけだが、ふむふむ、発表されたところがソノラマ文庫、初出は18年前と来ればさすがにいろいろなところが若々しく、未熟で、それ故に新鮮な魅力があると思う。のちの管氏の作品に見られる落ち着きというか静謐さというか、そういった方面の魅力は控えめで、代わりにいかにもライト・ファンタジー風味の舞台やキャラ設定、ややプラトニックな方にシフト気味のストーリー展開、美しさとグロテスク風味が混じり合った描写など、作者がデビュー作(と言うわけではないのかな?)につぎ込む精一杯がいろんなところから感じられて、そこはなかなか、未熟なところもあると思うけれども心地よい。
そのうえで、管浩江はあくまでも、ファンタジーではなく、SFの側にいる人なのだなあと思わせられるあたりはちょいとした収穫。世界の設定要件になっている土地を殺していく霧や横行する異形たちについての説明の付け方に、はっきりとではないのだけれど取りようによってはこれはSFだよね、と思える趣向が凝らされているのがなかなか嬉しい。
創元から文庫で再刊されるにあたって、帯の惹句に「バイオSFファンタジー」なる文句を入れるかどうかで、ちょっとした悶着があったらしいことが山田正紀氏の解説で読めるのだが、確かにそりゃちょっとやり過ぎかもとは思うが、どうでしょ、リンダ・ナガタとアン・マキャフリィの共著、って風味は結構感じられるわけで、「バイオ」の印象までは行かないんだけどナノテクSFの風味が感じられてそこが興味深かったな。
オッサンになっちゃった私にはいくつか物足りない(どうしても黒いところを求めちゃうからね)ところもあるのだけれど、若い方なら楽しく読める作品なのじゃないだろうか。んでこれを気に入ったら、「五人姉妹」あたりも読んでみて欲しいな、と思いましたですよ。
★★★
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