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古川日出男 著
デザイン 関口聖司
写真 ©AFLO
新潮文庫
ISBN978-4-16-771772-8 \543(税別)
人にとっての"戦争の世紀"は、犬たちにとってもまた同じ意味合いを持つ物だった。だが、人にとってのそれが多分に能動的な行為の結果であったとするならば、犬たちにとってのそれは、世紀に"戦争の"という言葉を付け加えてしまうことになった人間たちの、都合と思惑によって振り回される類のそれであったのだが…。
第二次大戦末期、キスカ島に置き去りにされた3頭の日本の軍用犬と1頭のアメリカの軍用犬。"戦争の世紀"の曙においてその有用性が着目され、慎重な交配と過酷な訓練の末に完成型に近づいていた4頭の犬たちを血統の諸元にした、数多の犬たちが関わり合う、戦争と人間の物語。
極めて独特なリズムを持った文体が心地よくもあり、どこか居心地の悪さも同時に感じさせる。史実と史実の裏にあるのではないかと思わせるものに対する推理、想像力と妄想力がごちゃ混ぜになったまま突っ走り、後先を考えずに全力疾走しては息切れを起こして立ち止まり、ゼエゼエと息を継ぎながら「イヌよ、イヌよ、お前たちはどこにいる?」とつぶやいてまた走り出す、ような物語。著者の脳内でどんどこ湧き出す脳内麻薬にあてられて、読んでるこっちは逆に、どこかで思わず一歩引いちゃうような本。なんかに似てるな、と思って思い当たったのがキユ先生の「ロケットでつきぬけろ!」だったってのはみんなには内緒だ。
帯に曰く、古川日出男が世界に投げつけた"爆弾"
、文庫版あとがきで著者曰く、想像力の圧縮された爆弾
、そういわれてもすでにとっくにトウの立ってしまったオッサンとしましては、ああそうですか爆弾ですか、とりあえず音はデカいですね、としかいいようもなく。若い人が読んだら何か違う印象を持たれるのかもしれないが、7時のニュースで普通にベトナム戦争の戦況が報道されてた頃ならいざ知らず、キスカだベトナムだアフガンだ、と今言われてもどうなんだろう、などと余計な心配もしてしまったりもする訳なんだが。
その独特なリズムはそれなりに新鮮で、結構楽しく読んでいけたのでそれほど文句はないんだけど、それでもなんて言うんだろう、あり得ない妄想を、物語の構成が納得できる形で格納している、ような、作家の技巧を楽しめなかったあたりはちょっと残念だったかな。カードをシャッフルしてるんだけど、最初のうちはちゃんと1枚ずつ交互に折りたたまれていたカードが、どこかで突然10枚ぐらいまとめてたたまれて、なおかつその反対側にあったカードが手元から飛び出してばらけちゃったような読後感、でいいですか? 技術を云々するような物語ではないのかもしれないけれど、気になってしまったものは仕方がない。
★★★☆
「図書館戦争」、「二十面相の娘」。図書をめぐるキナ臭い背景をそっちのけでコイバナ全開の「図書館戦争」、楽しめるんだけど一点だけ、柴崎が朝比奈君に向って「あなたは私の逆鱗に触れたのよ」って啖呵を切るシーン。カッコいいシーンなんだけど、「逆鱗に触れる」ってのは自分で自分の状態を表現するときに使っていい言葉なのかしら。基本的にこの言葉ってば、目上の人を怒らせたときの表現ですよね。柴崎さんてば、自分で自分は龍である、って思ってる人なのかしら。
まあそれも柴崎らしいといえば言えるんだけど。
「二十面相の娘」は最初の方で感じた、前の大戦の闇の部分を精算するために暗躍してる(た?)のが二十面相、ってあたりの想像はあながち間違いでもなかったのかな、と。いろんなものの展開が少々急ぎすぎなんじゃないかそれは、とも思うけど、ま、もうしばらくお付き合いしてもいいかな、ってところで。
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