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2008-06-16 [長年日記]

[Books] 半島を出よ (24:15)

半島を出よ 上(村上竜/著)半島を出よ 下(村上竜/著) 村上龍 著
カバーデザイン 鈴木成一デザイン室
幻冬舎文庫
ISBN978-4-344-41000-8 \724(税別)
ISBN978-4-344-41001-5 \762(税別)

2011年、経済力の低下とともに国際社会のお荷物になりつつある日本。経済状況の悪化は人心の荒廃を引き起こし、精神的な閉塞状況は奇行に走る若者たちと、すべてに絶望して自死を選ぶ中高年が引きも切らない状況に陥っているにも関わらず、政府は何ら有効な対策を打ち出せないままでいる。そんなとき、漁船に擬装した一隻の船が北朝鮮を出港し、日本の領海を目指す。その中には特殊部隊の精鋭9人の姿があった…。

あ、村上龍の小説読むのって初めてじゃん、オレ。サッカーを扱ったエッセイ本はずいぶん昔に読んだ憶えがあるんだけどね。

北朝鮮のコマンドが突如日本に潜入し、瞬く間に強固な橋頭堡を築き、って流れの本ってことだと、麻生幾氏の「宣戦布告」なんてのがあって、そちらもたいへんに読み応えのある本だったのだけど、向こうが一種のプロパーポリティカルサスペンス、みたいな意味合いを持った作品であったとしたら、こちらはエンタティンメントの姿を借りて、若い人たちへのメッセージを送るような作品になっていると思える。

通常、この手の小説では、普通はあり得ない出来事が、どういう理由と手練手管を駆使して実現し、展開し、どういう風に収束するのかを楽しむのが主眼になると思うのだが、で、本作もそこの所の描写にぬかりはないのだが、それはそれとして本作で村上龍が本当に言いたかったことというのは、(麻生幾がテーマとしていた)日本の危機管理体制の不備などに対する警鐘とかではなく、"少数派"に押し込められてしまった日本の若者に対しての、「縮こまるなよ、オマエらもっと自由にやっていいんだよ」という、エールなのではないかと思えてくる。

この作品で繰り返し出てくるのは"多数派"と"少数派"と言う言葉。多数派は数の力を頼みに一つの流れを作り、一度出来た流れに乗って行くことを至上の命題とし、多数であることの安全性を過信して流れが変わることはあり得ないと思い込み、その流れに要らぬ波紋を造り出しかねない者たちを頭から押さえ込もうとする傾向があるけれど、それが上手く行かなくなると、とたんにさまざまなことが硬直化してしまうんだが、そのようなときにも動き回れる余力を持っているのは少数派であって、国際社会の中で少数派扱いされていた北朝鮮がしかけた企みに、全く有効な手が打てないまま、状況をどんどん危機的な方向に流し行ってしまう多数派たちを尻目に、有効性を失った多数派の中で新たな多数派になった、北朝鮮からの勢力に対して、有効な一撃を加えることが出来るのは、それまで日本の中で多数派に押さえ込まれていた少数派であるところの、世が世であればバスジャックして一般客を無意味に刺殺しかねない問題児たちに代表される少数派の少年たちだった、という展開はいろんな意味で示唆に富む。

少数派に押し込まれることにもそれなりに理由はあるし、そこの所のすべてを、にわかに肯定は出来ないのだが、それでも怒りや絶望やかつえを直接ぶつけることが出来る連中に、オマエらがやってる、あるいはやってしまいたくて仕方がないそれらの物事は、実はそんなに外したことでもないのだよ、大事なのは少数派である君たちが立ち向かうべき多数派が何なのか、ってところを見極めることなんだよ、というメッセージがこめられた作品という気がする。村上龍のとても有名な作品、「13歳のハローワーク」に「爆発物の専門家」や「特殊な爬虫類のブリーダー」という職種があるのかどうか、わたしゃ読んでないので判らないんだけど、案外深いところでひっそりと、「半島を出よ」と「13歳のハローワーク」は繋がってるんじゃないかと思えてくる。それは本書を締めくくるセリフ、「それは、お前の自由だ」に集約されているのではないかな。

本についてのお話はこれぐらいで措くとして、

TSUTAYAってのはしばらく売れずに棚に晒されてた本を研磨しちゃうのかい? 今回読んだ本、上巻は平成19年8月刊の3版だったんだけどこれ、研磨されてるとしか思えない小口の指触り。しかもあんまり上手くない研磨っぷり。なにかい? TSUTAYAは1年ぐらい売れずに残ってた本は、新刊書なのに平気で研磨しちゃうような店なのかい? ふざけんなよコラ

とりあえずTSUTAYAで本を買うときは、レジに持って行く前に小口あたりに指を走らすクセが付きそうですわ。

★★★★


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