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アダム=トロイ・カストロ 著/小野田和子 訳
カバーイラスト Stephan Martiniere
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011800-6 \1100(税別)
その出自も定かではないが、今や人類をはるかに超える技術力と影響力を持つに至った集合人口知性体、<AIソース>。彼らによって建造されたシリンダー型宇宙ステーション、"111"。それは直径1000キロ、全長は10万キロに及ぶ想像を絶する巨大コロニー状の建造物。だが、111が通常のコロニー型構造物と大きく異なるのは、通常生活区域となるべき円筒の外辺周辺には様々な産業廃棄物などが遠心力によって押しつけられた、有毒ガスとヘドロの海と化しており、生物が暮らすことができるのはシリンダーの中央部に複雑に絡みついた、アッパーグロウスと呼ばれる植物の周辺のみ。そこに人類をはじめとしたいくつかの種族と、<AIソース>が造り出した生物たちがしがみつくように暮らしている。そんな111で一件の殺人事件が発生する。状況証拠は<AIソース>の関与を色濃く匂わせているのだが、彼らを敵に回すことなどどの星間航行種族も望んでいない。状況の打破のため、人類文明は捜査官としてアンドレア・コート参事官を111に派遣するのだが…
宇宙に浮かぶ人知を超えた巨大建造物、そこに生息する様々な異種族、とくればどうしても「リングワールド」あたりを連想してしまう。こちらの世界は例えるならば超巨大なスペース・コロニーのど真ん中に、インテグラル・ツリーが通ってるような世界。そこの所の世界や、そこに暮らす生命体たちの構築と描写はかなり念入りで、そこの所の書き込み具合なんかは、帯の惹句にもある「ハードSF」といえなくもない。でも本書はそちら方面にはあまり振れていなくて、そういった様々なハードSF的大道具、小道具は、あくまで作品世界を後ろから支える支柱的な役割を果たすに留まっていて、そうやって固められた世界で語られるのは、SFミステリ。
ちょっとワケありながら腕は確かな女性捜査官が、不可解な事件に立ち向かう、と言うのが基本ラインで、そこの所の謎の部分に、いろんなSF的なアイデアがちりばめられた作品、と言えるかな。で、そこの所の書き込みの念の入りっぷりがかなり濃厚で、何より物語としてかなり完成度が高い。ミステリとしての展開は、ある意味謎解きのための基本常識のどれかが該当するって感じで、ある意味犯人捜しは比較的容易な方と言えなくもないんだけど、お話を読んでいく上でのミスディレクションを誘わせるための材料に、いろいろとSF的アイデアが詰め込まれているあたりで、普通のミステリとはちょっと違った楽しみ方ができるようになっている。そこにプラス、主人公アンドレアの過去のエピソードや<AIソース>という、良く判らん存在が絡んでくることでSF的な方面のヒキにも抜かりはないぞ、と。
度肝を抜くようなワンダーは、ない。ただ、良く練られた職人芸を堪能できる、って所はかなりポイント高かったかな。少々地味だけど、楽しめました。
とはいえ突っ込みたいところも、ふたつばかりあるんだけどね。
その1・「すべからく」の使い方間違ってる。言葉は変わっていくものだから、いつかは「すべからく」ニアリ・イコール「すべて」の意で使われるようにあるのかもしれないけど、(webでの書き散らしとかはともかく)普通の出版社が不用意に、「すべて」側で使うのはどうかな、と思うな。
その2・最近のハヤカワさん、帯の惹句がJAROに通報したくなるレベルなのはどうしたことだ? 「栄光の<連邦>宙兵隊」の、押し寄せる敵種族、100万体
も大概だと思ったけど、本書の帯もミステリ仕立てで展開する傑作ハードSF巨編!
なんちゃって。違うよ、本書は「ハードSF仕立てで展開する傑作ミステリSF巨編!」だよ。「傑作」、「巨編」についてもまあ、評価は読んだ人によって分かれるところではあるだろうけど。
★★★☆
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昔からハヤカワの煽りでよく使われた「抱腹絶倒」というのもなかなか。
先ほど読み終えたハヤカワSFでは、「波乱万丈」でございました(w。