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サラ・A・ホイト 著/赤尾秀子 訳
カバーイラスト Sparth
カバーデザイン 鈴木大輔(ソウルデザイン)
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011801-3 \1100(税別)
地球を統べる統治評議会の重要メンバーを父に持つ跳ねっ返り娘、アテナ。跳ねっ返りとは言え、貴族としての務めも果たすべく父に同行して環地球ステーションへの訪問セレモニーを終え、地球に帰還する宇宙船の中で、彼女は何かが起こっていることに気がついた。絶対安全なはずの父のクルーザーの中で、何者かが彼女を拉致しようと動いているのだ。きわどいところで救命ポッドで脱出したアテナだったが、追っ手を振り切るために突入した危険宙域で彼女が遭遇したのは、かつて地球が大荒廃する原因を作ったと言われる人造生命体、ミュールが操ると言われる、伝説の"闇の船"だった…。
まあ言うてしまえば選ばれたベストカップル(女の方がややイニシアティブとってます)が、最初のギクシャク感を乗り越えて、最終的には辺りもはばからずキャッキャウフフするようになる話。そこにSF的な味付けとして、荒廃していく地球文明を救うための人工生命体やら、地球文明から離脱したちょいとユートピア風味のコロニーの異世界描写とかでお話を膨らませていくような小説。そういう話なんだ、というのは割と早い段階で割れるので、過大な期待をせずに読んでいけたのが良かったのか、逆に「おお、そういう捻りか」なんて部分もあったし、それなりにボリュームもある本なので、軽めでそこそこ時間を潰せるエンタティンメント作品としては、悪くない。特に中盤あたりのお話の持って行き方は、割とマキャフリィっぽいところがあってそれなりに読ませるし、全体的に訳者の赤尾秀子さんががんばったんだろうな、と思わせるウェン・スペンサーっぽい文体も、それはそれで楽しめる。
そんな感じで中盤まではそれなりに読めるんだけど、残りのページが少なくなっていくのに、お話の展開がなかなか動いてくれず、終盤に向けて「これ、ちゃんと終わるの?」的不安が頭をもたげてくるのがなんともはや。で、その不安がかなり的中してしまうあたりも、ちょっとね。まあそこまでの流れがそれほど悪くないと思える物だったので、個人的には苦笑混じりに「これはこれでまあいいか」って済ませることもできるんだけど、「なんだこれ」って思う読者さんも結構いるのかもしれないな(amazonでは結構酷評されてるようですな)。
どうだろ、マキャフリィの「フリーダムズ ほにゃらら」とか「ダミア…」で「これはダメだー」と思った方、あそこまでは行ってないのである意味その辺が分水嶺になるかも。「歌う船」のシリーズが大丈夫なら、まあそこそこ楽しめるんじゃないでしょうかね。
さてこいつも帯が「JAROに言うぞ」レベル。「波乱万丈の宇宙冒険SF」
……、全く違います。
★★★
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