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ディック・フランシス&フェリックス・フランシス 著/北野寿美枝 訳
カバーデザイン bookwall
カバー写真 PPS通信社
ハヤカワ文庫HM
ISBN978-4-15-070744-6 \1000(税別)
個人レベルとしてはそれなりに信頼を勝ちえているブックメイカーを営むネッド。いつものようにレース場で営業に精を出している彼の許に見知らぬ男が現れて、自分がネッドの父親であると名乗る。だがネッドの記憶の中では、父親は彼が一歳の時に自動車事故で死んだはずだった。だがいきなり現れて父を名乗るこの人物は、確かに親でなければ知り得ない事もいくつかは知っている様子。詳しい話を聞こうとしたネッドだったが、突然現れた暴漢と、彼が手にしていたナイフによってその目的は達せられないまま終わる。死んだはずの父の急な来訪の目的はなんだったのか、そして父はなぜ殺されなければならなかったのか…。
昔から「競馬シリーズ」のファンは、「競馬シリーズ」と(特に四半世紀ばかり昔の)日本での「競馬」のイメージ、というのは全く別物なんだ、何やらはまったら身を持ち崩してしまうような、ややマイナスイメージの強い、ギャンブル的な「競馬」ってのとは違う、騎士道精神的な物をまとった世界なんだ、なんて事を主張してきたわけで、で、それは確かにその通りで、ふた昔ばかり前の日本で意識された「競馬」と言うものとは全く違った世界がそこにはあったわけだけど、本書の舞台になっているのは、まさにその、昔の我々が「競馬」と直結するイメージとして捉えていた「賭け事」の分野。
競馬に限らずサッカー、F1、誰と誰がくっつくのか、ってゴシップに至るまで、なんでも賭け事の対象にしてしまう英国において、その賭け事の胴元になるのがブックメイカーと言うことになる訳で、で、そう言う存在であるから世間的には少々白い目で見られがちな立場に身を置く男が本作の主人公。父を知らないまま育ち、祖父の家業を継ぐ形でブックメイカーとなったネッドだったが、家業は必ずしも順調とは言えず、夫婦生活にも問題を抱えていて、やや自分の人生これで良いのか、と思い始めていたところに突然現れた死んだはずの父(しかも現れるなり本気で死別)という事件が、一人の男の人生にどういう波乱をもたらし、それを克服することで主人公はおのが人生に何を見いだしていくのか、が本書のテーマと言えるか。
自分なりに考える冒険小説の黄金パターンというのは、調子こいてた主人公がちょっとしたきっかけでドツボにはまり、そのドツボの環境下で苦闘していく中で真の自分の立ち位置を再発見し、そこに再び立つために最大級の戦いに立ち向かう、と言う物になっていて欲しいのだけど、そう言う意味では本作は、すでに少々ドツボ気味の状況にあった主人公が、これで良いのかなーなんて思ってる内にほんとにドツボな環境になってさあどうする、というちょっと捻った構成になってはいるんだが、どうだろうな、良いときとドツボな時の落差のギャップがそれほど大きくないものだから、ラストで得られる爽快感が実はそれほど大きくなかった、と言う恨みがあるかも知れない。まとまってはいるけど残念ながら、「うお、これはすごい」とまでは思えない作品として仕上がっている、と言うことでしょうかね。
いろいろ無くしちゃった人がそれを取り戻すお話、と捉えたら、これはこれで良いお話なのかも知れないけれども、どうだろう、取り得るオプションとその中からの選択、と言う関係性で見ていったなら、登場人物のふるまいに「なんでそっちに行くの?」と思えてしまうところも多々あってそのあたりは残念だったかも。
必要条件と言えるところはそれなりに押さえてはいるのだけれど、そうは言ってもそこは「競馬シリーズ」、残念ながら「もう一声」、と言いたくなるエピソード、ってのが正直なところかな。
★★★
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