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ジェフリー・ディーヴァー 著/池田真紀子 訳
カバー写真 大井成義
カバーデザイン 関口聖司(人形:「横浜人形の家」所蔵)
文春文庫
ISBN978-4-16-781201-0 \733(税別)
ISBN978-4-16-781202-7 \733(税別)
革新的なソフトウェアで財をなしたウィリアム・クロイトン一家を惨殺して逮捕されたグループのリーダー、ダニエル。彼には目を付けた相手を意のままに操る、カルト集団のリーダーにうってつけの素養が備わっていた。今は脱獄困難と言われる刑務所に収監されているダニエルに余罪の可能性が発生したことから、カリフォルニア州捜査局は、訊問の天才と言われるキャサリン・ダンスを彼の許に送り込む。相手の話し方や言葉遣いの語感の強弱、話をする時のボディ・ランゲージなどを総合して、相手が話していることが真実なのかどうかを見分けるキネシクス、と言われる捜査法の熟練者であるダンスは、ダニエルとの会話から新たな事件の可能性を嗅ぎ取るのだが…
ダニエルの新たな犯行計画を察知したダンスだったが、タッチの差でその犯行を阻止することは出来ず、まんまと脱獄に成功したダニエルと、彼を追うダンスたちの知力を尽くした追跡劇が展開する、というのがそれに続く。リンカーン・ライムが主人公の「ウォッチメイカー」にゲスト出演していたキャサリン・ダンスが主役を張るシリーズ第1作。
ライムが「物証」に徹底的にこだわって捜査を進めていく人だとすれば、ダンスは相手の「反応」を徹底的に分析して捜査を進めていくタイプ。この、「反応」を如何に理屈に沿って分析し、分類し、類推していく過程がしっかりと描かれていて、そこの所の読み味はかなりのもの。ライムものの最初の方を読んだ時とか、ディーヴァーならば「悪魔の涙」の、理詰めで押していく面白さがたっぷり詰っている。
そこのところの、いわゆるディーヴァー的な「トゥイスト」の面白さももちろんあるんだが、本作はそれに加えて、登場人物達が、己がおかれた境遇を、発生した事件を契機に見直し、それぞれの立場なりに新しい立ち位置を見いだそうともがく姿が描かれていて、そこの所が昨今のリンカーン・ライムもので失われてしまった部分を改めて見直しているような感があり、ディーヴァー的な「捻り」の技量以上に、ディーヴァーなりに人間ドラマを描こうとする努力のような部分が前に来ている感じがあり、そこにとても良い印象を持った。
ともすればためにする「捻り」、的な構成が少々前に出すぎている嫌いがあった最近のライムものに比べて、新シリーズであるから敢えてそこを少しばかり犠牲にして、かわりに人としてのドラマを描く方に筆を割いても読者の方も納得してもらえる、と言う判断が著者にあったのかも知れないが、結果的に本作は、徒に見せ場を重視することなく、いい具合に抑制の効いた作品に仕上がっていると思う。で、それはかなり心地よい。
一方でディーヴァーお得意の「トゥイスト」をいい具合にちりばめ、もう一方で「カルト」をベースにして自らの立ち位置のようなものを見直そうと人々の姿を描く本作、なかなか良い按配に仕上がっているんじゃないだろうか。ライムものの方が最近少々失速気味と思えることもあり、こちらはかなり新鮮な気分で読めた。作者なりの原点回帰的一作で、満足度はかなり高かったです。
★★★★
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