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もちっと失敗ネタ。吉田俊雄「作戦参謀とは何か 海軍最高幕僚の秘密」(光文社NF文庫 書影はamazon)。著者、吉田俊雄氏には1984年に「四人の連合艦隊司令長官」という著作もあり、そちらは読んだ憶えがある。本作はそちらと対になるような、長官たちを支えた参謀達のかつての戦争における動きを追った本。取り上げられるのは伊藤整一、中沢佑、富岡定俊、福留繁、宇垣纏の四人。
基本的なラインとしては(陸軍に比べれば、という条件付きにせよ)理知的であり、先取の志向に富んでいたと思われる日本海軍の軍人達でありながら、先の戦争ではなぜ有効な方策をとれなかったのか、さらに言うならそもそも勝ち目の薄い戦争をなぜ止められなかったのか、というあたりを、対馬海戦の勝利からの戦訓のみを絶対のものとし、情報を軽視し、第1次大戦、さらには自らが切り拓いたはずの航空戦力を中心とした海戦への思考の切り替えが全く出来なかったところにあった、というのはまあ、前に読んでた「小失敗」シリーズとも通じるものがあるかも知れない。
そんな中、興味深かったのは二人目に上げられた軍令部作戦部長、中沢佑のエピソード。思考停止の傾向にあった日本軍においても、情報の重要性を正確に把握していた人物がいた、というのは収穫だったかも。計画段階の「大和」級戦艦に、今後は空母機動部隊との連携行動が必須であるところから、30ノット以上の速度を要求していた、なんて話は初めて知ったので大変印象的だった。旧軍にもそういう思考が出来る人がいたんだね。
んまあそういう人が何人かいても、そういった人材を活かす事が出来ないくらい硬直してしまった組織のまま、臨機応変な対応が必要なイベントに突入してしまったところに、あの戦争の悲劇性があった、とも言えるんだろうけど。
もう一つ。先に「四人の連合艦隊司令長官」を上げたけど、そちらに比べて著者、吉田氏の文体がかなり変わっていてそっちの方がむしろびっくりだったかな。なんというか、大変リズミカルな、読みやすい文章を書く方になっていて、結構びっくりしたんでした。
読みやすさ、ってところは良いと思うんだけど、どうだろうなあ、そこで「軽くなっちゃった」と思ってしまうところもあっていろいろ微妙ね。
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