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S・J・モーデン 著/金子浩 訳
カバーイラスト Shinnichi Chiba
カバーデザイン 早川書房デザイン室
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-012226-3 \1200(税別)
とあるベンチャーが立ち上げた火星開発基地建設プロジェクト。その肝になるのは基地建設のための人件費削減のため、その初期段階の作業員を専門の訓練を積んだプロではなく、それぞれの職種においてそこそこ経験を積み、かつ現状何かの犯罪を犯して収監されている囚人に担当させることで使おう、というものだった。息子を薬物中毒者にしてしまった相手を射殺して長期の懲役刑に服していたフランクにもその話がやって来た。生きている間にかつての家族との再会の可能性があるところに賭けたフランクは、その申し出を受け入れたのだったが…
「火星の人」がちゃんと訓練を積んだ、あきらめの悪いポジティブ野郎の物語だったとしたら、こちらは訓練も適当、基本的に単能の人びとがやむにやまれぬ事情で火星に放り出されたらどうなるか、みたいな。そして謎の事故で一人、また一人と死んでいくクルー。一体何が起こっているのか、と言う展開。
訳者あとがきでも「火星の人」のヒットに乗っかった企画もの、みたいな乗りが発端だったらしい(著者のモーデンさんはそれなりにキャリアのある方なんだそうで)から、ある程度先行作品のノリを受けた話になるのはやむを得ないところなんだろう。そういう制限がある、って前提で読めばこれはこれで結構頑張っている、と言えるかも知れない。(使い捨てできる)囚人たちを作業の序盤に使うことでコスパを上げようとする企業論理とか、そんな中で自分にとっては勝手知ったる分野でそれなりの成果を上げて頑張ってる人間たちのドラマ、ってあたりはちょっとだけ面白い(ちょっとだけなのは主人公のフランク以外のスキルがいまいち見えないから)。
なので本書、前半はそこそこ面白い、と言えないこともない。「火星の人」とはまたちょっと違ったアプローチでのサバイバルのディティールとかは、悪くない。建築を生業としていたフランクは、その経験上セフティ・マージンを取っておくことが結局作業をスムースに進める事ができる事をわかっていて、それを企業側の管理者にも進言するのだが、見た目のコスト重視に重きを置く会社側にそれは受け入れられず、なんて流れは「火星の人」とは正反対の展開でそのあたりは面白い。総じて前半は結構楽しく読んでいける。
んだけどお話が死亡事故と思われていたものが何者かによる殺人なのではないか、という疑問が芽生え、犯人捜しのミステリが本格的になってくると、残念ながらお話の面白さはかなり落ちてしまう。幾つか理由はあるけど、最大の理由はミステリとしての深みがない、ってところに尽きるんじゃないかな。ちょっとネタバレになるかも知れないですけど…、
ある程度お話を読む経験積んでたら、登場人物が出そろったあたりで読者の方でも「あ、こいつ怪しいヤツ」って目星を付けるものだと思うのね。で、作者はそれをどう裏切ってお話を進めるか、が腕の見せ所だと思うんだけど、残念ながら本作、読者の予想を裏切ってくれないんですわ(w。たとえばこれまで読んできたフランクの物語が、実は彼の主観で見た「お話」で真実のお話は…、とか、いくらでもやりようがあったと思うんだけどな。出だしがちょっと期待しただけに、読み終わったらいろいろ物足りなさを感じてしまう一作でしたね。
★★★
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