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その5、最終パートは「晩春」(1949)と「お茶漬の味」(1952)。今回は娘が嫁に行く率50%。嫁に行くのは「晩春」の方。
五十を超えた大学教員の曾宮周吉(笠智衆)とその娘、紀子(原節子)。周囲のヤキモキをよそに、一向に嫁に行こうともせず父との静かな暮らしを楽しむ娘。周吉もいくばくかの罪悪感を感じつつも、そんな暮らしを楽しんでいるのだが、周りからのお節介な後押しに負け、おそるおそる紀子にお見合いを勧めるのだが…
前にも書いたけど原節子ってちょっと苦手。笑顔が気持ち悪い。こう、腕の悪いデザイナーがモーションつけたCG役者が笑ってるみたいでね(ファンの方、すいません)。ただ、この映画ではそのCGスマイルが猛烈に効果的だった。いや、スマイルがいいというわけじゃなくて、序盤はスマイルの連発だった原節子なんだけど、お話の転回点でその表情をさっと変えるわけです。猜疑と嫉妬を秘めたシリアス顔に。で、こっちの表情の怖さ、その表情に顔を変えていくその芝居のうまさ、これは確かに大女優だと思った。女性がほんのわずか表情を変える、その瞬間にぞくっと来たのは初めてだ。すげえや。ついでに笠智衆も、ただの棒読みじいさんじゃないところを見せてくれる。そう、嫉妬に燃える原節子は気づかないが、スクリーン越しに見ている観客には、「あ、あなたそのセリフはウソですね」というのを、ホンの一瞬の顔の引きつりで演じてみせる。わーお。
それにしてもこれはエロい映画だ。なにせテーマはファザコン行き遅れ娘の嫁入り話なわけで、この時点でこの映画、いつもの小津スタイルをきっちり守っていながら、その奥底にどうしようもないエロっぽさが潜んでしまうわけだが、終盤、自分が「再婚する」とウソをついて娘を送り出したことを、娘の親友・月丘夢路に打ち明けて、彼女にお褒めのキッスをもらった笠智衆が「遊びに来てくれよ」と繰り返し月丘に向かってつぶやくとこなんざ、もう、エロいったらありゃしない。裸が出なくてもエロいもんはエロい。原節子が出てる小津映画では、一番気に入ったかも。
「晩春」がファザコン娘のお話なら、こっちは熟年夫婦のすれ違いと和解がテーマ。機械会社の部長、佐分利信と木暮実千代の夫婦。社会的にも経済的にも不満はないが、田舎生まれで朴訥過ぎる夫と、都会風の行動的な妻の間には何かしっくり来ない物がある。常に攻撃的になってしまう妻とそれをのらりくらりと受け流す夫。わずかだったしこりは、姪・津島恵子のお見合いすっぽかし事件に佐分利が付き合わされていたことが知れてちょっとした騒動に発展して…
鶴田浩二の青二才ぶりが最高に笑える。全然似合ってないヘアスタイルに軟派な物言い。こんな時代もあったのね。
都会派な妻、木暮の個室が、その他は純和風な邸宅なのにもかかわらず、そこだけ妙にとってつけた感炸裂って感じのおとめちっく洋風な部屋になってる、そのミスマッチも面白い。障子と畳で構成された家の中で、あのドアを開けた瞬間パステルピンクと妙なベニヤ板感の空間にワープしてしまうんだろうなあ。女中に向かって自分の妻を「奥さんは?」などと呼ぶ、佐分利の、のそっとした感じもいい。
ちっちゃなすれ違いの積み重ねが爆発してしまうのが、「奥さん」の前では控えていたネコマンマをうっかりやっちゃった佐分利に木暮がついに切れちゃう、ってシーンで、そののち、この二人が和解するときに使われるのが、女中たちも寝静まったあと、夫婦がこっそりと台所に忍び込んで材料を持ち出し、二人で作るお茶漬けだった、ってあたりでタイトルが意味を持つ。佐分利はネコマンマが大好き、木暮は大嫌い。でもネコマンマじゃなくお茶漬けなら、二人でおいしくいただけるよね、夫婦ってそういうもんだよね、と妙にキレイにまとまってます(w。
コミカルな仕掛けが随所に仕込まれてて楽しめる逸品。ちょい役で後の裕次郎の奥様も顔を出している。
ということで「小津安二郎の芸術」は終了。いやあ、楽しい映画をたくさん見させていただきました。
みなさまいろいろツッコミありがとうございました。やはり基本的に自宅からの通学の場合は、(下宿生で言うところの『仕送り』の同等品として)小遣いはやっとくべき物なんでしょうかねえ。カミさんは「弁当作っちゃろかな」とか言ってるけど、それも若人的にどうだろねえと思ったり。
オレは寮暮らしで安く上がるのと、育英会の奨学金がもらえることになった時点で、原則仕送りなし、でやってた(が、奨学金は一ヶ月分の麻雀の負けに消えていた→バイトせなしゃーない→学校行かれへん→単位足りませんよ、の悪循環)せいか、大学生になったら小遣いは自分で何とかするもんじゃろ、と思ってたんだけど、そういうもんでもないか。学業おろそかにしまくってたのは確かな話ですわな。
家から出てもらう件は、初年度で何かと金がかかるので、一年目からの下宿暮らしの話は消えたんだけど、ここらはまあ少し様子を見て。家から放り出したら何となく金送るのに抵抗感じなくなるかも知れないな。もちろんバイトも併用して欲しいけど……ってあいつにできるバイトがあるとは思えんな、というのが、両親の共通見解だったりするのだが。
それはそれとして、実はバイトって面白いんだよね。学生時代、たぶん50種類ぐらいはバイトやったと思うけど、んでしんどい仕事もあったけど、教室にいてるよりバイトしてる方が全然面白かったもんなあ。
それで留年してたら世話はないので、まあそこらはキミ、是々非々で、一つ>倅
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自分は大学にはいってないのでどうかわからんですが、高校卒業してからひたすら働いておりますた。最初の給料日なんて高校卒業して初めての経済観念ゼロな若造なもんであっというまにというかなんか慎ましく<br>次の給料まで使ってたような。でもやっぱ男だったら20超えたら独り立ちというか独りで生活してみるのもいいんでないかとふと思った次第。
そですね。独り暮らし、というかそろそろ親元を離れるいい機会なんだろうなあと思います。でもまだお子ちゃまだしなあ、などと昔の自分を棚に上げて思ったりもするわけですが(^^;)