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田中哲弥 著
カバーイラスト 笹井一個
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫JA
ISBN4-15-030845-4 \620(税別)
よく考えたら宅配便ドライバーなんかじゃないのは一目稜線のはずだった。2メートルを超える筋骨隆々の大男、しかも着ているのはアロハシャツ。だが、おかしいと思う暇もなく男は守にひとつの荷物を渡し、「後は頼んだ」と言い残して忽然と姿を消してしまう。あとに残ったのはどこから見ても千両箱にしか見えない箱がひとつ。中に入っていたのは当然小判。ただ、どうやらこの千両箱には999枚の小判しか入っていないようだった……。
'90年代にごくわずかの作品を発表したあと、長く休眠状態にある著者の最後の著作の復刊。
前に北野勇作さんの一連の作品を読んだときに、「気持ちはすごく分かるんだけど、分かるが故にどうにも落ち着かない」、なんてな感想を上げた様な憶えがある。それは自分に近い世代の人が自分に近い趣味の分野について語るときに起きる、「やっぱりそうしちゃうよね」的「分かる」感じが良い方にも悪い方にも働いてしまって困ったな、ってコトだと思うんだけれど、この本も読み始めはそんな感じがある。こちらは趣味的な部分よりも地域的な「あーはいはい」的感覚、って違いはあるのだけれど。
頭に"不思議"をくっつけた、それぞれタウン・ストーリー、学園もの、時代劇、近未来ハードボイルド、そしてむりやり分類するならもう一度タウン・ストーリーに戻ってくる五つの短篇で構成された本書に色濃く漂ってるのは"関西ノリ"。わたしゃネイティヴ関西人じゃないんだけどそれなりにこちらでの暮らしは長いので、やはりこの"関西系"シチュエーションの連発には「あるある」と思いつつも「そないに無茶な展開にせんでも」とも思いながら読み進んでいくことになったんだった。で、途中までは、というかラストの「千両は続くよどこまでも」(またベタなタイトルですな)まで読み進んでいく間は、んまあそれなりに会話やシチュエーションの面白さでふふふんと楽しみつつも正直「案外大したことねえなあ」なんて思っちゃったんだけど、んむ、最終話はかなり驚かせてくれる。
そこまで適当に、というか考え無しに(としか思えない)ばらまかれてきたネタの数々が、次々に収まるべきところに嵌っていき、最終的に一冊を通して見直してみてみると、ちゃんとした時間SFとして成立しちゃっているってあたりは驚くべき物がある。このショックのためには、「なんだかなー」テイストに満ちたそれまでの4編は決して外せない下準備であった訳なのだよね、いやお見事。ごくわずかですがじわっと来ました(^^;)。
田中哲弥さんって方を全然知らなかったので、コイツはなかなかの儲け物であった。最終話につながる4編の展開とかに、やっぱり少々収まりの悪さは感じるのだけれど、最終話のたたみ方がすばらしい。なかなか、ええもん読ませていただきました。
あ、あと本書に直接関係があるわけではないのだけれど、大森パパの解説は本文読む前に見ちゃいかんタイプの文章だとは思った。ノリノリで楽しいんだけど、いろいろ本書の楽しみを削いじゃう部分もあるので、本体読んでから目を通しましょうね。
(★★★☆)
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