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2006-05-11 [長年日記]

[Books] コラプシウム (23:19)

4150115540
ウィル・マッカーシィ 著/嶋田洋一 訳
カバーイラスト 鷲尾直広
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011554-0 \1000(税別)

全民衆の重荷や責任をまとめて背負ってくれる存在として、世界の総意の元に選出された"人類の王"。その初代の玉座に就いたのは、わずか15歳のトンガ王国の王女タムラ。その後に起こった科学技術における三つの大躍進は、彼女を不死の世界の永遠の処女王という希有な存在にまで押し上げてしまうことになる。その三つの躍進とは、あらゆる物に可塑可能なナノテク素材"ウェルストーン"、あらゆる物を転送、複製、修復可能な"ファクシミリ"、そしてマイクロ・ブラックホールを格子状に配置させることで誕生する超光速伝導物質"コラプシウム"。不死の世界が実現したその世界で、コラプシウムの生みの親であり、ソル女王国最高の頭脳といわれる科学者、ブルーノの元にタムラ女王からの使節が到着するところから、ソル女王国を揺るがしかねない事件の幕が上がるのだった…。

そりゃ確かにわたしゃ木嶋俊さんのカバーは個人的にちょっとなあなどと失礼千万なことを申し上げましたよ。だからってこのカバーは…… オレに対する嫌がらせなんですかね(思い上がるな)。

まあそれはそれ、ってことで読んでいったわけだけど、途中までは「おっかしいなあ、どんなに拡大解釈してもカバーのおにゃにょこがタムラ女王には思えないよなあ」って気分が募るばかり。大きく三部構成になっている本書の二部に入ったところでようやく「ああ、そういうことかぁ」というのが分かり、ついでにそれまで意味不明だったカバー裏の惹句も理解できたわけですが、その売り方はどーなんだ早川書房(^^;)。

その辺を気にしなければ、「ハードSF」を謳っている割には脳味噌腐りかけの私にも充分楽しめるし、そこここに「ああ、そういうアイデアがあるのか」ってなちょっとした驚きも用意されてて悪くない。科学が超絶的に発達した世界では、飲み過ぎて気分悪くなってゲロをグラスに戻したら、たちまちナノテクが働いて今戻したゲロがおいしそうなビールに変わってしまう、というのはすんげーお得なような、でも絶対それ飲みたくないよな(ゲロ話好きやなあ、あんた)、などと要らんところで歪んだワンダーも感じましたよ。

全体にハードSFにありがちな、頭の悪いヤツをどんどん置き去りにしていく感じってのは控えめで、あくまでスペック的なお話での嬉しそうな解説が続くので、オレのレベルでも分からんなりに凄いんだろうなあ、と思うぐらいでそれほどつっかえることもなく読み進んでいける。これにお話そのものの展開ぶりとかが、妙に既視感のあるそれだから余計に快調。なんなんだろうなあと思いながら終盤まで読んでいって、ようやく正体に気がついた。

これ、ハードSFの皮をかぶった「スカイラーク・デュケーヌ」なんだね。売れっ子科学者(©いしかわじゅん)の地位を争う二人の科学者が時に敵対、時に協力して難事件にあたる、つー構図、どんなピンチにも主人公は「ああもうだめだ……待てよ(ぴきーん)……そうかッ!」で片っ端から難問解決、ってな展開。いやあ懐かしい、今時こんな展開、恥ずかしくってやれねーだろ普通と思えることを平気でやってくれるもんだから、読んでるこっちも途中から妙にニヤニヤしながらページをめくってた。

コラプシウムをはじめとする技術なり理論なり、著者のウィル君(タメ口かよ)はそれなりに真面目に考えている(からこそお話に面白さを加えているわけだが)らしいけど、そんなコトより、とんがってるようで実は妙に懐かしくって笑っちゃうミスマッチ感覚がこの本の魅力のような気がするね。

(★★★)


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