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「コードギアス 反逆のルルーシュ」、「銀色のオリンシス」。「ギアス」は、ま た 総 集 編 か ……ってあれっ、総集編は初めてか。プロデューサーがプロデューサーだけにここまでしょっちゅうやってたような気になっちまったぜ。
「オリンシス」は、毎度ながら絵を何とかしてくれー、というところで。
瀬名秀明 著
カバー装画 杉田比呂美
新潮文庫
ISBN4-10-121433-6 \819(税別)
学校の校門を出て右に曲がる。それがいつもの僕の行動。では左に向かったらそこに何があるのだろう。考えたこともなかったけれどある日、それが気になってしかたがなくなった。小学校最後の夏休みが始まるその日、校門を出て左に向かった僕を待っていたのは、一棟の博物館……
「パラサイト・イヴ」「BRAIN VALLEY」に続く瀬名秀明氏の長編第3作。ざっとしたあらすじを見る限りでは、なにやらとってもリリカルなジュブナイル風味も感じられるのだが、正体は割と一筋縄ではいかない構成になっている。先に書いたジュヴナイル風味の部分の他に、19世紀のエジプトで発掘作業を行うフランス人、マリエットの物語と、これらすべての"物語"を統括する"作家"である"私"の物語が有機的に影響し合った一種のメタ・フィクション、と言うような構成を取っている、と言えるか。"物語"とは何なのかを模索する小説家、発掘作業に一抹の不可解さがぬぐい去れない考古学者、そして自分のどこかに割り切れなさを捨てきれない少年(=作家な訳だが)のもやもやが絡み合い、複雑に影響を与えあってひとつの物語をくみ上げていく。
単純にリリカルなジュヴナイルとして片付けられない複雑さを持った作品で、ジュヴナイルのツボを押さえてくれてないからダメだ、みたいな批判はもとより当たらない作品だと思うし、実際ここで著者が展開している、"物語に対する思想と方法"みたいな物に関する考察には、それなりに頷ける物は無しとしない。というかかなり良いとこまで突っ込んでるんじゃないだろうかと実際思うのですよ。一方で博物館と展覧会に関するトリヴィアルな知識の開陳という、読むことの楽しみを提供しつつ、もう一方で、読んでる物語の主役は誰なのさ的な部分へのツッコミも油断無く、こちらの期待を微妙に外しながら、それでも続きが気になる小説として立派に成立していると思う。かなり、上手いのだ、お話の持って行き方が。
そのうえで、ご本人が割と嫌っている"理系の"作家というレッテル貼りが、故無き物でもないよなあと思えてしまうあたりに、瀬名秀明という作家が超えなくちゃいけない壁が見えてるんじゃないかなあと(偉そうに)思ったりもして。
かなり良い出来の小説だと思うのだけれど、やはりこう、理系ならではの"そこだけは言っておかんと安心できん"的に書きすぎた部分があるような気がして、そこがちょっと残念かな。あと、恋愛成分の捌き具合にもうひと味欲しかった、ってところもあるだろうか。売る側の勘違いとかで結構損してる(帯の惹句はスカだよね)ところもあるとは思うけど、それ以上に作家の、力の入れどころと抜きどころにもう一声、考えが欲しかったような気がする。惜しい。傑作になり損ねてると思った。
(★★★)
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