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結構長かったりして。ようやく、こんどこそ、一段落。たぶん。
普段Opera使ってるんで、コンテンツに「戻る」がなくても不便を感じることがないものだから、もらったデザインファイルに「戻る」がないことをこれっぽっちも疑問に思わずがりがりコーディングして、終盤になって「全ページに『戻る』付けといてくださいよ」とか言われてうろたえた(w。
ナビゲーションをデザインしたのはオレじゃないもん。オレ悪くないもん。
ディック・フランシス 著/菊池光 訳
カバーフォーマット 辰巳四郎
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
カバー写真 Royality-Free
ハヤカワ文庫HM
ISBN4-15-070740-5 \740
技量も勇気も卓越した騎手だった。その上私にとっては、数少ない心を許せる友でもあった。だが彼、マーティン・ステュークリイは後続に七馬身の差を付けて悠々とゴールに向かっていたはずの最後の障害で、ほんのわずか足をもつれさせ、転倒した馬の下敷きになって死んだ。愕然とする私の元に、彼の介添人が生前の彼から預かっていたというひとつの包みが手渡される。なかには特に変哲もないように思えるビデオテープ。だが、その包みを持って自分の仕事場であるガラス工房に戻り、2000年へのカウントダウンをぼんやりと見ているときに、事件は起こった…。
競馬シリーズにはシリーズ名の通り競馬の関係者が主人公となるタイプと、自分は直接競馬をするわけではないけれど、いろいろな形でそれに係わる人物が主人公になるタイプがあるけど、本作は後者。主人公ジェラード・ローガンは若いが優れたガラス職人(工芸家、と言った方が良いのかな)。自分の作るガラス製品が縁で競馬関係者と懇意になり、その関係者を通じて事件に巻き込まれる。巻き込まれる事件にも競馬に直接関係のあるタイプと、そうでないものがある訳だが、これは後者。と言うわけでシリーズ中でも、かなり競馬との関係性が薄めな一作であるとは言える。
もちろん、だから面白くないなんて事はなく、競馬に関するさまざまな話題に換わって、本書ではジェラードが係わるガラス製品作りに関するさまざまな蘊蓄が語られ、それと並行するようにひとつの事件が進展し、事件のクライマックスでは主人公の職業もまた重要な意味合いで関わり、大団円を迎えるというしかけ。まことに手馴れた構成で、安心して楽しめる一作にはなっている。なってはいるが少々物足りない、と感じるのも事実、かな。
手堅い造りの一作ではあるのだが、少々手馴れすぎて深みがない、と言う恨みはあるような気がする。先日、初期の競馬シリーズを何冊か読んでみたんだけど、いろいろアラもあるけどやはり「度胸」や「混戦」あたりにあった、荒削りだけど読む方を引きつけて離さない引力、みたいなものが最近の競馬シリーズには少々希薄かなあという気がする。ある意味それが円熟というものなのかも知れないけど。
ま、そんなことはいったん措いといて、いろんな意味で重要な本なのだよねこれは。まずは本書の完成後、フランシスは愛妻を亡くしている。かなりのダメージだったらしく、一時は断筆宣言とも取れるようなコメントを出していたらしいが、本書の出版から6年、ついに競馬シリーズは40作目の新作を迎えることになった。このタイミングでの文庫化は、当然ここに合わせてのことなのだろう。もちろんそこには異存はありません。
もう一点、こちらは日本の読者にとってはさらに重要かも知れないが、本書は菊池光氏のおそらく最後の翻訳作品。当のフランシスが氏の訃報に際しては特別に追悼のコメントを寄せたそうだが、さもありなん。菊池訳なくしてこのシリーズが日本に定着したとはとても思えない。競馬シリーズだけじゃなくスペンサーやリュウ・アーチャーもの、「鷲は舞い降りた」、ギャビン・ライアルにジョン・ボールにトレヴァニアン。菊池さんの独特な訳で楽しみ倍増だった本が一体何冊あったことか。そんな菊池光的超訳、ラストを飾ったのは本書、"ドム・ペリニヨン"であろうか。さすがにドンペリは高くて手を出せませんが、代わりの安酒をグラスに注ぎ、今一度しみじみと感謝を。ありがとうございました。
(★★★★)←一個は菊池さんのために
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