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ロバート・ゴダード 著/越前敏弥 訳
カバーデザイン 斎藤充弘
カバー写真 David Sanger/Getty Images
講談社文庫
ISBN978-4-06-276116-1 \876(税別)
ISBN978-4-06-276117-8 \876(税別)
天寿を全うした母の葬儀や諸々の事務的な処理などのため、久しぶりに英国を訪れたハリー。妻を先にカナダに帰し、荷物の始末のために母の家に戻ったハリーが目にしたのは、母の家の玄関前にたたずむ、自分と同じくらいの年格好の男二人。彼らが誰であるのかに気づくのに、少しだけ時間が必要だった。50年前、まだ空軍の兵士だったハリーがとある作戦に従事したときの同僚だった彼ら。二人はその作戦の関係者のために企画された同窓会にハリーを招待するために、母の家を訪ねてきていたのだ。50年ぶりの集まりの招待に、軽い気持ちで応じたハリーだったが、その選択がとんでもなく間違った方向だったことを知るのにそれほどの時間は必要としなかった…。
「蒼穹のかなたへ」、「日輪の果て」で主役を張ったダメ中年、ハリー・バーネット三度目のご奉公。「蒼穹のかなたへ」は正真正銘の傑作。「日輪の果て」はまあなんだ、まあまあ良作。で、本作は、あまりに普通、ってのが印象ということになるだろうか。特に読み始めのヒキの弱さは致命的で、オレはゴダードの本が読みたくて買ったのに、これじゃ駅の売店で売ってる新書版ミステリでしかないじゃないの、ってな気分になってしまった。さすがにゴダードなんで、そのままずるずるとがっかりな方向に流れてしまうことだけはかろうじて回避できてて、ぶっちゃけた話、上巻の3分の2ぐらいを我慢できたら、あとはまあまあ楽しめるかな、と言うところではある。最終的にはつまらなくはない本、だったと思うけれど、ゴダードでそれではあまりに不満たらたらになってしまうわけで。
ゴダードといえば底意地の悪さ。作家が繰り出すシークエンスやシチュエーションに対して、読者側が「それはこういうことか」的予想を次から次へと裏切って、つねに読者の予想の上をいくどんでん返しを用意してくれてるところが魅力の一つであると思うんだが、どうも最近のゴダード作品には、そのあたりの底意地の悪さが少々稀薄なのではないかと思ってしまう。
もう一点、気になるのは文体の軽さ。ゴダード初期の名作、「千尋の闇」や「蒼穹のかなたへ」、「リオノーラの肖像」、それからわたくしがゴダードの最高傑作だと思う「一瞬の光のなかで」なんかでの、ねっとり来るような、なかなか次のページを繰るところまで行けない重厚な感じの文体が最近の作品からは感じられないような気がしてそこも少々不満。ページを繰るのももどかしい、ってのも良い小説の魅力としてあると思うけど、何かが気になって、安直に次のページに進めないような緊張感を読み手に強要するような文章の力ってのも、良い小説の魅力としてアリだと思うわけで、で、ゴダード作品に期待するのは間違いなく後者。ゴダードを読むってのは、ヘビー級の打ち合い的な読書体験を期待してると思うのだけれど、そこが全然満たされなかったような気がしてかなり残念。
ゴダードには打ちのめされたいと思ってるのだよね。「ははん、面白いね」で済むような本をゴダード名義で出されてもうれしくも何ともない。
★★☆
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