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当然読んどくべきなのになぜか読んでない本、ってのは人それぞれ、いろいろあるだろうけど「銀河英雄伝説」は自分にとってそんな作品のひとつだったかも知れない。こう言うのはきっかけを逃すと案外後を引くモンなのだな。
本作品がスタートしたときになんで手を出さなかったのか、今となっては記憶があやふやなんだけど、「銀河」で「英雄」で「伝説」という、バラすとなんだかうさんくさい単語が三つ並んだタイトルに警戒感を持ったのか、当時多分、故祝一平氏だったと思うんだが、彼が「銀英伝は読者の知的レベルを不当に低く設定している」みたいな批判をどこかで(『電脳倶楽部』だったかねえ)書いてらっしゃったのを読んだような憶えがあって、その辺で微妙に食指の動きに制限がかかってしまったのかも知れない。
そんなこんなで20年。先日買い取らせていただいた本たちの中に、ひと揃い見つけて何やら感慨深いものを感じて読ませていただきました。買取交渉成立前から(w。今回読んだのは90年代に刊行された徳間書店版。ここ一週間ぐらい、晩飯後に読書読書。
なるほど、確かに面白いわこれ。ここまでの人類の歴史で記録されてきた様々な(陸上における)戦いを、そこに参加した一人の兵士を、この作品では一隻の宇宙船に置き換えて再現することでいくつかの見せ場を演出しつつ、明晰な独裁政治と暗愚な議会政治、どっちが良いんだろうね? ってあたりに史学的な知識をどんどこ動員しながら考察して見せた物語、と言えるのかな。
これは作家の方向性のようなものに大きく左右されるんだろうけれど、物語の骨格を考えたときに、「世界」と「個人」のどちらにより多く視線を注ぐかによって、「サーガ」の行く先は変わっていくものなのだろうな。「世界」に目がいけばそこに終わりは明確に設定されるわけだし、「個人」に目がいけば世界と書き割りである様々なキャラクターには、その都度作者の都合でどんどん改編が加えられる、と。や、何か特定の100冊を超える長大な大河ロマンを引き合いに出してるわけじゃあないですよ、主催者側発表としては。
そこに微妙に鼻につくものを感じるか、作家性の一端として受け入れるかは読む人次第だとは思うけど、わたしゃ鼻がむずむずしつつもこれはさすがに面白い作品だよなあ、と改めて思ったことでした。
個人的には、なぜに帝国側の登場人物が妙に時代錯誤なプロイセン的氏姓の命名規則に則っているのか、について一応理由があったと言うことが分ってちょっと胸のつかえが下りた気分。セコい話だけどね。
あ、個人的には派手な見せ場が用意されてるクライマックスの前後のお話が面白いと思いました。6、7巻あたりがかなりいいよね。
水鏡子さんの「みだれめも・196」(THATTA ONLINE)。ちょっと長いんですが引用します。
3千冊、あるいは5千冊くらいなら、こんなものでもまあ許される。
けれどもひとりの人間の趣味で揃えた本として、2万冊のオーダーで揃えるのなら正直バランスが悪い。あるべき本で欠けてるものがありすぎる。国書刊行会や白水社、思潮社その他の格調高いハードカバーの惨たることがいちばん大きなりゆうだろうけど、たとえばレベルの低い最近のラノベや児童ファンタジイが並んでいながら「ロードス島」や「ハリーポッター」なんかがないというのもじつはだめなのではないかとか思う。漱石や鴎外、ドストエフスキーやカフカなんかは、全部はともかく代表的なところくらいは片隅にこそっと並んでなければいけないのではと思う。そういう抑えがあってこそ、石川淳も泉鏡花の全集類にも箔がつく気がする。志賀直哉やトルストイはなくてもいい。宮部みゆきや池波正太郎はそこそこ揃ってなければならない。松本清張、司馬遼太郎は特になくてもかまわない。などなどいろいろ。
なんかこう、かっこいい。とてもここまでの境地にはたどり着いてないヌルい本読みなんだけど、いつか自分の本棚に並んだ本の背を見て、一人ほくそ笑んでみたいなあとは思う。人によって並ぶ本のタイトルには違いができるんだろうけど、格好良い本棚とはどうあるべきか、って所に思いを致したことはなかったなあ。ウチには2万冊も本は無いけど、そもそも読んだことのない本もどかどか並んでる状態なんだけど、それでもどこかで、「この本の並びはちょっと他人には真似できねえだろ」的気分に浸ってみたいような気はするな。
いつになるやら、そもそもそんな時が来るものやら、予想もできないんだけどね。
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